尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

5/18「風」朗読会・のお知らせ

2008年04月29日 23時59分00秒 | みなさんへ・その他

楽しい刺激的な朗読会にしたいと思います。
ぼくの詩のスタートも、今から四年ほど前、飛び入りで「風の会」へ参加したことからはじまりました。
詩(人生)に今必要なことは、自分であることの勇気と希望、だけです。
その他のことを言うことは、現在、インチキだと思います。

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国境

2008年04月28日 23時36分44秒 | フォトポエム
私の腕が半島であるならば
あなたは静かな内海である
懐かしい硬質の輪郭だけを
薄暗闇に残して
(それがことばというものだ)
豊穣な海の重量が消えていく
瞬間がある

魂は夢の彼方へ
淡い虹色の
国境を越えたのだろうか
泣き声で
呼びもどしたりはしない
僕は信じている ほんとうは
あなたが僕の後ろについてきていると
しかし
オルフェのように
ふり返ったりしない
生きていても
死んでいても
これは出会いの日の
変わらぬ約束だから

私も一人の男として
越えようとするだけだ
オルフェウスの垂直の国境を

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歌い続ける海岸線

2008年04月28日 01時25分11秒 | 詩の習作
どちらが海で
どちらが陸で

歌い続ける海岸線

千鳥の飛びかうその間を
歩くしかなかった

許してあげよう
許してあげない

歌いつづける海岸線

振りかえれば

左の足跡が濡れている
右の足跡が乾いている

黙ってしまう海岸線


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大きな日記

2008年04月28日 00時59分05秒 | 詩の習作
お金を数えながらほんとうは
ちがう指で
なにを数えているのだろ
それは昨日も今日も数えたのだけれど
明日も数えるに違いはないのだけれど

だれも生をのぞんだわけではない

ただわたしの生きてきたことを
すなわちその愛と憎しみの過不足を
数えあげるためには
この命では足りないので
あなたはこんなところに
再び生まれてきたのでは
なかったか

僕らは
何かを買って
店員さんの前で金を数えながら
ほんとうはこんなものを
買いたくはなかったのだと
知ってしまう

買う度に
買えないものを
数える日々が
大きな日記に貼りつき
その人間の心の指よ
その日記の在りかよ

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接続

2008年04月27日 14時59分35秒 | 詩の習作
そして
それから
やがて
ようやく
とうとう
ついに

つまり
だから

接続詞の
ことごとくが
とんでもない間違い
に感じて
苦しい隔離の
日々があった

人間のことごとくは
たとえば
座っている
時間であると
あるいは
歩いている
時間であると
たとえば
罵倒し合う
時間であると
あるいは
談笑している
時間であると

人間のことごとくは
時間の立ちのぼる
煙、香り、炎、であると
彼等が
腕に巻き付く時計
柱を這い登る時計
つまり空間化された
時間のようなものを
時間そのものである彼等が
緑の一瞬
青ざめてしまう
瞬間!

その一瞬に
気がつく
時刻というものの
正体が
自分に他ならないといった
写真家も
いなかった
時計が鏡であると
はじめて僕が云うのである
失語の結果

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黒い瞳

2008年04月25日 00時39分11秒 | 詩の習作
カメラのシャッターを
切るとき
確かに暗闇が
まばたきするのを
感じる

それは物質の
黒い瞳である

悪意ではないとしても
それは人間的なものではない

その世界では
記録が
記憶である

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詩の言葉

2008年04月25日 00時22分47秒 | 詩の習作
自分を脱いで
人間を脱いで
男を脱いで
女を脱いで
裸になること
言葉だけになること
一行の恥ずかしい性器になって
踊り続けることである

言葉でしかないことに
絶望しないこと

死ぬことにすら
希望を持つこと

はじめに言葉
なお言葉
いかにしても言葉
いつまでも言葉
最後に言葉
言葉の言葉
であることに
勇気をもつことである


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年輪あるいは潰れざるもの

2008年04月25日 00時08分30秒 | 詩の習作
テーブルという地平線
コップのなかの水海
オレンジという太陽
巨大な木の切断面
その圧倒的な年輪
つまり圧縮され空間化された歴史が
空のように降りてきて
豆腐の上の蝿は身構えた

世界は潰れるぞ!

蝿は
数十個の複眼カメラの
シャッターを同時に切ったのだ

彼の撮った立体写真
悲しい太陽
傾いた地平線
をいつも
思い浮かべるべきである
諸君
歴史は必ず空から
豆腐の方へ
降ってくる


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ダンス

2008年04月22日 01時27分01秒 | 詩の習作
遠くでタクトを振るものがいる

絶え間ない企画と
限りない演出を
送りつけるものがいる
もとより悪意ではなく
しかし善意というわけでもなく
空と海と交わるあたり
貝の聞く潮騒のように
わたしを孤絶の
奇妙なダンスに
さそう音楽が確かにある

今夜は
こんなダンス
ありがとう!

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独楽(コマ)

2008年04月20日 00時30分54秒 | フォトポエム


「独楽」


みんなで
ぐるぐる回っていると
唸りだすんだよ
命の独楽だね
立ってくるんだよ
命の軸だね

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フォトポエム「進化論」

2008年04月19日 22時38分21秒 | フォトポエム
「進化論」


あなたの あくび
宇宙の退屈

あなたの ため息
宇宙の憂鬱

あなたの おなら
宇宙の油断

あなたの 煙草
宇宙の思索

あなたの 鼻歌
宇宙の希望

あなたの 足跡
宇宙の歴史

あなたの くちづけ
宇宙の欲望

あなたの 鼓動
宇宙の時計

あなたの 沈黙
宇宙の創世記

あなたの おしゃべり
宇宙の進化論

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和解

2008年04月19日 01時14分42秒 | 詩の習作
夢を見た
僕は重い病気だった
チューブを咥えていて
オレンジ色の輸血をしてもらっていた
青い血管が透いて見えるような胸をした
若い女だった

夢から覚めると
悪寒がした
便所で
泡のヨダレのようなものを吐いた
二杯目の太田胃散を飲んだ

それからまた寝た
体はつらかったけれど
誰かと和解したように
気持ちは幸せだった

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声だ

2008年04月19日 00時06分06秒 | 決定稿集(カメラオブスキュラ)
声だけを
聞いていることがある
音ではない
歌でもない
言葉でもない
意味ではない
もとよりあなたの
姿ではない
声だ

しゃべらなくても
その間じゅう
あなたは
声だと思う


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真理

2008年04月18日 01時10分16秒 | 詩の習作
「真理」


希望は
むしろ
重荷であるということ

希望を棄てると
空を飛べた
という伝説

しかし
空を飛んでも
しかたがない
という真理

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運命

2008年04月18日 00時20分18秒 | 短詩集
「運命」


オーケストラはいらない

お店の野菜のように
なかよく
ならんでいること

いつのまにか
うつらうつら
していること

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