尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

何度でも(決定稿)

2007年07月30日 00時51分18秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
 「なんどでも」



こらえきれず
泣き出してしまうと
あなたのために
死んであげるよと
後ろから
言ってあげる

なんどでも なんどでも
死んであげるよと
なんどでも
言ってあげて
ひつこくて
ついにあなたが
笑い出すと
こうして
右の手で
左の胸を押さえ
僕は
なんどでも
死んできたのだと
思い出す

黒い木から
スズメが
飛びだす明け方に



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雑踏(決定稿)

2007年07月29日 23時52分11秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
 「雑踏」


嫌いになることは
一生かけても
できないことでした
ただ
鏡の向こう側に
入っていったあなたを
探すのに疲れたのです

あなたも
あっという間に
おじいさんになった
わたしを探さないでください
夜ごと
夢の中の
雑踏で

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

葉緑素(決定稿)

2007年07月29日 23時15分40秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
  「葉緑素」



私のなかには
無口な植物がいて
語っていると
その葉が
次第にうなだれていくのが分かる
立派なことを聞かされると
しなだれていくのだ
小学生のように



(6/7UPのものを改稿しました。)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

場所(2/14UPの決定稿)

2007年07月29日 21時12分59秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
  「場所」


この風景は
誰にも説明できない

雨漏りがしないので
「部屋」
というべきだろうか

星と月が巡るので 
「荒野」
というべきだろうか

わたしは
わたしという場所で
いつまでも一人

この秘やかな風景を
死んでも
忘れないでおこう

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しゃぼん玉(決定稿)

2007年07月29日 14時01分48秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
「シャボン玉」


生きたいことと
破滅したいことが
どこまでも
区別できないで
少しゆがんで
あなたは
くるくる回った
 
薄い皮膜に
世界と
僕の顔と
虹まで貼りつけて
あなたは一瞬
光って
笑った

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミイラ男 (ミイラ改題・決定稿)

2007年07月29日 13時19分56秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集
「ミイラ男」


ガラスの中で
死んだまま

ああ
腐りたい
腐りたい


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アイロニー (7/24「風の神」の改訂版)

2007年07月25日 22時59分03秒 | 詩の習作
わたしは風

わたしは
アイロニーではない
わたしが
アイロニーである

つまりわたしはいつも
あなたを新しくしている
  が
古くしているとも云える

見えないものは
感じるしかない
見えないものは
耳を澄ますしかない

わたしは
すべてのものを
過ぎ去る

過ぎ去るから
わたしだ

わたしは風
時の神である

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

忘れざるもの

2007年07月25日 21時27分44秒 | アドリアナ選「まことの詩集その1」
生きるとは
まどろっこしいものだ

一年や二年では
ほとんど分からないことが
十年たってみて虚ろにわかり
二十年、三十年たってみて
はっきりとわかる
ということが ある

わたしがあなたを 
忘れないのではない
あなたがわたしを 
忘れないのでもない
すごした日々が 
二人を忘れてくれないのだ

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ノートブック

2007年07月24日 00時55分25秒 | 詩の習作
初めてのような
春でいて
もう来ないような
春だった

ひかる丘で
ちぎれ雲は ?
のかたちで流れた
蝶は ? 
のかたちで舞った
花は ? 
のかたちで咲いた

ひかる丘で
君は ? 
のかたちで横たわり
まだ書かれていない
秘密のノートブックを
開いた

求道者のように
僕は絶対的な答えを
書かねばならなかった
老賢者のように
まばゆいYESを
書かねばならなかった
精一杯とんがって
書き込んだ
若い君に
白いノートに
無限に届かそうとする肯定と
永遠に届かそうとする歓びを

迷うことがあれば
ページを遡って欲しい
教えてもらったばかりの
たどたどしい字で
書いてあると思う
YES!
YES!
YES!

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くぼみの祭りだ(改訂)

2007年07月23日 23時23分53秒 | 詩集「カメラオブスキュラ」候補集


なんの不思議もなく
今日という日の
また 暮れてゆくことの
その不可解
その愚鈍
そのあきれた暗さに
人は
人の数だけ
灯を灯しはじめる

その時
地球は
まあるく はなく
闇をためる
ひとつの
くぼみで ある

くぼみの中で
揺れているのは
灯 だろうか
闇 だろうか
たまってくるのは
さむい魂 だろうか
あつい身体 だろうか
死にたい生 だろうか
生きたい死 だろうか

わずかな火花で
男の一番暗いものを 女に
女の一番暗いものを 男に
見せ合いながら
金と銀の
蛇 のような
刀 のような
斜めに掛かる
吊り橋 のような
そりかえる
祭りだ

天の川の
さしだす
手の平の
くぼみで
たとえようもない
こんな こんな こんな
祭りだ

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

記念写真

2007年07月22日 22時17分18秒 | 詩の習作
見たこと無いのに
あるような
この風景は
永遠と
僕の間に
はさまっている
記念写真

いや…

永遠と
風景の間に
はさまっている
一枚の
ポートレイト
それが

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

短い手紙

2007年07月21日 00時04分54秒 | 詩の習作
僕は言葉など
役に立たない
人生を歩いてきました
がんばったのは
むしろ
無口な
脚や腕や歯です

やがて
言葉も身体も
役に立たない
圧倒的な
日々が来ることを
知っております
そのわずかな
狭間で
近況を書いております

無口な
手紙を
あなたへ




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

場所

2007年07月20日 00時06分09秒 | 詩の習作
きょろきょろして
忘れないでおこう

雨漏りがしないので
ここは部屋
というべきだろうか
星と月が巡るので 
やはりここは
荒野
というべきだろうか

わたしは
わたしという場所で
いつまでも一人

散歩して
忘れないでおこう

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ポエム

2007年07月19日 23時18分46秒 | 詩の習作
それから後
詩人に
できることは
たとい
拷問されても
詩など書かずに
だまることです

手負いの
詩のために

雨の日の
魚のように
まばたきもしないで
だまることです

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

約束

2007年07月14日 01時38分19秒 | 詩の習作
青年になっても
僕が
あなたを
探さなかったように
きっと
あなたは
一生
僕を
探さなかった

壮年を過ぎて
思い至った
二度と
会えなかったのは
運命
ではなくて
あの日の
二人の
約束
だったと

あの日は
どんな花が
咲いていたのだろうか
あの日は
どんな風が
吹いていたのだろうか

遠ざかる
花と風のなかで
どんなふうに
二人は
笑ったのだろうか


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする