尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

踏み絵

2007年02月22日 23時51分32秒 | アドリアナ選「まことの詩集その1」
あしのうらは
しってるさ
いくぶん
おれはしんでいる
それで
ひととあうのがはずかしい

(はかのようにぼうだちだろう)

それでも
あさがくれば
もういいちど
やりなおそうと
ちかどうの
たいるをふみしめている
いきているひとに
まぎれて
にどと
ふみえないものを
あしのうらは
しってるさ

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四角い顔

2007年02月22日 23時30分44秒 | 詩の習作
スタバでこっそり
そこの本屋で
買ったばかりの本の
まあたらしい匂いを嗅いでいる
(麻薬みたいに)
それから
本をマスクにして
あたりを見回す
と、
おれは本だろう

君、本を
四角い顔だと思ったこと
ないのか?
あるいは
人の顔を
本と思ったことはないのか?

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一行詩(自由律俳句)

2007年02月22日 10時44分30秒 | 五行歌・自由律俳句
シャボン玉 息が命のまねをして

シャボン玉 息が星の振りをして

暗い肺からシャボン玉

シャボン玉吹き春は記憶喪失

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ムカシ・トンボ

2007年02月20日 22時48分10秒 | 少年詩集
ムカシ・トンボが
生まれた
花のつぼみの
はじける音が
するたび
ぽん、ぽん!
ぽ、ぽん、ぽん!
虹色の複眼を
不思議そうに傾げた
それでも
花の友達は
いつも蝶々だった


ムカシ・トンボが
死んだ
宝石のような複眼は
蟻が運んでいった
花のつぼみは
なおはじけた
ぽん、ぽん!
蝶々がとまった
友達が
すべてでないとわかって
淋しかった

お祭りの
花火のように
咲きつづけた
ぽ、ぽん、ぽん!
それが
彼への答えだった

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2007年02月20日 09時35分53秒 | 詩の習作
朝が来て
わたしは
朝だといっている
雀たちが挨拶
している
雀ですと

人間達は
朝に気がつかない
朝を
夕方を遡っていると
思っている

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2007年02月19日 23時39分08秒 | 詩の習作
天井の上で
風が回っていると
ひどく淋しい
僕の忘れてしまった人達が
怒って瓦をめくっているようだ

彼等のために
ひどく淋しい
死ぬよりも
淋しい

死ぬよりも
なお淋しいと
天井に向かって
笑っている
白い
小面

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道徳

2007年02月18日 21時44分53秒 | 詩の習作
その男は
舞台の始まるまで
待ちきれなかったのだろう
否、充分に待ったのだと云える
そして
私からおもむろに
ひどく年老いた私が
立ち上がったのである
残された私は
誰もいない観客席の
椅子になった
そして私はなおも
お芝居のはじまりを待っている
舞台の書き割りは
もちろん
普段の景色と異ならない
そして
私はこんなに年老いた
私にそっくりな
若い男が来てここに座るならば
私は立ち上がるだろう

椅子だけが
いつまでも
物語のない
舞台を見ている

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イタカ!

2007年02月16日 21時34分44秒 | アドリアナ選「まことの詩集その1」
環状線を環状に走っていると
空からイタカ
と声がする
そんなバカな
またイタカと声がする
これは僕の内心の自虐である
そんなバカな
またイタカと声がする
そういうときは
イタカ!と叫ぶにかぎる
こうして人生のレコードを
すり減らしている
おれは針だ

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「まんなか」

2007年02月16日 00時23分09秒 | 決定稿集
「まんなか」


暗い天井を見上げて
ここがいわゆる
世間の
片隅かしら

長かった
木枯しの夜が明け
外へ出て
見上げると
青空が僕に言う

そこが
君の
まんなかです


コメント (2)
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逃亡者

2007年02月10日 22時00分19秒 | アバンギャルド集
木々の
影の傾きを吟味したあと
おもむろに
イスから立ち上がり
ズボンの裾の埃をはらい
去っていったのは
人ではなく
そのイスだった
つまり
君の座っているイスは
イスからイスが逃げた後の
影のないイスだ
それからそんな机もある
君が手紙を書いている机
机の去ったあとの
机だ
そんな窓がある
そんな窓から見えるのは
鳴いたとしても
飛んだとしても
鳥の脱け殻と
泣いたとしても
食ったとしても
人の逃げた後の
人の脱け殻ばかりだ
逃亡者に君が手紙を
書くのは
どんなものだろう
文字は逃げないのか
インクは逃げないのか
君が逃げたあとに
残された君は
もう逃げないのか
ただ一人
逃げなかった男のために
いつまで手紙を書き続けるのだろうか
君だけが魚のように
捕まってしまったのだろうか

ひたすら苦しむあの男と
地球の裏の太陽と
眼前の白紙と

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どうどう

2007年02月06日 00時14分56秒 | 決定稿集
どうどう


あなたとは
会うことはないと思います
それでも私はテレビや本や友達が
あまり言わないだろうことを
あなたの心の黒板に
伝言したいと思います

愛とか夢とかとても大切です
しかしもっと大切なことを
愛なんて夢なんて
何もなくても
どうどう生きてください

お猿だった大昔から
ほんの少し前まで
愛など夢などどこにもなくて
食べていたのは
そんな言葉ではなくて
野ウサギや芋を分け合って
生きてきたのです

辛いことにも負けず
けっこう仲良く笑って暮らしていましたのに
戦争で出来た国境をまね
人と人との間にきつい線を引き
おれの愛だのお前の夢だの
やかましく言いだすようになってから
ご覧なさい
人と人とが共食いを始めた
じゃあないですか

愛とか夢とか
言葉など食えなくても
恥ずかしくはありません
自分より
弱い人を食うほうが恥ずかしい
芋だけ食って屁を放ち
みんなを笑わせて
元気に生きてください

時間の黒板消しが
この伝言を消す前に
もう一つ
そんなあなたは
とても優しいですから
愛とか夢とか希望とか
どうどう生きている
ほんのおまけです

さようなら

  (題名を「愛なんて」から「どうどう」に戻し、
   イリヤ今月の詩にアップします。)


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夜空

2007年02月03日 21時05分02秒 | 詩の習作
騒がしいので
表に出てみると
星の数が多すぎて
空が銀色に輝いている
そんな夢を見た

夢が虚無なのではない
虚無が夢を見たのだろう
はっきりしていることは
希望がなければ
一行も書けはしないことだ
コメント (2)
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