尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

笑う箱

2008年11月30日 23時42分30秒 | 詩の習作
テレビを見ているとき
とりわけ
テレビの中の人たちが
そろって笑い
僕もつられて笑うときなど
テレビを見ている
僕の背中が
一瞬見えることがある

箱男箱女箱犬

テレビって
ほんとうはとても寂しい
笑う箱なんだ

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ダイヤグラム

2008年11月30日 01時11分49秒 | フォトポエム


「ダイヤグラム」


直線模様が
放物線を描き戻ってくるのである
この階段は螺旋である

お前なんか死んでしまえ!
幼い頃、母に言ったことがある
その針の言葉が
55年経って彗星のように
自分の胸に帰ってくる

お前なんか本当の母さんじゃない!
たった一度だけの言葉だったが
会社から帰ってきた父に
母が泣いて訴えたので
僕は激しく諫められた

その父も早くに死んだ
その後
本当の母さんというものが他にいると知った

随分なことを
言われても生きてきたが
随分なことも言ってきた

そして今
静かなプラットホームがある
私というプラットホームである

終着駅を持たない
言葉の彗星が
急行列車のように通過する

いかなる列車も
止まったりはしない
風がおさまると
一枚の時刻表が螺旋階段を降りてくる
駅長は美しいダイヤグラムを
指で遡る

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足音

2008年11月29日 23時10分48秒 | 詩の習作
詩は言葉である
というのは近代詩人のおごりです
詩は言葉ではありません

詩人でなくても生まれたら
一行目をオギャーと
吐く息で
行間は吸う息で
二行目をオギャーと
吐く息で
行間は吸う息で
三行目をオギャーと
吐く息で
詩を始めます

詩は息の足音です
言葉を覚えて
たいていの人が詩を忘れます
ですから
言葉を忘れたら
足音の始めとと終わりが
見えてくるようです

詩がわからなくなったら
間違っても
自称詩人に聞いてはいけません
たいてい詩人と呼び合う人の群は
詩を生きて来れなかった人々の
怨念の集団です
隣に眠る人の
寝息に耳をすませることです
足音が見えます
始めと終わりが見えてきます
愛するほかはないですね
それ以外に詩は
どこにもありません

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電話ボックス

2008年11月29日 01時39分18秒 | 詩の習作
むかしむかし
電話ボックスと呼ばれる小さな空間があった
日本中の家や会社や電話ボックスと
電話線で結ばれていた

夜になると青く光り
立方体の宇宙船のようであった
闇に孤立しているようで
そこにはいると
結ばれている気持ちがしたものだ
回線が繋がると体ごともっていかれるような
不思議な空間だった

だからといってその頃の私たちが
今よりも幸せだったとは言えないだろう
その中で缶入りコーヒーを飲み干しながら
引きつるような高笑いをしながら刺したり刺されたりしていたのだと思う
日本の人口の大部分が夜の電話ボックスで消えていった

私たちが消えたあと
電話ボックスと電話線まで消えてしまったのだ
地面を掘り返しても何も出てこないだろう
つまり垂直方向の「抑圧」ではなくて
瞬間移動の「乖離」についてお話ししているのだが
私たちが共通にこだわっているのは
その孤独にもかかわらず
必ず繋がっていたいたということだ
このコードをたどれば必ず君にたどり着けるとう確信である

さて胸の前の携帯電話についてだが
消えていった人間の位牌にしか見えないのだ

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石の夢

2008年11月28日 10時01分26秒 | 詩の習作
風になびく木が夢を見ている
その時
木の下に流れる川の底で魚が夢を見ている
その時
木の葉の揺りかごでカタツムリが夢を見ている
その時
サバンナの丘でラオイオンが
風と木と魚とカタツムリの夢を見ている

およそ命という命は夢を見ている
夢の終わりに微笑み
そして思い出すだろう
命がそっくりそのまま
砕かれた石の見ている
焔のような夢であること

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耳をふさげば三拍子

2008年11月27日 00時29分38秒 | 詩の習作
耳をふさぐと
時の風が聞こえる
目を閉じると
あの海が見える

海を歩いていると
昔自分だけは死なないと
母に断言した少年も
四本脚になり二本脚になり三本脚になり
次第に信じてゆく
私は死ぬと
あなたを愛したまま
私は死んでゆくのだと

