「白夜」
光子で合成された
幾千万個の透明ゼミが
唸りながら高層ビルを飛び回っている
自ら発光する奴らのおかげで
空に太陽はいらない
夜は追放され
時計はいつも正午だ
ジャイ ジャイ ジャイ
しかし路上では
間違いがたまに起こる
ジャイ ジャイ ジャイ
鳴き声がワンオクタブ高くなったのは
車にひかれた犬の死骸に
粛清ゼミが群がったのだ
セミが飛び去ると
首輪だけが残されている
人々は薄く笑って
奴らの仕事をほめたたえる
ビアウチフル!
死体がないなら死は存在しない
美しすぎる街並みをふたたび
人々は後ろ向きに歩き出す
ジャイ ジャイ ジャイ
僕は耳が痛くなって
白いカッフェに逃げ込んだ
尻のポケットには
死んだ父の帽子を忍ばせている
見つかれば頭から食われてしまうだろう
その帽子には闇が滲んでいるからだ
しかし死の滲んでいない
記憶なんてあるだろうか?
白夜において
すべては完成されたという思想と
それに付随する
終わったという感傷は賞賛される
人生と歴史を始めることは許されない
なにもかも終わったのだから!
カッフェ白い家では
ワルトのミキがウエイトレス
彼女はもともと漫画なんだ
プレスがいきとどいていて
横から見ると一本の線
だから正面からしっぽを振り回す
ジャイ ジャイ ジャイ
とステップを踏みながら
アイス カッフィ!
これで僕はアイスを飲んでいる男
マルタテブルにも
平らなミキにも影が無い
一組の先客は
一本のアイスクリムトを
交互になめあうママと坊やだ
かれらは作法とおり
僕と目をあわさない
どちらが親だかわからんぞ
今、坊やはしかたなく
ママのオモチャしているけれど
ママは昔みたいに裏返ったイソギンチャク
でありたのか?
坊やは明日ゴムのじいさんか?
ジャイ ジャイ ジャイ
白夜に冷たい雨が降ってきた
ジャイ ジャイ ジャイ
と正午のステップを踏んでしまう
透明ゼミの鳴き声が
水滴の走るガラスを突き抜ける
尻のポケットを膨らませているのは
最後に残った
僕の夜だ
光子で合成された
幾千万個の透明ゼミが
唸りながら高層ビルを飛び回っている
自ら発光する奴らのおかげで
空に太陽はいらない
夜は追放され
時計はいつも正午だ
ジャイ ジャイ ジャイ
しかし路上では
間違いがたまに起こる
ジャイ ジャイ ジャイ
鳴き声がワンオクタブ高くなったのは
車にひかれた犬の死骸に
粛清ゼミが群がったのだ
セミが飛び去ると
首輪だけが残されている
人々は薄く笑って
奴らの仕事をほめたたえる
ビアウチフル!
死体がないなら死は存在しない
美しすぎる街並みをふたたび
人々は後ろ向きに歩き出す
ジャイ ジャイ ジャイ
僕は耳が痛くなって
白いカッフェに逃げ込んだ
尻のポケットには
死んだ父の帽子を忍ばせている
見つかれば頭から食われてしまうだろう
その帽子には闇が滲んでいるからだ
しかし死の滲んでいない
記憶なんてあるだろうか?
白夜において
すべては完成されたという思想と
それに付随する
終わったという感傷は賞賛される
人生と歴史を始めることは許されない
なにもかも終わったのだから!
カッフェ白い家では
ワルトのミキがウエイトレス
彼女はもともと漫画なんだ
プレスがいきとどいていて
横から見ると一本の線
だから正面からしっぽを振り回す
ジャイ ジャイ ジャイ
とステップを踏みながら
アイス カッフィ!
これで僕はアイスを飲んでいる男
マルタテブルにも
平らなミキにも影が無い
一組の先客は
一本のアイスクリムトを
交互になめあうママと坊やだ
かれらは作法とおり
僕と目をあわさない
どちらが親だかわからんぞ
今、坊やはしかたなく
ママのオモチャしているけれど
ママは昔みたいに裏返ったイソギンチャク
でありたのか?
坊やは明日ゴムのじいさんか?
ジャイ ジャイ ジャイ
白夜に冷たい雨が降ってきた
ジャイ ジャイ ジャイ
と正午のステップを踏んでしまう
透明ゼミの鳴き声が
水滴の走るガラスを突き抜ける
尻のポケットを膨らませているのは
最後に残った
僕の夜だ