尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

目をこぼす

2006年06月03日 22時26分59秒 | 詩の習作
朝になったら
晴天の帽子をかぶり
きょろきょろ
しながら
はじめの一歩を
歩きだす赤ん坊
結末は
わかっている
わからないのが
空の明るさと
庇(にさし)を斜めに被った
不機嫌な人々の行列だ
線路と机ときんかくし
涙ではなく
両手に
目をこぼす

わかっているのは
未来だ
わからないのは
今だ
鼻も
耳も
歯もこぼす
死んだ
自分を
こぼしながら

ふと 信じる
おっさんと
兄ちゃんの間で
しょんべんが
出ている
つかの間を
虹のように
信じる

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青い帽子

2006年06月03日 20時52分19秒 | 短詩集
星の帽子は
みんな被っているけど
青い帽子を被っているのは
地球です

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北村太郎詩集

2006年06月03日 00時00分14秒 | 読書記録
詩人にはこの世ならざる世界からの視線が必要であるが、北村さんに限っては
あの世からの視線をいやおうなしに持ち続けた詩人だと言うことが出来る。

かどの喫茶店でコーヒーをすすったりメモをつけたい
ひとの心理をいぶかしく思ったり計算したり怒りを感じたりする
怒りは回転する独楽でおのれに目がくらみ
かすかに中心の意識はあるがまもなく倒れることを予期し
声を限りに叫ぼうとするがしかしかぼそく唸るだけで
最後にひと揺れふた揺れしてけっきょくぶざまのものすなわち形が残る
    (十六行と六十行 白露2より)

怒りの現象について述べているようで、
実は人生の全体を俯瞰しているのだと読める。
詩人の意識においては生活の様々な局面が、「まもなく倒れることを予測し」ながら運ばれてゆき、つまるとろ「けっきょくぶざまな形が残る」のだ。

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