尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

産経・朝の詩に、尾崎の「ポスト」掲載

2007年11月30日 23時44分53秒 | みなさんへ・その他


選者はもちろん新川和江さんです。
月間賞まで頂いた、今年2/15掲載の「まんなか」に続いての掲載です。
最近、ほめられることのほとんどなかった尾崎の詩だったので素直に嬉しいです。
ロマンチック過ぎはしないかと、今度の詩集には載せませんでした。
ちょっぴり痛いけれど、本人も口ずさむことのあるかわいい詩です。
再録します。


「ポスト」


この秋の
深い空のどこかに
赤い切り傷のような
ポストの入り口は
隠されていないか

カポン!

ふいに
明るい音がして
あなたからの
なつかしい便りが
僕のこころに
降りてくるのだ



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誰なんだろう(決定稿)

2007年11月29日 23時59分51秒 | 決定稿集
「誰なんだろう」
             
              尾崎まこと



あなたは誰なんだろう
こんなに
赤茶けてしまったのに
終わりの方は
虫まで食っているのに
はじめの方は
失われてしまったのに

正午
生きるために
母だって
置きざりにした一冊を
黄昏
もう一度
手にしたあなたは

あなたは誰なんだろう
真夜中
星座が天井であるような
こんな大きな図書館で
一番みすぼらしい
一冊を選んで
ていねいに
ページを繰っているのは

恋人だって
読み飽きて
誰かにくれてやったのに
最後の最後
手放さないあなたは

あなたは誰なんだろう
いろいろ
書きなぐってきたけれど
ほんとうは後書に
ひとこと
さびしい
と、しか書いていない本なのに

東雲(しののめ)
金色の息をして
そこんところを
優しくなぞる人差し指の
あたたかい
その持ち主は

あなたは
あなたとしか呼べない
あなたは


 
  (これを決定稿としたいと思います)



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詩集「カメラ・オブスキュラ」

2007年11月28日 01時13分52秒 | 日記
自分の我がままから表紙をやりかえてもらったため、発刊が遅れていた。
今週末か月初めにできあがり、なんとか賞の締め切りまでにまにあえばいいなあ、ぐらいに考えていた。
出勤時、前をいく印刷会社の社長さんが小さな包みを二つ抱えていたので声をかけ、一つを胸に抱いた。すると、それが僕の詩集だったのである。希望とおりの美しい仕上がりだった。

なんと説明してよいのかわからないが、とにかく自分という人間が「本」に化けたのである。そして僕は、なんと美しく化けおおせたものだ!
すると本を(初めて見る女の裸のように)不思議そうに眺めている、この肉体をもった自分は誰であるというのか?
やはり、…僕は、人の脱け殻なのだなあ。

脱け殻になると、
ピチピチした魂を求めて、また助平になる。

もう1500年は生きてきたと思う。
それぐらいの思い出はある。
あと1500年ぐらいは生きていたい。
するとあと一冊ぐらい詩集は出せるだろう。

コメント (2)
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永源寺の紅葉

2007年11月24日 22時15分55秒 | 日記
本日は南森町の写真講座の片岡先生と仲間で、滋賀県、永源寺の紅葉を撮影してきました。
三時間で180枚ほど撮りましたが、どうも紅葉のあでやかさに目がくらみ、
撮ったというよりも、撮らされた、という感じです。
一番ましなのが、これです。
ぼけが偶然きれいだったという他、構図も左側に空きがあったり、
…まだまだですね。
コメント (2)
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五行歌「夢でしか…」

2007年11月24日 00時09分53秒 | 五行歌・自由律俳句
夢でしか
会えない人に
会った朝
おれの吐く
白い息

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さすらう人

2007年11月19日 23時35分15秒 | 詩の習作


風がふいているだろう?

