尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

おーい、鳩よ

2008年08月29日 02時29分54秒 | 詩の習作
むやみに
うなずいている
訳ではないんだ

僕の胃袋に
羽をつけた形で

それはリズムだね
仕事だね


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鳩よ

2008年08月29日 00時48分44秒 | 詩の習作
 「鳩よ」


人影が去ったあと
冬の公園の日だまりを
見知らぬ鳩が埋めていた
彼等はノアの放った鳩の末裔に
違いないのだろう
その証拠に噴水が高くなると水を怖れ
噴水の形で飛び去った

その夜 見知らぬ一行目が降りてきた
音符のように咥えられている
オリーブの葉を探したが
見出し得ないまま
終わりの行が着地した

灯りを消すと
思い出の日だまりを
首をすくめリズムをとって
昼間の鳩が歩いている
糧を求める一日の終わり
同じ大きさに縮んでしまう
名前のない男の物語を
今日も生きた

寝返りをうって 
デジャビュを追い払い
彼の一行を明日へと改行すると
ここはまだ箱船の底
お前こそノアの末裔だ
とばかりに闇が揺れた

朝が来れば
自分をまぶしい空へ
放つだろう

おおい 
鳩よ

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「反響」

2008年08月27日 21時24分31秒 | 詩の習作
「反響」
    


失われた記憶ばかりを
風と雲に乗せ
果てしなく打ち寄せてくる
正午の空は
水色に輝く時の満ち潮

静けさの潮騒に
僕 
狂ってもいいかい?
君 
笑ってもいいよ!
この日 命あるものは
みんなそろって
泣きだしてもいいのだ

永遠を望む
地球という渚で

地平の森と太陽と
野の花と獣たち
戦車と
少女と蝶々と
歩みを休め手を繋ぎ
自らの来し方よりの
ピアニシモに
耳を澄ましている

波と波の隙間から
神の朱い舌先が
ちろっと見えて
美しい母の悲鳴が
ダイヤモンドに
光ったなら
今日は
私たちの誕生日

時の彼方に
ヤー
と呼びかける
始原の肯定
あの日の
反響

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墓標

2008年08月27日 21時11分50秒 | 詩の習作
机に伏せている
僕のたった一つの詩集よ
お前は僕の墓標になるのだろうか

いいえ、地球の上に立ちつくしている詩人よ
お前こそ既におれの墓標だ

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待合室

2008年08月19日 23時59分50秒 | 詩の習作
世界は ある日突然
音楽の絶えてしまったあとのようではないか
このたぶん独りぼっちの惑星で
何も待たないでいる
生き物はいるだろうか
確かに彼等はもう歌わない
叫ばないだろう

何も待たないでいる
静物はあるだろうか
たとえば棄てられた
ガラスの花瓶とか

空の下の
こんな渚では
絵に描いた絶望でさえ不安をおびき寄せる
だから昆虫と石でさえ
まるで生まれてまもなく
ひどい暴力を受けたかのように
口を結び目を穴にして
ただただ待つのである

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石の花(大阪弁バージョン)

2008年08月12日 00時01分49秒 | 詩の習作
「石の花」


空想してみ
真空の空に丸い小石が一個
ぽっかり浮かんで
くるくる回ってるんや

石に川が流れてな
石に草原が開けてな
石に花が咲いたんや
花、花、花のなかで
今、女の子が笑ったんや

そんなんあったら
ほんまに奇跡やわっ、て?

