尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

告げ口

2008年06月30日 23時20分51秒 | 詩の習作
鏡を見ると
いつも
鏡が見ている

昔々
鏡から
立ち去る者がいた

鏡は私に
告げ口を言う
それから私は
立ってなさい!
と、彼女を笑わすのだ

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戦後の顔

2008年06月30日 23時11分33秒 | 詩の習作
みんな
携帯を片手に
戦後の顔つき

つじつま合わせの
ぴっぽっぱ
時間と身体を
電子で縫っている

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舞台

2008年06月28日 22時35分20秒 | 詩の習作
舞台から観客席を見たとき
ほんとうの舞台が見える

地下鉄の天井にぶら下がっている
週刊誌の広告の見出しが叫ぶとおり
ほんとうは終わってしまっていると
金輪際何もはじまらないと
そして誰もいなくなったと
満席はすべての空席だと

いつもチラシが早いのだ
詩は遅刻した

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雹が降るように

2008年06月28日 22時17分22秒 | 詩の習作
本日
哀しいと
幸せとは
矛盾しない

楽しいと
不幸が
共存できたように
真夏に
雹が降るように

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不在

2008年06月27日 22時53分16秒 | 詩の習作
まっ青な空
雨の降る空
月と星の空
夢の中だって
見上げれば
いつでもそこにいる



空は私なんか
呼んだりしない
私が空を
呼んでしまうのである
空は
私の不在であるから

呼んで振りかえるのは
空ではなくていつも
この私なのだ
空は
私の不在であるから

静けさに
いつも呼んでしまう空だけど
ほんとは空に呼ばれる日
その日がとてもこわい僕

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白いものたたむ

2008年06月26日 00時27分18秒 | 詩の習作
洗い曝された下着をたたむのである
生きてきた自分をたためないので
心をこめて白いものたたむのである

ちびった鉛筆をけずるのである
自分をけずっているので
心をこめて芯を削るのである

失敗ということではない
成功ということではない
深夜たたむのである
削るのである

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キャベツ畑のウサギ

2008年06月26日 00時14分59秒 | 詩の習作
僕のこころに風の吹かない
一面のキャベツ畑があるのである
置かれた赤ん坊が泣きやまないのである
だから案山子が一心に祈るのである

これが特別な風景だとは思わない
それにしてもランニングシャツ姿と半ズボンで
ずいぶん歩いてきたと思う
今晩は自分をウサギに直喩して眠るのだ

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進化論

2008年06月25日 09時56分38秒 | 詩の習作
ほんとうに おっとろしいのは
たとえばどくへび 
コブラのるいではない
いのちのない モノ である
たとえばえんぴつ
きみのめのまえのものを
じっとみつめたまえ

いずれはないぞうが ないぞうされはじめ
くちとせいきがきざまれ めとみみがつき 
あしとてがはえ はしりだすのだ

ほんとうにおっとろしいことは
えんぴつが きみのおとうさんに
なるというかのうせい
というよりもそれは このうちゅうのしゅくめいだ
そうでなければ ある ということがなりたたないのだ
えんぴつがえんぴつであるのは
にんげんのかけたのろいであるが
そののろいをしゅくめいがとっぱするのだ

そのぶきみさだ
きみがめのまえにしている 
ちっぽけではあるが ながいけんたいの
おっとろしさは

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文脈病

2008年06月25日 09時47分03秒 | 詩の習作
文脈はのたうちまわる
一本のヘビである

無数に横断する切断面のために
哀しいヘビは今日も裸体で走るのだ

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テントウ虫

2008年06月23日 01時14分35秒 | 詩の習作
どうしたらスマートに説明できるであろうか
1たす1が2であることが
経験ではなくて原理的に信仰であることを
たとえば人間がその信仰により
飛行機なるものを鳥に似せて作り
今日も大空を飛んでいることを
もちろん1たす1が3の日が来れば
たちまち落ちるのである

どうしたら嫌味なく説明できるであろうか
飛行するテントウ虫を見たまえ
彼はまさしく1たす1は2であることの
最も熱心な信者であること
命あるものすべて
その教団に属していること

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やっこさん

2008年06月23日 00時15分21秒 | 詩の習作
ことば がわたしなのか
わたしが ことばなのか
わからなくなることがある
はっきりしていることは
ことばはじぶんが死ぬとは
これっぽちも
しらないのである
死にたいしては
こえもでないのである
やっこさんは
いちたすいちは に 
としかいえないのである
ところで
このわたしは
わたしであろうか
ことばであろうか

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愛のミイラ

2008年06月23日 00時03分07秒 | 詩の習作
愛の瞳を
じっとみつめてやりますと
生まれたばかりの憎しみの炎が
チロチロ見えたりしますが
憎しみの瞳を
じっとみつめてやりまっすと
きっと愛のミイラが横たわっております

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きのこ雲

2008年06月22日 23時54分09秒 | 詩の習作
見て見て!
僕の瞳を
落ちたんだよ
僕一人に
原爆が

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花は?

2008年06月21日 11時18分17秒 | 詩の習作
人はどんな動物よりも
木に似ている

裸になって全身を鏡に映してみると
根がないのに立っている自分が
いぶかしいだろう

つまり人間は
歩き始めた最初の木たちだ

花は?

掌のなかに
花が埋まっている

だから君は
大切に握るのだ

だから君は
ぱっと開くのだ

立ち止まっては
うんと遠くのように
掌を見つめてしまうのだ

だから僕たちは
繋ぐのだ

咲いている
花と花

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のっぺらぼう

2008年06月21日 09時55分37秒 | 詩の習作
深夜
手で顔を覆ってみる
掌と顔の間だが
夜明けのように
白んでくる

大昔の哀しみたちが
鳥のように空をもどってきて
哀しいことを失った
今を慰めてくれる

目という相似形の湖が消える
鼻という孤立の山が消える
口という深い亀裂が消える

私は
卵のように
真っ白な剥き身で
暗闇に差しだされている

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