尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

ともしび

2015年02月15日 12時42分57秒 | 新詩集
うどん屋で
普通電車のなかで
教室で
スクランブルの交差点で

自分にしか見えないともしびを
それぞれの形をした身体のなかで
ひとはひとりで守っている

身体を透す
風がひと吹きするまで
空に朝に夜にゆれている

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詩「花のこと」

2014年07月01日 00時43分09秒 | 新詩集
美しい花のことを見ている
そのとき
花はなにも見ていないで
美しいことを想っている
それは昨日のことである
明日のことである

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詩 「月の方へ」

2014年06月09日 08時54分20秒 | 新詩集
「月の方へ」

    

それは
軽い戯れから始まった

竜蔵という名のやくざな男は
惚れた女に
ほんとは一番好きだ
という男の名前を
呼ばせてみた

女は竜蔵の奇妙でしつこい哀願に
しかたなく一度だけ呟いてやったが
瞑った目じりから涙を一筋垂らせると
後は魔にはまり
愛しい男を繰り返し繰り返し呼びだし
地の果てまで届くような自分自身の声の反響に
激しく昂じていった

見たこともない
女の法悦の有様に竜蔵まで
鬼神の操る文楽人形
己が誰だかわからない
白目に黒目、顎と手足の関節を
カックカックさせている

二体の人形は壊れる寸前だった

静けさが戻ると
喧嘩という喧嘩に
負けたことのなかった竜蔵は
黒子のような見えない相手に
初めて負けた気がしたのである

風呂で女に龍の彫り物のある
背中を流させ
女を心配させるぐらい
湯舟に沈む遊びをし
最後に浮かび上がって湯を吐きながら―

 帰るぞ

なに言ってんのよ
ここ
あんたの家じゃない

木戸の外は
醤油の溜まりのような
濃い夜だったけれど
その闇に切って跳ばした
爪 よりも細い月が
釣り糸でも垂らすように
一筋の光を差し入れていた

背中に龍をしょった竜蔵は
右手で光の糸をつまみ
そろーり どこかへ
立ち泳ぎで帰ったそうな

粋がった竜蔵
家は女にくれてやったのだが
その女が一番目の男を招くには
半年とかからなかったそうな

生きているとしたら
そろーり そろーり
今でも立ち泳ぎだろうね
竜蔵という二番目の男
月の方へ




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詩「フェルナンデス」

2014年05月23日 08時56分48秒 | 新詩集
フェルナンデス
あなたはひとつの悲しみ
ひとつの怒り
ひとつの痛み
そしてひとつの窪み
青空にひとつ
たったひとつ

フェルナンデス
それはひとつの痕跡
いまは何もないという
ひとつのやさしい曲線
かつて人であったものが
夢の暗闇にひとつ
たったひとつ

ないけれど
ないものに
叫ぶことはできる
叫んでしまう

フェルナンデス!


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詩「寺院」

2014年05月19日 23時01分37秒 | 新詩集
頭のなかは
宇宙を模した
広大な寺院である
神の誕生日には
数千の白い鳩が降りてきて
数千の銀の鐘も鳴り響くらしい
鳴らぬのは
生まれなかっただけ

寺院は
朝仕事に出かけ
夕方腹を減らし疲れて帰ってくる
鐘の数を数えるうちに
肩の筋肉を一度だけ痙攣させ
指がまがったまま
眠ってしまう

夢は見ない

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写真「西天下茶屋の街並みⅤ」

2014年05月19日 22時57分00秒 | 新詩集

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写真「ブランコと」

2014年05月19日 10時02分08秒 | 新詩集

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写真「スチールとⅤ」

2014年05月19日 10時01分35秒 | 新詩集

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詩「しとは」

2014年05月08日 09時40分39秒 | 新詩集
しとは

しとは
ひとと
なれな
かった
けもの
のかな
しみ

しとは
ひとと
なって
しまっ
たけも
のいか


しとは
ひとは
ひとよ
のいの

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大阪都市幻想「ひと2」

2014年05月08日 09時35分38秒 | 新詩集

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レンズベビーで驚き写真「大阪駅・トリックアートⅣ」

2014年05月01日 00時14分53秒 | 新詩集

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写真詩「帰り道」

2014年04月21日 03時31分19秒 | 新詩集


夢の中はいつも帰り道

生きていることを思いだし
死んだことを忘れてしまい

帰るところがあったのだ
帰ってきたのだ


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詩「睡眠」

2014年04月21日 00時35分25秒 | 新詩集

「睡眠」


睡眠は一本の地平線

その彼方へ
一日の言葉たち
彼らを連れて
夢が帰ってゆく
朝には
希望であったものたちを
連れて帰ってゆく

空には線路がないだろう
雲の上には星があるだろう

さかなのように言葉たち
たくさんの胸びれが光っている
尾ひれが揺れている
かすかに打楽器である
もう誰も歌わない

夢のオーロラ

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写真「詩の目覚めのために3」

2014年04月16日 15時45分42秒 | 新詩集

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写真「詩の目覚めのために2」

2014年04月16日 15時40分11秒 | 新詩集

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