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放射線は本当に危険か(3)・・・CTスキャンによる医療被曝

2011-06-04 05:14:00 | 福島原発事故
 



■ 「CTスキャン」はどのくらい被曝するのか? ■

福島原発事故依頼、TVに出演されている先生方が「現在福島原発から放出されている放射線は極微量で、健康には影響ありません。レントゲン撮影や、CTスキャンよりも全然少ない被曝量です」と説明される時に使用されるのが、下の図。



この図によれば、X線CTスキャン1回で上限で10(mSv)の被曝をする事になります。これは、福島原発で問題になっている20(mSv/年)の被曝の半分の量を、わずかな時間で被曝する事になります。

さらに、東海大学病院 放射線技術室はダミーボディを用いてCTスキャンによる被曝量を実際に測定しています。
http://www.asyura2.com/07/health13/msg/570.html

データが見難いので、表にしてみました。



赤字で示したのが、10(mSv)を越える被曝を示します。
軒並み10(mSv)を越えた実測値が出ています。
これが、等価線量なのか、実効線量なのかはデータの原典に当たらないと定かでは無いのですが、もし実効線量ならば、CTスキャンによって私達は、福島原発の周辺地域に1年間住むよりも大量の被曝を、わずかな時間でする事になります。

■ 体の中心部で被曝量が増大するCTスキャン ■

CTスキャンは、ビーム状に絞ったX線を、体の一方から放射し、その反対側に検出器を設置して、体を突き抜けてきたX線がどれだけ吸収されたかを計測します。

X線の発行部と検出器を体の周囲でぐるっと一回転させると、あら不思議?? 体の断層写真が得られます。




この原理を簡単に説明します。
体の断面を細かく区分けして、それぞれの部分のX線の透過率を未知数とすると、上の図の様な方程式のセットが出来上がります。

右の図の様に、X線を縦軸と横軸で直線的にスキャンすれば、私達の見慣れた行列式を作る事が出来ます。

しかし、一般的に用いられているヘリカルCTスキャンは、体の周囲をぐるりとX線を一周させるので、左の図の様な行列式が出来ると思われます。何故回転式かと言えば、多分構造が簡単だからでしょう。直線スキャンでは、2セットのX線光源と検出器が必要ですし、往復運動よりも回転運動の方が、等速運動しやすく、故障も少ないというメリットがあります。

実際には、区分けは非常に細かく、512、もしくは1024に区分します。
当然、解析には膨大な数の行列式の処理が必要となり、コンピューターの無い時代には、とても実用できる技術ではありませんでした。

ここで数学が得意な方はお気づきになると思いますが、体の各部位の吸収率を未知数とすると、方程式の数よりも未知数の数が多いので、この行列式は解を持ちません。そこで実際には最小二乗法という計算方法で、概算計算を行っています。(蛇足です)

さて、一般的なヘリカルCTでは、体の周囲をX線光源が回転して測定しますので、体の中心部はずっとX線が照射された状態になります。

先ほどの東海大のデータで、東部中心や腹部中心の被曝量が多くなるのは、このためなのです。

■ CTスキャンによる医療被曝で発癌する ■

単純なレントゲン撮影に比べ、CTスキャンは医療被曝による発癌性が高くなります。
そこで、最近は全く原理の異なる、MRI(核磁気共鳴)という検査方法が用いられる様になりましたが、装置が高額な為、簡易的な検査はCTスキャンが用いられるのが実態かと思います。

さて、CTスキャンにより医療被曝でどの程度癌が増えるかという記事を見つけました。

「CTスキャンでがん発症リスクが極端に上がる!!」・・・2009年11月19日付け
http://my.opera.com/ux50/blog/ct

<引用開始>

CTスキャンを受ける際に浴びた放射線が原因で数十年後にがんを発症する可能性があるとする2つの論文が、14日の米内科学会誌「アーカイブス・オブ・インターナル・メディシン(Archives of Internal Medicine)」に掲載された。
 CTスキャンは、X線を照射し、検査対象の臓器や組織の3D画像をモニターに映し出す。
 米サンフランシスコ(San Francisco)の4病院が行った研究は、現在の検査で通常照射される放射線量は、中央値でさえ、想定されていた値の4倍であることがわかったとしている。CTによる1枚の冠動脈造影図の被爆量は、胸部レントゲン写真309枚に匹敵するという。
 同研究は、冠状動脈をCTスキャンした270人のうち、40歳の女性1人がCTスキャンが原因でがんを発症したとしている。
 もう1つの研究は、2007年に米国で行われた7200万回のCTスキャンが原因で、今後2万9000人ががん発症する可能性があると指摘した。このデータには、すでに腫瘍(しゅよう)があった患者や終末医療の一環でCTスキャンを受けた患者は含まれていない。
 研究者らは、放射線の照射に起因するがんは、照射治療の20~30年後に発症することがわかったと述べ、「医療用CTスキャンの放射線量はこれまで認識されていたよりはるかに多く、防ぐことができるがんを年間数万例も生んでいる。照射量に関する規定を見直すべきだ」としている。

<引用終わり>

■ 「福島の放射線は医療被曝より軽微です」では無く、「医療被曝は福島以上の脅威」と言うべき ■

私の母の知り合いは、大腸がんになって手術を受け、経過を観察する為に、千葉にある「東京女○医大病院」で、3ヶ月い1回、CTスキャンを撮影されています。年間120(mSv/年)以上の被曝を腹部中央を受けます。

尤も、「LNT仮説」を信じたとしても、この検査による発癌率お上昇は、千人に5人ですので、癌の再発のリスクよりも、検査のリスクが小さいと判断されれば、CTスキャンは有効な検査となります。

又、CTスキャンによる癌の発生は検査後、20年~30年と書かれていますので、70歳を過ぎた老人が心配する事でも無いのでしょう。

例えば、乳癌の報謝線治療の場合は、1回2(Sv)を25セット、合計で50(Sv)もの放射線を当てますから、発癌率から言えば、CTスキャンの比ではありません。それでも、リンパ節に転移すると厄介な乳癌の治療としては、放射線治療は大変有効で、将来的な発癌リスクよりも、乳癌の再発や転移を防止するメリットの方が高いのです。(最近では一回の放射線量を増やし、回数を減らす方向に変化しています。1回の照射量は3(Sv)を超える様です。)

■ メリットの無い被曝 ■

原発事故の場合、被曝に何らかのメリットは存在しません。
でしから、トレードするベネフィットが無いので、低い線量の被曝でも、被曝した方は発癌というデメリットだけが僅かに上昇します。

稲博士が言われている様に、「LNT仮説」に根拠が無く、低線量率の被曝が体の免疫機能を高めるならば、福島の被曝のリスクに見合うメリットが発生します。

確かに人によっては放射線による免疫活性が働かずに、癌のデメリットだけが増える体質の方もいらっしゃるかと思います。又、子供や妊婦は、細胞の分化が活発なだけに、被曝には注意が必要です。

ただ放射線が危険だと言っているだけでは、福島は永遠に救われません。
希望があるならば、否定ばかりせずに、その希望を追及する事が、今後の福島の復興にも役立つと思います。