尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

ヴィトンの女

2010年01月31日 23時54分59秒 | 尾崎まことの「写真館」
「ビトン」

女というものは
どうしてガラスの向こうで
プラスチックス
なのだろうか?

男はいつまで
そのつるつるの脚に
注射針
なのだろうか?

資本主義は
男の企てだと
言い張る女の陰謀
だと言い残して
写真家は
死んでいった

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高い空

2010年01月31日 23時16分47秒 | 詩の習作
高い高い
空があるから
杉の子も
私たちの子も
背丈が伸びてゆく
ことができる

広い広い空の下
どこでも
小鳥が歌ってるから
アメリカの子も
アラビアの子も
日本の子も
歌うことができる

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冬のお母さん

2010年01月30日 22時40分15秒 | 少年詩集
雪化粧の
あの山越えて
お母さんの住むという
家の方へ

息白くして
駆けだすと
ほほにふたつ
感じた
ながーい ながーい
風の乳房



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「悪魔の作り方入門―エジプトの悪魔」

2010年01月30日 03時50分39秒 | 「新詩集準備α」
「悪魔の作り方入門―エジプトの悪魔」

 寓話で語れるほど、「人生」や「世の中」は単純ではないかもしれません。しかし、そういった複雑怪奇な人生を我々が歩んでいるとしても、その経験の全体からはとうてい語りつくせないところの、単純な「寓話」も希にあるのです。万有引力の法則のような単純に真実で、しかも怪奇であるような寓話が存在するのです。
 アラビアをはじめ全国各地に、これとよく似たお話が伝わっています。ですから、もともと核になるような、ほんとうにあった事かもしれません。たくさんある話から、エジプトに伝わる一番怖いと思われるお話を、あなたにしてみます。
 いわば悪魔の作りかたの入門です。きわめて簡単で、あなただって、今夜から実践できるかもしれません。ただ時間だけがとてつもなく、かかってしまうそうです。
 
 太古のエジプトの海には、一人の乱暴な巨人が出没していました。どんなに深い海を歩いても、首から上は海面に出るという大きな巨人です。たくさんの船を襲っては積荷を奪い人々を殺していました。
 見かねたエジプトの神様は、魔法を使って、
巨人を人間の手首から上ぐらいの小人に変えました。お酒の入っていた、空のガラスのビンの中に閉じ込めました。そして、二度と悪さをしないように、そのビンを大海の真ん中に沈めたのです。
 海の底は、お日様の光りが全く届かないので真っ暗です。想像してください。昼も夜も現実も夢も、区別できない暗黒の中で、自分の心だけと向き合うことは、とんでもない心の拷問でしょう。
 
 その拷問のために、巨人は反省の日々をおくりました。
「ほんとうに悪いことをした。罪滅ぼしをしなくてはならない。もし、俺を見つけてここから助け出してくれる人がいたなら、どんなお礼をしたらいいだろうか。そうだ、彼の三つのお願いを聞いて、それを魔法で叶えてあげよう」
 こう決心したのです。しかし、百年たっても、ビンはピクリとも動きませんでした。改めて反省しなおしました。
「三つのお願いなんて、けちな考えはよそう。
そうだ、俺は救ってくれた人の奴隷になって、
その願いを全部叶えてあげよう」
 巨人がそう思いなおしてから、百年、二百年、三百年と過ぎていきました。それでもビンはピクリともしません。
 彼の体は次第に闇の黒に染まりはじめました。その闇の暗さといったら、僕等だって死なないとわからない暗さです。とうとう死よりも黒くなりました。
 また、闇の中は気が狂うほど退屈です。何も見えないから何かを見ようと目をこらしました。
 そのために目は血走り、異様に膨らんで玉になって飛び出しました。目の妖怪になりました。
 静かすぎる海の底です。何か聞こえるものはないかと耳を澄ませました。彼の耳は蝙蝠のように先が尖り大きくなりました。目と耳の妖怪になりました。
 食べるものはありません。来る日も来る日も、ビンの内側のガラスをペロペロなめていました。キイキイ嫌な音がするのは、その時指の爪でガラスをかきむしるからです。
 飢えた狼より長くて赤い舌になり、指先はハゲタカのように鋭くなりました。永遠、ひもじいだけの体は、針金みたいに痩せこけました。
 ビンは狭くて、寝転ぶこともできません。
あたりまえですが、ビンの中には椅子がありません。椅子の代わりにバネのようなそった尻尾が生えました。
 ・・・そうして、千年が経ち、悪魔のできあがりです。