耳をふさげば
三拍子
時の風が聞こえる
目を閉じれば
二拍子
あの海を歩いて渡る

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写真「刺青」

2008年11月27日 00時01分55秒 | 尾崎まことの「写真館」

「刺青」

どこの誰だかわからない地人様の落書きですが、
若い日の思い出に、引っ掻いたような痛みが
感じられますよね。

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刺青(いれずみ)

2008年11月26日 23時43分48秒 | フォトポエム


詩のことばは
心の刺青
痛みと熱と
あなたを忘れたら
あとは
後ろ姿で美しいだけ

死ぬほど
哀しい詩(うた)も
体を震わせ
笑ってあげると
背中で
一緒に笑います

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2008年11月26日 01時24分33秒 | 尾崎まことの「写真館」


一本の花というものが
わからないとき
かならず
自分というものがわからない
くねくね蛇になって
地球に巻きついている

すべての花というものが
わかるとき
自分というものが
地球という木を
留守にしているとき

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出発としての「愛」

2008年11月26日 01時10分44秒 | 詩の習作


愛というものが
人の歩むべき到達点と見なされ
しかもしばしば
不可能と結論してしまうところの
私たち共有のシニシズムは
愛がこの二一世紀において
人の到達する目標ではなくて
私たちを出発へと強いる
パワーのそのもであるからだ

二一世紀の私たちに
愛が無いのではない
私たちは
愛したくないのだ
この場に及んで
出発を拒んでいるのだ

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新しい道

2008年11月26日 00時13分36秒 | 詩の習作

昨日
この道を
行っては帰り
今日
この道を
行っては帰り
明日
この道を
行っては帰り

毎日という道が
振り子のような
往復運動に見えるが
その行程の見かけに
ほとほと疲れ果てていると
ふいに風が起こり
雲のようなもの
星のようなもの
良い幽霊のようなものと
擦れ違うので
ほんとうは
夢で見たことのある
あの山の峠を越え
空を駈け登ってゆく
飛行機雲のような
一本道に見えてきた

この道は
いつも新しい

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音楽の神様

2008年11月25日 07時06分37秒 | 五行歌・自由律俳句
スズメはすばらしい
特に冬のスズメはすばらしい
夜明のひととき
ああ 光のコンタクト
音楽の神様になる

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一将功成りて万骨枯る

2008年11月25日 06時35分59秒 | フォト日記
一昨日、年に一度の「関西詩人協会」の総会があり、出席した。四度目の出席だったが、会員約320名のうち、参加者が60名ほどで、
少々寂しい会合となった。
関西詩人協会賞の発表と祝賀があった。
約百目の応募のうちお一人が決まったわけだが、選ばれなかった99名のうちの一人が僕であるわけだ。もちろん応募の段階で落選の覚悟はできたいてはずなのだが…。
運営委員会の事務報告と杉山先生の講演を除くと懇親会まで、総会の大半のこの祝賀にあてられていたので、正直閉口した。武士の情けというものが、お主にはないのか。(笑)一将功成りて万骨枯る、ということわざがあるが、わざわざ骨をさらしにでかけたような一日だった。

それでもめったに会えない、滋賀のTさんや京都のSさんとお話しできたのは楽しかった。
前回の奨励賞受賞者でもあるTさんに「詩は書いていますか」と聞くと冬眠しておりますとの答えだった。冬眠できる能力こそすごいと思い、そのまま伝えた。来る春とは再生の季節である。
八甲田山死の彷徨ではないが、僕はじっとしていると凍死しそうだ。だから、身を揺するようにして(貧乏揺すり)、毎日誰も読まない詩を書いている。
ああ寒い。春が来たらよいなあ!

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関係

2008年11月24日 23時31分17秒 | 詩の習作
過ぎ去っていく
この一行と
自分
到来してくる
この一行と
自分
選ばなかった
あの一行と
自分
言葉と
自分の関係


一行を手放さない
自分を手放さない
ことばのために?
いいえあなた
とわたしのために

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扉の向こう

2008年11月24日 11時49分51秒 | 詩の習作


絶望で死ぬことは出来なかった
その扉の向こうに
何かがいたからである
愛を知ってはじめて
死ぬことが出来ると思った
その扉の向こう側には
何もいないからである

雪やなあ

死んだらあかん

えらい雪やなあ

死んだらあかん

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