地球のことやんか
君のことやんか

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ふう ふう(大阪弁・決定稿)

2008年08月11日 23時25分08秒 | 詩の習作
「ふう ふう」
                 


ふう ふう
なあ おっさん
希望はもういらんな
若いときはええけど
中年過ぎたら
しんどいだけや
いるのは
やらしい欲望やで
残っとる欲望を
ふう
どん粉みたいに
こねて叩いてな
うすく延ばすこっちゃ
おのれの命のまな板の
端っこまでな

ふう おっさん
曇った眼鏡ふいて
ほら見てみい…
ちゃう、ちゃう
誰がねえちゃんのミニスカート
覗いてみいゆうた
びっくり箱ちゃうさかい
あんなもん百年たっても
なにも出てけえへん

新聞にのっとる
政治家の顔やがな、顔
生き残っとるのは
顔見ただけで
ふう 
どすけべやがな
希望なんか
関係あれへん こいつら
すけべいの順番で
えらなっとる

なあ おっさん
黙っとるけど
この素うどん
ほんまにうまいなあ

ごちそうさん ふう 




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作法

2008年08月10日 21時28分16秒 | 詩の習作
夢の身体に
仕込まれていた作法とおり
眼差しで
X軸を引く
Y軸を引く
Z軸を引く

それでよいと
いつもの朝が来て
朝が立つのである

女の身体に
仕込まれていた作法とおり
眼差しで
X軸を引く
Y軸を引く
Z軸を引く

答えはないと
今夜限りの
夜が来て
夜が立つのである

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今日

2008年08月08日 00時34分53秒 | 詩の習作
今日見知らぬ男に出会った
まず男が僕に挨拶をした
またお会いしましたね
覚えがなかったので
恥ずかしかった
その気持ちを打ち消すために
いつお会いしましたか?
と聞くと
あなたは前回も同じ事を聞きましたよ
と男は言った
そして彼はこう続けた
その時も私は言ったのです
お会いしたのは328回目の今日でした
いつもお会いするのは今日なんです
ですからちょっと修正して言わねばなりません
前回お会いしたのは329回目の今日でした

男は哀しげに
手元のカウンターをひとつ押した
なるほど世界はいつも今日なんだ

男の言うことは理解できた
いつも今日なんだ
この世界から脱出することは難しい
だから歌えない
しかし、そのためだろう
この男も
僕も随分年をとった気がした
もちろん気がしただけである

噴水の鳩を見ながら
男は言った
本当に年をとるのは
天使たちだけです

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五行歌決定稿集・Ⅲ

2008年08月01日 23時26分44秒 | 五行歌・自由律俳句

六月の水平線は
地球の首飾り
ダイヤモンドの連なりが
わたしの方へ
押しよせる



白い帽子
黒い帽子は
みんなの帽子
青い帽子が
地球です



死ぬということを
納得できかねて
ベッドから
空の私に伸びてきた
あなたの美しい腕



落ちてきた蝉が
鳴き止んで
かきむしる
瑠璃色の




一三七億年の旅路の果て
暗黒の星は自分に気がつき
体を輝かせたのである
その星の名は
あなたと同じだ

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五行歌決定稿集・Ⅱ

2008年08月01日 23時22分59秒 | 五行歌・自由律俳句
流れ星は銀色に言いました
少女よママに叱られただけで
北斗七星で首をくくるなんていけません
カシオペア座でブランコしてなさい
さようなら



煙草を消して
テレビを消して
明かりを消して
そっとキスしてぽっと灯す
あなただけを



わたしという本
軽いキスは
時の栞
深いキスは
命の栞



追えばどこまでも遠ざかる
不思議な地平線を見つめ
君は立ちつくしている
そこは誰かが見ている
地平線の上だよ



流れ星が通ると
天の川を振っている
夜は黒くて
なんと胴の長い
犬だこと

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五行歌・決定稿集Ⅰ

2008年08月01日 23時20分06秒 | 五行歌・自由律俳句

バス停では人々の頭から
様々な暗号が吹き出ております
△×□★○☆◎?…
バスが来れば一斉に




まっ青な原稿用紙に
改行できずに
まだ駈けのぼっている
少年の日の
真っ白い飛行機雲



君のしゃべるが
しゃべり続けるあいだ
僕の
だまるが
だまっている



二人 あい
を歌おうとして
あ で絶命
永遠の
ああああああああああああああ…



あっ
凧が
地球を
ひとつ
揚げている

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