※ オーストリア/ウィーン美術史美術館編 ‐ 中欧美術館絵画名作選(45)
ミュンヘンのアルテ・ピナコテークだったか、アルトドルファー(1480-1538/ドイツ/ルネッサンス・ドナウ派)の 「<アレクサンドロス大王の戦い>」(158.4×120.3cm)に驚いたことがあった。
その彼を意識したのかどうか知らないが、ブリューゲル(1525-1569)がこれでもかと描いたのが 「サウルの自害」(1562年/33.5×55cm)。
彼が多く用いた群集図どころではない作画に呆れさせられる本作、旧約聖書サムエル記から画想を得ている。
イスラエルには王がいなかったので、士師のサムエルは神の指示に従い王になるべき男を捜す。
その途上、背が高く美しい若者のサウルに出会い、彼が神に選ばれし者であることを悟って油を注いだ。
サウルは息子や家臣たちとイスラエルを率いて、ペリシテ人など他民族と勇敢に戦ったが、アマレク人との戦いで、一切を滅ぼせという神の命令に従わなかったため、神の心は彼から離れてしまう。
神の声を伝えていたサムエルもサウルを諦め、神の言葉によって秘かにエッサイの子<ダビデ>に油を注いだ。
サウルはダビデの人気を妬んで命を狙うものの逃れられてしまう。
そんなこともあって、ペリシテ軍との戦いでギルボア山に息子たちとともに追い詰められたサウル、敵の手にかかるよりも、と従者に殺すように命じたが恐れ憚って応じて貰えず、剣の上に身を投げて自害する。
ブリューゲルはその瞬間を左手の岩場(下:拡大)に切り取っているが、作品自体にサムエルの物語以外の意味は見出せず、個人的にです。主題のあらましをだらだらと綴った。
美術史美術館、“ ブリューゲル・コレクションは世界最大 ” と誇るが、喩えれば、横綱、大関ばかりじゃ成り立たぬ、幕内、十両に取的さんもいればこその大相撲ということだろうか?
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1188
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