尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

紀三井寺・さくら

2008年03月31日 23時24分33秒 | 尾崎まことの「写真館」
昨日の日曜日、朝からあいにくの雨でしたが、紀三井寺、道成寺、和歌山城
と、和歌山の桜の名所を駆け足で回ってきました。
写真は心臓破りの石の階段を登ったあと、たどりついた紀三井寺の境内で撮影しました。

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四月

2008年03月30日 00時47分50秒 | 決定稿集
「四月」

坊やは背負った
ランドセルと一緒に
玄関を飛びだした

まばゆい太陽が
坊やの顔を
くしゃくしゃに丸めた

ママやパパよりも
微風(そよかぜ)に揺れている
パンジーたちにそっくりだ



2005年10月31日 / 自選詩集を改作

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2008年03月30日 00時12分11秒 | 短詩集
花は樹のことばである

女が死んだていい
と言いつのるとき
花を散らして
樹だってそう思う

この世に千年生きても
これ以上のことって
ないだろうから

ほら
吠えているだろ
夜の花吹雪

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詩人の来歴…

2008年03月29日 23時54分17秒 | ことばの玉手箱
働くことが下手で
しかしとにかく
えらそうである

とてもえらそうである
だからとにかく
教えることが好きである

つまり来歴をたどれば
勤皇に追放された幕府の
ついにとんでもない
儒学者に行き着くのではないか

とにかく皇居が嫌いである
アメリカが嫌いである
中国が好きである

神を信じないことが
リアリズムだと
信じている

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言葉は…

2008年03月29日 23時35分00秒 | ことばの玉手箱
世界に拡げた指である。
方法の指である。
指でないものと
指である己を同時に知る
十本の触手である。

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くぼみの祭りだ

2008年03月28日 22時47分17秒 | 決定稿集
「くぼみの祭りだ」



なんの不思議もなく
今日という日のまた
暮れてゆくこと
その摩訶不思議
そのあきれた暗さに
人は人の数だけ
灯(あかり)をともしはじめる

その時地球は
球体ではなく
闇をためるひとつの
くぼみである

揺れているのは
消えていく焔だろうか
燃えだした闇だろうか
醤油より重く
溜まりくるものは
さむい魂だろうか
あつい身体だろうか
それとも
死にたい生だろうか
生きたい死だろうか

男と女の一番暗いところを
高くかかげ
此岸から彼岸まで
鬼火を斜めに飛ばす
天の吊り橋の祭りだ

天の川のさしだす
手の平に架ける
たとえようもない
こんな こんな こんな
こんなに揺れる
くぼみの祭りだ


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宇宙の旅

2008年03月26日 23時38分18秒 | 短詩集
137億年の
暗黒の旅路の果て
ついに星は
自分が星であることに気がつき
命を輝かせるのである
その星の名は
あなたと同じだ

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あ(講義用)

2008年03月22日 07時36分50秒 | 決定稿集
「あ」
   


おしゃべりな人々の間では
むしろあなたは「沈黙」と
呼ばれてしまうけれど
今日を始める私のために 
明日を語ろうとして最初が出ない
思いのみ溢れて 
あなた咳き込んでしまった

ランチの後で
友への私の嘘を
あなたの耳は
優しく数えていたね
百 百一 百二
陽だまりの猫など見ながら
百と三

友よ 
せめて黄昏には
「あい」を歌おう
けれどあなただけ
あ のところで
いきなり失語した

茄子紺の
空に張り付く
永遠
あ!
 
みんな大好きなのに 
魚のように 
木のように
誰とも喋らなかった
あなた
は失意?

いいえギリシャ語の
第一音
十の字に
おかれたα(アルファ)
もだえる希望

わたしたちの
母語のはじめ

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お前は詩じゃない

2008年03月20日 15時18分20秒 | 決定稿集(カメラオブスキュラ)
本屋の棚に
詩集のふりをして
僕の詩が並んでいる

うきうきしたけど
半年経っても
誰も買わない

恥ずかしい
ついに
お前は詩じゃない

本棚に手をのばし
他人のふりをして
買う人の列に並んだ

この世から
詩集が一冊消えてゆく
それは
トリックのない
魔法のようであった

レジがチンと
声を上げたとき
詩が生まれた

人が死ぬ

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心臓

2008年03月19日 10時03分56秒 | 詩の習作
夢から覚めて
ことばに乗っ取られた
体が歩るきだしている
挨拶だ
おはよう
尾崎さん
こんちは
山田さん
さようなら
楽しかったね
亀山さん

やっと
二人っきりだね
僕の心臓

心臓の
言葉はいつも
ひとりごと


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2008年03月18日 22時16分44秒 | 尾崎まことの「写真館」

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時計

2008年03月17日 09時09分19秒 | 詩の習作
目の下
膝の上
毛ぶかい
猫の
のの字を
こころの
ながい舌で

と書く

繰りかえす
のの字
かなしみの時計
の仕草

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遠い声

2008年03月17日 08時51分42秒 | 詩の習作
猫を抱きながら
遠い声
たとえば
取り払われた
神棚のようなところ
近しい場所から聞こえる
遠い声

生きている人と
死んだ人の出会っている声
つぶれた
ラジオの短波放送
手の届く
遠い遠い声


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赤ん坊

2008年03月15日 12時30分15秒 | 詩の習作
いま 
生まれました
左足は空
右足も空
その間だから
飛行機雲が
登っていきます

泣いているのでしょうか
行替えもせず
まっすぐに

一行が
吸っております
吸っております
青空

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立っているのは

2008年03月14日 22時46分39秒 | 決定稿集(カメラオブスキュラ)
立っているのは
誰ですか
骨ですか
血ですか
僕ですか

立っているのは
誰ですか
陽炎ですか
幽霊ですか
思い出ですか

歩き始めたのは
誰ですか
愛ですか
愛ですよ
愛ですか
愛ですよ

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