地下鉄南森町駅三号出口を上がるとすぐ向かいにある「ニッシンベーカリー」さんです。日本で一番長い商店街だ、といわれている天神橋商店街のなかの一軒です。朝日新聞にも紹介されたこともあるそうで、特に「もちパン」?はもちもちした食感で、とても美味しいです。
ショウウインドウにならんでいるパンは、まるで夕陽に焦がされているようです。その香ばしい風景に、僕はうっとりしてしまいます。
ショウウインドウにならんでいるパンは、まるで夕陽に焦がされているようです。その香ばしい風景に、僕はうっとりしてしまいます。
「パントマイムの花束」
果てしなく遠く
美しい夢を見るために
明かりを消して まぶたを閉じて
さらにひとには
どれほどの深い暗闇が
必要であったのだろうか
今ここという国に
新しく目覚めるために
瞼をひらき窓を開け
さらにひとには
どれほどのまぶしい忘却が
必要であったのだろうか
海のような暗闇と
空のような忘却と
汗を撒き散らす激しい
生の舞踏の終わりに
世界がしんと息を呑むその瞬間
パントマイムで
そっと差し出すバラの花束
30センチの痛い希望
ひとが
あなたのために
とびきり上手に歌うためには
ひとが
あなたのために
とびきり上手に踊るためには
海のような暗闇と
空のような忘却と
ああ ひとよ
胸に抱える
見えないバラよ
果てしなく遠く
美しい夢を見るために
明かりを消して まぶたを閉じて
さらにひとには
どれほどの深い暗闇が
必要であったのだろうか
今ここという国に
新しく目覚めるために
瞼をひらき窓を開け
さらにひとには
どれほどのまぶしい忘却が
必要であったのだろうか
海のような暗闇と
空のような忘却と
汗を撒き散らす激しい
生の舞踏の終わりに
世界がしんと息を呑むその瞬間
パントマイムで
そっと差し出すバラの花束
30センチの痛い希望
ひとが
あなたのために
とびきり上手に歌うためには
ひとが
あなたのために
とびきり上手に踊るためには
海のような暗闇と
空のような忘却と
ああ ひとよ
胸に抱える
見えないバラよ
プラットを轟音をたてて
過ぎ去っていく
急行列車の窓の中に
そのたびに浦島太郎は
首をふって見送って
今年はなんだか
もう探さなくてもよいのだ
髪が白くなって
喜びも悲しみも高速で
通りすぎていって
過ぎ去っていく
急行列車の窓の中に
そのたびに浦島太郎は
首をふって見送って
今年はなんだか
もう探さなくてもよいのだ
髪が白くなって
喜びも悲しみも高速で
通りすぎていって
「椅子」
神様にしか見えないだろうけど
見て
お客の来なくなったカフェ
陽だまりには
白いテーブルと
二つの椅子
帰ってきたよ
遠い季節が帰ってきたよ
思い出が二つ腰掛けている
ほら風が吹くと
砂ぼこりだって立つ
木漏れ日が踊っている
あなたを
思い出すと
生きてはいけない時代が
ずっとあった
けれど
帰ってきたよ
やさしい物語になって
地球を一周して
風のように
帰ってきたよ
ほら
砂ぼこりだって立つ
木漏れ日が踊っている
陽だまりには
白いテーブルと
二つの椅
もう大丈夫
思い出しても大丈夫
神様にしか見えないだろうけど
見て
お客の来なくなったカフェ
陽だまりには
白いテーブルと
二つの椅子
帰ってきたよ
遠い季節が帰ってきたよ
思い出が二つ腰掛けている
ほら風が吹くと
砂ぼこりだって立つ
木漏れ日が踊っている
あなたを
思い出すと
生きてはいけない時代が
ずっとあった
けれど
帰ってきたよ
やさしい物語になって
地球を一周して
風のように
帰ってきたよ
ほら
砂ぼこりだって立つ
木漏れ日が踊っている
陽だまりには
白いテーブルと
二つの椅
もう大丈夫
思い出しても大丈夫
「真珠貝の詩」
おおむかし
誰かがわたしを
投げ入れたのでしょうか
わたしは
永遠を聞いている耳の形で
小石のように
深い海の底に置かれています
シュルラシュルラ リルリル
シュルラシュルラ リルリル
遠い呼吸のような潮騒の音に
耳を澄ませています
果てしない音楽と
果てしない夜と
