※ 続・ローマとナポリにバロックの奇才を訪ねる旅 (12)
ローマでも屈指のボルゲーゼ公園、その一角に建つボルゲーゼ美術館。
強いて言えばベルニーニ(1598-1680)とカラヴァッジョ(1573-1610)のための美術館とも言えなくもない。
ただカラヴァッジョ、盛期ルネッサンスの三巨匠、ダ・ヴィンチ(1452-1519)やミケランジェロ(1475-1564)、そしてラファエロ(1483-1520)のように、鑑賞客の足を必ず止めさせる画家でもないことは、彼の絵の前を素通りする人が多いことからも窺わせる。
が、聖書世界を独自の解釈でひん曲げようとも、人を殺め逃亡生活を重ねるなどの無頼の生活を送ろうとも、この光と影の魔術師が織りなす世界へと引き擦り込まれるのである。
その彼の 「洗礼者ヨハネ」(1610年)が今回の作品。
主題は、ラファエロの 「<ベルヴェデーレの聖母>」(ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵)などで何度か書いたので省くが、ここでは裸体の聖人として描いている。
この解釈は、彼の同名の作品 「<洗礼者ヨハネ>」(1602年/カピトリーノ美術館蔵)でも見られる。
厄介な性格を抱えたカラヴァッジョ、“ 逃亡先のナポリの居酒屋でまたもや喧嘩、重傷を負ってしまうが、それでもナポリで二点の作品を描いた ” (カラヴァッジョ/西村書房刊)とされ、本作はその一点とされる。
それゆえか、八年前の薄ら笑いを浮かべたカピトリーノ版に比べ、聖人の表情が憂いに満ちていると見るは穿ち過ぎだろうか?
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1257