うえのほうからおりてくる
ことばというものをおぼえてから
白いしっぽのようなものを
ふりふり
わたしの魂というものが
わたしにふさわしい体をもとめて
さすらってきたはずだ


しかし今
おぼえてきたことばというものを
しょんべんのようにたれ流ししながら
わたしという老いた体というものが
なくしてしまったらしい魂をもとめて
さすらっているのだ
かわらないのは
あいかわらずみじかい
白いしっぽを
ふりふり ということだね

風がふいているね


   (写真は先月撮影した、奈良県曽爾高原のすすき原です。)
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たとえば空の向こうがわ

2007年11月13日 00時27分11秒 | 決定稿集
たとえば
見上げる空の
向こうがわ

詩は 
何か
ではなく
誰か 
である

あなたを
必要としている
誰か
であり
あなたが
必要としている
誰か
である

わたしが
いま
このように
まっ青な
何者か
であるように

たとえば
見上げる空の
向こうがわ

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五行歌「人間の…」

2007年11月12日 23時47分22秒 | 五行歌・自由律俳句


人間の
つかわぬカメラ
ひょっとして
僕は手にして
街に出るかも
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開設! 「尾崎まこと★フォトギャラりー」

2007年11月12日 22時45分38秒 | みなさんへ・その他
先週末、詩集を印刷会社にまわして、燃え尽き症候群でもないですが、
57年生きてきて、やっぱりというか、とうとうというか、
自分が「からっぽ」に感じます。
そんな男になりたくないと言いながら、
実はせいいっぱい虚勢をはってきたのでしょうね、
犬とか木とか筆箱がえらく思えます。
…というところで、尾崎まことのフォトギャラリーを作り始めました。
(なんのこっちゃ?)

まだ写真アップの要領が得ず、落ち着きませんが、
さすが詩のルネサンス、変わり者の尾崎や!
というような一期一会の写真を目指しますね。

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パズル

2007年11月05日 10時52分01秒 | 決定稿集
「パズル」


かわいい小鳥のさえずりが
はじめて
人の言葉に翻訳できた日
その日は朝から
とても良いお天気だった

宇宙のパズルが解けたのだろうか
ひとびとは次から次へ
ぱっと額が明るくなって
頬をふくらまし
鳥の言葉で
歌いはじめた

子供たちは
辞書をほうりなげ
検事は
六法全書をほうりなげ
指揮者は
楽譜をほうりなげ
兵士は
武器をほうりなげ




(11/1の「さえずり」を改題・改稿しこれを決定稿とします)

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詩集「カメラ・オブスキュラ」脱稿

2007年11月05日 00時08分47秒 | みなさんへ・その他
昨日、脱稿と同時に校了いたしました。
充実感のある反面、
数年をかけて改稿に改稿を重ねてきた作品がほとんどなので、
もうあともどりできないとなると、
まるで自分のものでなくなるようで、寂しいです。
…そうですね出版されれば、自分のものでなく、読み手のものになるのは間違いないです。
もっと寂しいのは、その読み手が「詩」の場合、ほとんど期待できない、ということでしょうね。
それでも出版するのは、読まれるに値するものを書いているプライドがあるからに違いなく、僕も例外ではないです。
これが自分の小説とか写真集だったりしたら、そうでもないのでしょうが、
本屋さんを回ったり、知人に声をかけて、
「50を過ぎてから詩をはじめました。
で、僕の詩集、買ってくれませんか?」というのは
ちょっと勇気がいります。
(そんな根性でどうする!)
ということで、知人も友達もあまりいない僕は、
本ができたら、せいいっぱい本屋さん、回りますね。

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さえずり

2007年11月01日 00時52分30秒 | 少年詩集
小鳥のさえずりが
はじめて
人間の言葉に翻訳できた日
その日はお天気で
ひとびとは
頬をふくらまし
みなさえずっていた

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18センチ

2007年11月01日 00時43分59秒 | 詩の習作
つまり
生まれてから死ぬまで
胸厚かな、
その18センチを歩くんだね

で、
その18センチというのは
産道から
オギャーと生まれる間に
できた亀裂なんだね
君の説では

まあ、そんなところだ
あるいはこうも言えるよ
僕と君
正確に言おう、僕ともう一人の僕との間だが
18センチという訳だ
その差を埋めるんだね
生きている間だ

するっていと、
寝るってどういうことだい?

18センチの隙間に
水を注ぐってことさ

では、君、そそぎにかかろう!

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