果てしない夢と
それでもあなたの淡い光を
感じることがあります
気持ちまで果てしなく
広がってゆくその真んなかに
たった一つ
痛みとともに結晶していく
小さな星があるのです
シュルラシュルラ リルリルリル
シュルラシュルラ リルリルリル
お月さま あなたは
こんな形じゃないかしら
(むかし作った詩を書きなおしました。)
おおむかし
誰かがわたしを
投げ入れたのでしょうか
わたしは
永遠を聞いている耳の形で
小石のように
深い海の底に置かれています
シュルラシュルラ リルリル
シュルラシュルラ リルリル
遠い呼吸のような潮騒の音に
耳を澄ませています
果てしない音楽と
果てしない夜と
果てしない夢と
それでもあなたの淡い光を
感じることがあります
気持ちまで果てしなく
広がってゆくその真んなかに
たった一つ
痛みとともに結晶していく
小さな星があるのです
シュルラシュルラ リルリルリル
シュルラシュルラ リルリルリル
お月さま あなたは
こんな形じゃないかしら
(むかし作った詩を書きなおしました。)
小さな肩を並べて帰る夜道はこんなに暗いのに
その声音のなんと明るいことだろう
ああ僕は信ずる
きみ達の希望こそかなえられるべきだ
覚えたばかりの英語読本(リーダア)を
声たからかに暗唱せよ
スプリング ハズ カム
ウインタア イズ オオバア
(杉山平一詩集『夜学生』より「夜学生」抜粋)
この寂しさは決して
人恋し
ではない
もの心ついた頃から
知っていた
あっちのお家(うち)に
こっちのお家に
灯がともってゆく
この夕暮れの寂しさ
わたしは
生まれたのではない
置かれたのである
ひとつの蒼い林檎として
このお家の中に
子供だけが知っている
果実のような
ヒミツ
その指のこと
人恋し
ではない
もの心ついた頃から
知っていた
あっちのお家(うち)に
こっちのお家に
灯がともってゆく
この夕暮れの寂しさ
わたしは
生まれたのではない
置かれたのである
ひとつの蒼い林檎として
このお家の中に
子供だけが知っている
果実のような
ヒミツ
その指のこと
「春」
ほんとうのランナーは
見えない時なのだろうか
りレーのように
梅が咲き
桃が咲き
桜が咲く
花たちが咲きはじめると
歌うように
願う
わたしも新しく
生きたい
花たちが散りはじめると
手紙を書くように
思い出す
私は何度も
新しくされた
花たちの世界のただなかで
先ほどから
見えているのは
なだらかな
きみの背中であって
きみに流れているはずの小川を
誰だって一度も見たことはない
そのせせらぎを聞いたことはない
水浴びをする小鳥たちも
僕は永遠に見ることはないだろう
きみの中のたくさんの花も蝶も太陽も
少女のころの秘密のノートも
何一つ見ることはできないのだ
(不思議なことにこの明るい国に人の気配はない)
だとしたら神でもない僕は
きみの領土のどの方角から
やって来ることができるのだろうか?
小鳥や太陽が僕だというわけではない
奇妙な形の雲が僕だというわけではない
しかし蒼い壁の向こう側から
遠い声がするだろう
彼は小心の大男である
そして国境の空にわずかな罅ができる
憶えていてほしい
永遠でさえ過ぎ去る
時の隙間から
きみが振り返る
見えているのは
なだらかな
きみの背中であって
きみに流れているはずの小川を
誰だって一度も見たことはない
そのせせらぎを聞いたことはない
水浴びをする小鳥たちも
僕は永遠に見ることはないだろう
きみの中のたくさんの花も蝶も太陽も
少女のころの秘密のノートも
何一つ見ることはできないのだ
(不思議なことにこの明るい国に人の気配はない)
だとしたら神でもない僕は
きみの領土のどの方角から
やって来ることができるのだろうか?
小鳥や太陽が僕だというわけではない
奇妙な形の雲が僕だというわけではない
しかし蒼い壁の向こう側から
遠い声がするだろう
彼は小心の大男である
そして国境の空にわずかな罅ができる
憶えていてほしい
永遠でさえ過ぎ去る
時の隙間から
きみが振り返る