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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

バラク・オバマ

2010-01-25 19:47:00 | 時事/金融危機



■ 就任1年のオバマ大統領 ■

オバマ大統領が就任してから1年が経ちました。



1) 金融危機で瀕死の状態の銀行は、復活して最高益を上げました。

2) アメリカの負債は急拡大しています。

3) 失業率は10%を越え、実質的には22%とも言われています。

4) グリーン・ニューディールは掛け声だけ、
   温暖化対策も掛け声だけ

5) アフガンに増派が決まりました。

6) 骨抜きの国民皆保健制度の成立も危ぶまれています。


オバマ大統領は、大銀行に莫大なプレゼントを与え、
そのお金を将来的に国民に請求しています。

さて、大統領は誰の味方なのでしょう?
オバマが銀行家の大統領と呼ばれる所以です。

■ イメージ先行の大統領 ■

民主党政権である事を強調する様に
国民皆保健制度の導入を目指していますが、
民間保険会社や共和党の巻き戻しで
その内容は大きく後退しています。

一方、金融政策や外交、軍事においては
ブッシュ政権からの継続性が強く現れています。

「初の黒人大統領」を守りたいという
マイノリティーの潜在的な願望を巧みに利用して、
ブッシュでは国民が納得できなかったであろう政策を
実行しているのが、オバマ大統領です。

その間、核廃絶や多国間交渉主義など
国際的にもアピールする方向性を提示していますが、
これはアメリカが単独覇権を維持出来なくなった事の裏返しです。

求職を諦めた者や、アルバイトで糊口を凌ぐ者を含めれば、
アメリカの失業率は実質22%に達すると言われています。
本来ならば、マイノリティーを中心に「暴動」が発生しそうな状況です。


■ 投資銀行の復活 ■

オバマは、銀行の自己勘定取引を規制しようとしています。
国民はこの法案が通れば、多少溜飲を下すでしょうが、
この法案は裏でボルガー元FRB議長が入れ知恵しているようです。

一見、金融機関の収益を圧迫しそうな法案ですが、
ゴールドマンなどは、元の投資銀行に戻れば良いだけです。
商業銀行各社も投資銀行部門を分離するでしょう・・・。

・・・あれ、結局金融危機以前の状態に戻るだけです。

商業銀行の看板を下ろせば、
ゴールドマンなどは誰はばかる事無く、
レバレッジを効かせた取引を継続する事が出来ます。

商業銀行に転身した理由は公的支援が目的ですから、
その必要性が無くなれば、元の投資銀行に戻るだけです。

現状の商業銀行では規制も厳しく、
ゴールドマンなど旧投資銀行は、
元の投資銀行に戻りたいはずです。

しかし、公的資金を受けた身としては
自ら「投資銀行に戻りたい」とは言えません。
それは、国民が許しません。

ですから政府が「自己勘定取引規制」を強要し、
それに違反して商業銀行の資格を剥奪されるか、
あるいは、仕方なく投資銀行に戻るというポーズを取りたいはずです。

オバマの大統領は、銀行の為に働く大統領なのです。

■ 銀行ロンダリング ■

メリルリンチなど、商業銀行に買収された銀行は、
分離の際に、商業銀行側に不良債権を手土産に残して行くかもしれません。
実体経済が回復不能なまでに痛んでいるアメリカで、
商業銀行の大幅な収益の回復は望めません。
まして、グラス・スティーガル法的なオバマの銀行規制が適用されれば、
商業銀行の経営環境は急激に悪化します。

儲かる投資銀行部門を「グット・バンク」に、
儲からない商業銀行を「バット・バンク」にして
銀行ロンダリングの様な行為が行われないとも限りません。

残った商業銀行は、人々の貯金を預かっていますから、
やはり「大きすぎて潰せない」ままです。
ここで、さらに預金保護の名目で、
新たな資金注入が行われるかもしれません。

なぜなら、オバマ大統領は「銀行の味方」なのですから。


■ ボルガーと高金利政策 ■

存在感を表してきたボルガーは
レーガン時代のFRB議長です。

当時彼は高金利政策を実施し、
高金利を求めて、アメリカに資金が流れ込み、
高金利の米国債を日本の銀行なども買い込みました。

一方、ドル高が進行し輸出産業は衰退して行きます。
そこでプラザ合意によって、
日本やドイツが為替介入を行い、
ドル安に誘導して行きました。

■ 高金利政策とドル安誘導 ■

古典的な経済学では、金利の上昇はインフレを抑制します。
これは、資金の流れが国内に限定している場合のみ有効です。

現在の世界は、為替市場によって
国と国との間で自由に資金が流動します。

金融危機以降の各国の低金利政策が、
国内の需要に結び付かず、
キャリートレードによって金融機関を利する結果をもたらすのも
国境を越えた資金流動が原因です。

従来、インフレを抑制するはずの高金利政策ですが、
現在においえは、金利に飢えた海外資金を誘導し、
国内の通貨流通量が極端に落ち込む事はありません。

プラザ合意後は、ドルが安くなった事で
ジャパンマネーがアメリカの資産を買いまくり、
流入した資金がアメリカ復活のきっかけを作りました。

一方、その後の行き過ぎ歌ドル安を
是正する為の為替介入の為に買われたドルは
アメリカ国債を買い支える事となります。

■ 日本のバブルの崩壊 ■

アメリカ経済が復活する頃、
日本ではバブルの崩壊が発生します。

かつてアメリカを買い漁った日本企業は
アメリカの資産を手放してゆきます。
この後アメリカは、ITバブル、金融バブルに突入します。

■ アメリカの出口戦略 ■

ボルガーの登場は、アメリカの出口戦略が近い事を予感させます。
はたして、今回の高金利政策は成功するでしょうか?

現在のアメリカで金利が上昇すれば、
住宅ローンやクレジットのデフォルトが多発します。
商用不動産市場も完全に崩壊します。

自動車産業を始め弱体化した製造業や、
不況にあえぐシリコンバレーも、
資金調達コストの上昇に耐えられないでしょう。

それでも、マネーゲームの資金はアメリカに向かいます。
長期的には安全な投資では無い、アメリカ国債も
高利に釣られた資金が引き寄せられてきます。

■ 儲かるのは銀行だけ ■

金融崩壊で、タダでばら撒かれたドルに、
オバマ政権は、今度は金利をプレゼントしようとしています。

しかし、アメリカの実体経済は高金利に耐えられません。
儲かるのは銀行で、苦しむのは国民です。

アメリカ国債も、かつての日本のような従順な買い手は存在しません。
一時のアメリカ国債バブルが過ぎれば、
大きな負債のみがアメリカ国民を襲います。

その後に訪れるのは、世界をリセットする為の戦争でしょうか・・・。
流されるのは、アメリカの若い兵士の血と、
遠い国の無辜の民の血です。


・・・オバマ大統領は、あくまでも「銀行の味方」です。