「四月」
坊やは背負った
ランドセルと一緒に
玄関を飛びだした
まばゆい太陽が
坊やの顔を
くしゃくしゃに丸めた
ママやパパよりも
微風(そよかぜ)に揺れている
パンジーたちにそっくりだ
2005年10月31日 / 自選詩集を改作
坊やは背負った
ランドセルと一緒に
玄関を飛びだした
まばゆい太陽が
坊やの顔を
くしゃくしゃに丸めた
ママやパパよりも
微風(そよかぜ)に揺れている
パンジーたちにそっくりだ
2005年10月31日 / 自選詩集を改作
花は樹のことばである
女が死んだていい
と言いつのるとき
花を散らして
樹だってそう思う
この世に千年生きても
これ以上のことって
ないだろうから
ほら
吠えているだろ
夜の花吹雪
女が死んだていい
と言いつのるとき
花を散らして
樹だってそう思う
この世に千年生きても
これ以上のことって
ないだろうから
ほら
吠えているだろ
夜の花吹雪
働くことが下手で
しかしとにかく
えらそうである
とてもえらそうである
だからとにかく
教えることが好きである
つまり来歴をたどれば
勤皇に追放された幕府の
ついにとんでもない
儒学者に行き着くのではないか
とにかく皇居が嫌いである
アメリカが嫌いである
中国が好きである
神を信じないことが
リアリズムだと
信じている
しかしとにかく
えらそうである
とてもえらそうである
だからとにかく
教えることが好きである
つまり来歴をたどれば
勤皇に追放された幕府の
ついにとんでもない
儒学者に行き着くのではないか
とにかく皇居が嫌いである
アメリカが嫌いである
中国が好きである
神を信じないことが
リアリズムだと
信じている
「くぼみの祭りだ」
なんの不思議もなく
今日という日のまた
暮れてゆくこと
その摩訶不思議
そのあきれた暗さに
人は人の数だけ
灯(あかり)をともしはじめる
その時地球は
球体ではなく
闇をためるひとつの
くぼみである
揺れているのは
消えていく焔だろうか
燃えだした闇だろうか
醤油より重く
溜まりくるものは
さむい魂だろうか
あつい身体だろうか
それとも
死にたい生だろうか
生きたい死だろうか
男と女の一番暗いところを
高くかかげ
此岸から彼岸まで
鬼火を斜めに飛ばす
天の吊り橋の祭りだ
天の川のさしだす
手の平に架ける
たとえようもない
こんな こんな こんな
こんなに揺れる
くぼみの祭りだ
なんの不思議もなく
今日という日のまた
暮れてゆくこと
その摩訶不思議
そのあきれた暗さに
人は人の数だけ
灯(あかり)をともしはじめる
その時地球は
球体ではなく
闇をためるひとつの
くぼみである
揺れているのは
消えていく焔だろうか
燃えだした闇だろうか
醤油より重く
溜まりくるものは
さむい魂だろうか
あつい身体だろうか
それとも
死にたい生だろうか
生きたい死だろうか
男と女の一番暗いところを
高くかかげ
此岸から彼岸まで
鬼火を斜めに飛ばす
天の吊り橋の祭りだ
天の川のさしだす
手の平に架ける
たとえようもない
こんな こんな こんな
こんなに揺れる
くぼみの祭りだ
「あ」
おしゃべりな人々の間では
むしろあなたは「沈黙」と
呼ばれてしまうけれど
今日を始める私のために
明日を語ろうとして最初が出ない
思いのみ溢れて
あなた咳き込んでしまった
ランチの後で
友への私の嘘を
あなたの耳は
優しく数えていたね
百 百一 百二
陽だまりの猫など見ながら
百と三
友よ
せめて黄昏には
「あい」を歌おう
けれどあなただけ
あ のところで
いきなり失語した
茄子紺の
空に張り付く
永遠
あ!
みんな大好きなのに
魚のように
木のように
誰とも喋らなかった
あなた
は失意?
いいえギリシャ語の
第一音
十の字に
おかれたα(アルファ)
もだえる希望
わたしたちの
母語のはじめ
あ
おしゃべりな人々の間では
むしろあなたは「沈黙」と
呼ばれてしまうけれど
今日を始める私のために
明日を語ろうとして最初が出ない
思いのみ溢れて
あなた咳き込んでしまった
ランチの後で
友への私の嘘を
あなたの耳は
優しく数えていたね
百 百一 百二
陽だまりの猫など見ながら
百と三
友よ
せめて黄昏には
「あい」を歌おう
けれどあなただけ
あ のところで
いきなり失語した
茄子紺の
空に張り付く
永遠
あ!
みんな大好きなのに
魚のように
木のように
誰とも喋らなかった
あなた
は失意?
いいえギリシャ語の
第一音
十の字に
おかれたα(アルファ)
もだえる希望
わたしたちの
母語のはじめ
あ
本屋の棚に
詩集のふりをして
僕の詩が並んでいる
うきうきしたけど
半年経っても
誰も買わない
恥ずかしい
ついに
お前は詩じゃない
本棚に手をのばし
他人のふりをして
買う人の列に並んだ
この世から
詩集が一冊消えてゆく
それは
トリックのない
魔法のようであった
レジがチンと
声を上げたとき
詩が生まれた
人が死ぬ
詩集のふりをして
僕の詩が並んでいる
うきうきしたけど
半年経っても
誰も買わない
恥ずかしい
ついに
お前は詩じゃない
本棚に手をのばし
他人のふりをして
買う人の列に並んだ
この世から
詩集が一冊消えてゆく
それは
トリックのない
魔法のようであった
レジがチンと
声を上げたとき
詩が生まれた
人が死ぬ
夢から覚めて
ことばに乗っ取られた
体が歩るきだしている
挨拶だ
おはよう
尾崎さん
こんちは
山田さん
さようなら
楽しかったね
亀山さん
やっと
二人っきりだね
僕の心臓
心臓の
言葉はいつも
ひとりごと
ことばに乗っ取られた
体が歩るきだしている
挨拶だ
おはよう
尾崎さん
こんちは
山田さん
さようなら
楽しかったね
亀山さん
やっと
二人っきりだね
僕の心臓
心臓の
言葉はいつも
ひとりごと
猫を抱きながら
遠い声
たとえば
取り払われた
神棚のようなところ
近しい場所から聞こえる
遠い声
生きている人と
死んだ人の出会っている声
つぶれた
ラジオの短波放送
手の届く
遠い遠い声
遠い声
たとえば
取り払われた
神棚のようなところ
近しい場所から聞こえる
遠い声
生きている人と
死んだ人の出会っている声
つぶれた
ラジオの短波放送
手の届く
遠い遠い声
いま
生まれました
左足は空
右足も空
その間だから
飛行機雲が
登っていきます
泣いているのでしょうか
行替えもせず
まっすぐに
一行が
吸っております
吸っております
青空
生まれました
左足は空
右足も空
その間だから
飛行機雲が
登っていきます
泣いているのでしょうか
行替えもせず
まっすぐに
一行が
吸っております
吸っております
青空
立っているのは
誰ですか
骨ですか
血ですか
僕ですか
立っているのは
誰ですか
陽炎ですか
幽霊ですか
思い出ですか
歩き始めたのは
誰ですか
愛ですか
愛ですよ
愛ですか
愛ですよ
誰ですか
骨ですか
血ですか
僕ですか
立っているのは
誰ですか
陽炎ですか
幽霊ですか
思い出ですか
歩き始めたのは
誰ですか
愛ですか
愛ですよ
愛ですか
愛ですよ