尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

小鳥

2005年10月31日 23時59分12秒 | 自選詩集
 小鳥

夜半
台風くずれの
風が吹いたら
朝には
透きとおる
液体の季節が来ていた

秋で顔を洗い
秋で口をゆすいだ

それから
一番愛していた
白い小鳥を
南の空へ放った

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2005年10月31日 23時52分55秒 | 自選詩集
絶えず満ちてくるものが
絶えず引いてゆく

僕は泡立つ白いものと
黒いものの間を
足跡で縫っている

渚に明日もなく
昨日もなく

左の靴が濡れている
右の靴が乾いている

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2005年10月31日 23時47分57秒 | 自選詩集
光りの方へ
手をお椀にすれば
そそがれます
透明な季節
コメント (2)
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四月

2005年10月31日 23時40分18秒 | 自選詩集
坊やは玄関を出ると
真新しい光りを浴びた

その顔は
まばゆさで
くしゃくしゃに丸められて
少し心配そうなママよりも
微風(そよかぜ)に揺れている
花のほうにそっくりだ

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月の指

2005年10月31日 23時35分00秒 | 自選詩集
岸壁へ
海を寄せている
月の指

海の琴ひく
月の指

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屈折率

2005年10月31日 23時27分25秒 | 自選詩集
水面に無欲の
詩を書いている
鉛筆のつもりの
人差し指
浸かった部分が
水色の屈折だ

水底から
やるせないため息
How How
が聞こえる
飛び込むまい
死ぬぞ

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玉運び

2005年10月31日 23時17分52秒 | 自選詩集
俺は見たぞ
夜の海が無数の腕を上げ
砂金をまぶした
繊毛のようになびかせ
お月様を西のほうへ
運び去るのを

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鏡面

2005年10月31日 11時52分37秒 | 自選詩集
鏡の向こう
わたしの後ろが
開かれている

その不思議さに
あこがれて
幾度も鏡の中に
入ろうとしたが
わたしに
じゃまをされた

鏡面は
まばたきもせず
叫びもしない

ただ自分が
鏡に似てきたと
思うことがある
静かな夜
あなたに
気持ちもなく
笑っているときなど

わたしの後ろに
深さはない
その平面に
あなたは
あなたしか見ない

その浅瀬で
口をぱくぱく
あなたは溺れている
わたしが
ひび割れるまで

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顔なし

2005年10月31日 11時30分22秒 | 自選詩集
ありとあらゆるものには
顔がある

宇宙の中心には
その顔を一つ一つ指さして
名前をつけていく
大きな人さし指があるらしい

彼にだけ名前がない
彼を指させる人さし指がないからだ

名前が付くたびに
僕はいちいち頷くしかない
頷かないと
いきなり振り向くことがある
すると
彼には目も口も
顔もない

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岩石は待っている

2005年10月31日 11時23分51秒 | 詩の習作
岩石は待っていた
僕も待っていた
バスが来て
僕だけが乗り込んだ
ざまあみろ
岩石はずんずん
置いてけぼりだ
それでも岩石はめげずに
バスではないものを
待っている

こうして岩石は怒りに絶えながら
幾億年待っている
それは僕が生まれる前
暗黒の宇宙中で幾億年
待っていたものと同じものである
僕の中で憂鬱に変化したものである

それを彼は爆発寸前
待ち続けている
バスに揺られながら
僕まで腹が立ってきた

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怪談

2005年10月31日 01時38分14秒 | 自選詩集
おもしろいは
おもしろいかしら
かなしいは
かなしいかしら
AイコールAかしら

あなたがあなたでなかった
ショックから
わたしは
ほんとにわたしかしら
明日来るのは
ほんとに明日かしら

何かが来るって
ほんとは
恐いことじゃあないかしら
コメント (2)
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2005年10月31日 01時27分00秒 | 自選詩集
あなたは
円だ
丸すぎて
中心がない

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浦島Ⅱ

2005年10月31日 01時21分40秒 | 自選詩集
昔話のような
浪のしぶく岸壁の
遠くばかりを
見つめていたせいだろう

我にかえると
指の先に触れた
自分の頬が
無限の遠くで
磯のように老いていた

鏡の中には
太郎!


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浦島Ⅰ

2005年10月31日 01時15分21秒 | 自選詩集
昔話では
大人のために
悲劇で終わっているが
それから彼は
女を捜しに
もう一度海に出て
子供のために
笑って死んだ
太郎!

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シジミ

2005年10月31日 00時54分26秒 | 自選詩集
すっぱい一日やった

この夜を眠ってしまえば
夜明けには
明日みたいな
妙に明るいものが来て

シジミみたいな唇を
少しこじ開け
私みたいなものが
挨拶しているやろう

生きてるよ
って

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