尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

2006年06月24日 01時29分59秒 | ライトバース集
小さな頃
あなたは
あなたのことを
まん中の空き部屋で
雲が飛んだり
恐竜が吠えたりする
不思議な家だと
思ったそうだ


わたしは
あなたのことを
わたしの
家だと思っている
たまに
まん中で
わたしが
稲光ったりする
不思議な
家だ
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俺はお前を信じていない

2006年06月24日 00時55分27秒 | 詩の習作
一日の終わりには
一生の終わりのように
くたびれ果て
こんな様だ
それは仕事の
せいではない
人間たちのせいでもない
お人好しの
お前だ
ずっと
お前を運んで
こんな夜の無名の駅に
到着した

俺はお前を信じていない

一体お前は
誰なんだ
一体俺は
誰なんだ
お前は
お前の重力ために
俺がことごとく遅延して
みんなからバカにされ
ほんとうに
それでよいのか
悔しくはないのか
遅刻者として
何という終着駅に
お前を
運べばよいのか

俺はお前を信じていない
お前が俺を信じている

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2006年06月23日 11時21分04秒 | ライトバース集
小さなときから
わたしは
わたしのことを
家だと思っていた

小さな建物の一角に
不意に
雲や渡り鳥が通り過ぎる
不思議な
空き部屋があった
おそろしい恐竜でさえ
吠えることがあったので
母にも内緒の部屋
だった

今では
わたしを家だと思った
あなたが
まん中で笑っている
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2006年06月22日 21時07分00秒 | 詩の習作
風と
木々には
今夜
眠れない
訳が
あるらしい

その訳を
夢のなかで
聞きとりながら
僕は眠るのだ
そして
明日起きる
訳です

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しったこっちゃない

2006年06月21日 21時34分41秒 | 詩の習作
僕が死んだ
あくる日
世界は滅亡するだろう
しないかも知れない

しったこっちゃない

今は
ストローの長いトンネルを
覗いている
その意味はない

しったこっちゃない

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無題

2006年06月20日 21時37分15秒 | 短詩集
三度
あなたの名前を呼んだ
二度までいつものように
心をこめて答えてくれた
三度目だった
答えは
あなたを連れ去って
いつまでも
帰ってこなかった




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今村仁司「増補・現代思想のキイ・ワード」

2006年06月19日 00時03分41秒 | 読書記録
1985に講談社現代新書として刊行されたⅠ~Ⅳ部と新版として書き加えられたⅤ部から構成されている。
明らかに前者が元気であるのに対して、後者に生彩を欠いていることは、著者の加齢が原因ではない。
マルクス主義の現実的決定的敗北が、左右を越えて、何かしらの理想を追うところに成り立つ、「思想」そのものに対する全体的な懐疑にまで達した結果であろう。
 日本における構造主義やポスト構造主義の受容のほとんどがが、政治参加からシニカルな評論家的態度へと、ドロップアウトする際の言い訳であった。
表面的なブームが去った現在、もういちど実存主義以後を読み直したい。(何もかも終わったような)言説は、バブル経済を背景とする甘ったるい幻想である。

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ランプ

2006年06月18日 23時16分46秒 | 詩の習作
僕の身体は
ランプの火屋(ほや)である
炎は言葉である
言葉が揺らめくと
景色が
獣のように廻るのだ

またどこかで
火事だ
言葉は燃えやすい
放火ではない
引火だ
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奇術

2006年06月18日 10時33分05秒 | 詩の習作
箱。
箱になる
妻に
目を書いてもらう
転がってみる

三角公園にて
ベンチ。
ベンチになって
温かい猫をのせてみる

猫が去る

シーソーだ。
シーソーになって
傾いてみる
見えないものが
乗ってきた

女。
女になって
トマトを買う
歩きながらかじり
汁をわざと胸にこぼす

部屋にて
トランプになる。
シャッフルする
畳に並べる
消える

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しっぽ

2006年06月18日 00時04分50秒 | 詩の習作
雨の日に
流れてきた
優しい気持ちは
僕の
なにかが
また
死んだらしい

トカゲの
しっぽかな

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共食い

2006年06月17日 22時19分57秒 | 詩の習作
満員バスは
傘の先で
靴の先を
つつかれたり
突きかえしたりしながら
雨の中を進んでいく

吊革に
ぶら下がりながら
一粒、二粒
泡を吐いた
金魚のことを
思い出す

おれが死んでから
戦争は必ず
起こると
思う
それはこの世に対する
おれの
恨みかも知れない
と思う

ひじ鉄をくらう

金魚が浮く

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とんがりcorn

2006年06月16日 23時48分22秒 | 詩の習作
選択肢として
彫像のように
このまま
固まってしまうことだって
可能なんだ
と思いながら
とんがりcornを
ほおばっている

食べないで
かたくなに
固まってしまった人の
気持ちは分かる


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2006年06月16日 23時13分56秒 | 詩の習作

昼間
憎しみであなたを見た
その夜
そんな目で
憎しみが
僕の暗闇を見つめるのだ

昼間
愛であなたを見た
その夜
そんな目で
愛が
私たちの暗闇を見守るのだ

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遠い花火

2006年06月15日 21時17分00秒 | 自選詩集

最後の花火が
開いて
消えた
それから 歩いて
音が来た

唇が
ミミズほどの
気持ちも
ないくせに
今ごろ あのひとの
名前を呼んだ
三十年も
遅刻して

これは
なんという
花火
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顔なのだ

2006年06月14日 12時52分02秒 | 詩の習作
顔なのだ
この顔で生まれると
この顔に名前をつけられ
この顔で食らい
この顔で笑い
この顔で泣き
この顔であの顔とキスし
この顔で争い
この顔で和解し
この顔で老いてきた
ついに今日
この顔に追いついた

追いついてみたが
風にさらされて
この顔が無関心なのだ
光にさらされて
この顔が孤独なのだ

ついに顔なのだ
小銭を握りしめ
顔が運ばれていくのだ

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