 その日、海上はとても天気のよい日でした。運が良いのか悪いのか、イスラエルの漁師が一人、小舟の上で魚をとる網を引き上げていました。
 気味が悪いほど海は凪いでおり、静まりかえっていました。音といったら、網の目から滴る海水の音だけでした。網を引いても引いても、魚は一匹もかかっていませんでした。
 猟師は退屈で欠伸までしました。
「これじゃあ、帰ったら女房におこられてしまう。魚がとれないなら、大昔の宝物でも引っかかっていないかな」
 なんて独り言をいっていると、網の最後のところに、一本の酒ビンがかかっていました。酒飲みの漁師はそれを引き抜きました。
 手にしたビンの中では、真っ黒で奇形の小動物が、なにやら泣きわめいていました。
「ご主人様、コルクの栓を抜いて、外へ出してください。お礼に、あなたの願いを全部叶えて差し上げます」
 漁師はそのグロテスクな動物に恐怖を感じていましたが、女房の方がもっと怖かったのでしょう。
 (願いを叶えてくれるだと。女房のお土産だ!)
 コルク詮に指をかけ、力を込めました。
 ポン!
 臭い匂いとともに、ビンの口から黒い煙がもくもくと立ち上がりました。漁師は驚いて船底に尻餅をつきました。煙が消えると、腰から下を海に沈めた裸の巨人が現れました。
 巨人は魔法の呪文を唱えて、漁師を小人に変えました。天まで届く笑い声を発しながら、自分の千年住んでいたビンの部屋に、今度は彼を閉じ込めてしまいました。
「約束が違います。どんな悪いことを私があなたにしたというのですか?」
 憐れな漁師は巨人に必死で訴えました。漁師の質問にしばらくの間、まじめな顔をして巨人は考えていました。
 「なるほど、君はとてもよい事をした。君のしたことは、間違いなく善行だ。俺は悪魔だから、褒めるわけにはいけない。それは神に褒めてもらうがいい」
 と、答えました。
 晴天に、巨人の不気味な笑い声にあわせて、稲妻が走っています。空が青、黒、白と点滅しているみたいです。
 漁師は助けてもらいたい一心で、手を合わせ泣きながらお祈りしました。神のように拝まれている巨人は、千年ぶりの、いい気持ちだったかもしれません。ですから、ほんとうのことを漁師に言いました。覚えていてください、このほんとうのことを、悪意というのです。
「もし、海の底に沈められてから百年以内に、君が俺を救い出してくれていたなら、君の願いをきいてあげただろう。しかし、今は違う。心境の変化というものだ。これから言うのは悪魔の心だ、よく聞いておけ」
 巨人はお人好の眼をじっと見つめながら言葉を続けました。
「悪魔の心というのは、善い人、善い心、善い行いを、心から憎むものだ。善い人よ、解るか?」
「とても解りません」
 漁師の返事に、巨人はにやりと笑いました。
ビンのガラス越しに、善い人にキスしながら
次のように言い放ちました。
「なるほど、今は解らないだろう。君は若すぎるのだ。そして、善い人すぎるのだ。善は悪を理解しない。悪が善も悪も理解する。それでは千年かけて解らせてあげよう。千年かけて、ゆっくり…」
 巨人は、大海の真ん中に、小ビンを投げ込みました。そして言ったのです。
「ゆっくり、ゆっくり、悪魔になれ!」
 あとは、静かで美しい、夏のエジプトの海です。


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「あ」

2010年01月30日 00時29分13秒 | 「新詩集準備α」
尾崎まこと

 
 あ

おしゃべりな人々の間では
むしろあなたは「沈黙」と
呼ばれてしまうけれど
今日を始める私のために 
明日を語ろうとして最初が出ない
思いのみ溢れて 
あなた咳き込んでしまった

ランチの後で
友への私の嘘を
あなたの耳は
優しく数えていたね
百 百一 百二
陽だまりの猫など見ながら
百と三

友よ 
せめて黄昏には
「あい」を歌おう
けれどあなただけ
あ のところで
いきなり失語した

茄子紺の
空に張り付く
永遠
あ!
 
みんな大好きなのに 
魚のように 
木のように
一日誰とも喋らなかった
あなた
は失意?

いいえギリシャ語の第一音
αに
十字架を背負わしてごらん
それは
もだえる希望の


わたしたちの
母語のはじめ


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木の音

2010年01月15日 00時06分48秒 | 詩の習作
あなたはあなたという背表紙の
一冊なのである
わたしはわたしという背表紙の
一冊なのである

それは閉じられていると
身体と呼ばれており
開かれると心と呼ばれるものであるが
しかし、一生に何度も開かれ
容易に読まれるところの
図書館や書斎にある本ではない
今日、自分の開かれる可能性すら
信じない人がでてきて
もちろん彼はもう紙ですらない

あなたは
わたしの目の前で
あなたをポンと閉じ
わたしは
あなたの目の前で
わたしをポンと閉じたのだ

…何が書いてあったか
ということではない
記憶はいつも
悲しいけれど
空に響いて行くような
木と木を合わせて打つ音なのである

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五線譜

2010年01月14日 01時33分46秒 | 詩の習作
星座の線が結べなくなった

星がまたたいている
夜の甍はかすかに碧く
それらを映している
その下では
女が泣いている
一緒に
赤ん坊が泣いている
泣きやむときが
こわいと泣いている

僕は五線譜で
パズルを解いている
歌うかわりに

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橿原神宮駅前・夜店

2010年01月04日 23時48分15秒 | 尾崎まことの「写真館」

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写真「1月3日のお月さま」

2010年01月03日 23時48分20秒 | 尾崎まことの「写真館」
満月でなかったのが残念ですが。
本年もよろしくお願いいたします。

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