尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

「ペディキュア」

2006年06月12日 23時12分41秒 | ライトバース集

今日と明日のあいだで
木の葉のように
回りながら落ちてきた天使
背中をまるめて
ペディキュアを塗っている

折れた羽など
とってしまえばいいのに
―合理主義者らしく僕は
不機嫌な天使に忠告した

天使はふり向いた
白い顔に紅い唇と
濡れた大きな目が
不釣り合いだった

元気を出して
歌うように言ったのだ

―私はもう人間よ
明日になれば
飛べない羽を
引きずって歩かなくっちゃね
あなたが青い空の
影を曳いているように

真珠色のペディキュアを
かわかすため
仰向けになって
足をぱたぱたさせながら
歌うように言ったのだ

    (加筆して、本日の再投稿です)

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遅延

2006年06月12日 21時37分35秒 | 詩の習作
僕という赤ん坊に
産声はなかったらしい

僕はのろまであった
うさぎのダンスがおどれなかった
現在ものろまである
将来ものろまであり続けるだろう
だけれども
その概念で僕を説明できるとは
思わないで欲しい
自分の体を含むこの世界から
不断に遅れているのだ
その間隔は
一日ではない、一分でも一秒でもない
コンマo.2~0.3秒の間である

そのわずかなズレのために
永遠、あなたに
つまりあなたを含む
この現在と世界に追いつくことはできない
これが僕についての全てだ

希望があるとしたら
(みなさんでそろって笑うかも知れない)
あなたが読んでいるこれらの言葉である
私は追いつけないが
この言葉たちは
(怖ろしく遅延しているためにかえって)
あなたに届く可能性を持っているのだ
(私のいない明日あなたに夕立が降るように)
これが僕の言葉についての全てだ
秘やかな産声である


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