尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

条件

2006年09月30日 23時58分59秒 | アドリアナ選「まことの詩集その1」
君も僕もいなくても
月はあそこにいるだろうが
もし月がいなければ
君も僕もここにはいない
ということなんだ
だからといって
明日から
どういうことでもないが
一番幸せな二人が
月の光を浴びて
誰よりも寂しい訳は
そういうことだよ

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それから

2006年09月29日 22時56分07秒 | 詩の習作
雨の日だった

うちつづく雨音のような
女の悲しい話だった
その話が
しばらくとぎれたところで
男は口を開いた

それから?

それから
あなたに会って
こうしているのよ

窓の外では
雨が一段と激しくなった

  *

それから? 
については
それからは 
つまり
いつも これからのこと 
だったので
男と女のあいだでは
永遠に
話されることはないと
思われたのだけれど

二人は共に年老い
まず
男が死んで

それから
三日後
女は死んだ
雨の日だった


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腹ぺこ

2006年09月28日 23時58分47秒 | 詩の習作
歩いていると
向こうの方から
うさぎの夫婦がやってきて
私を食べないで
と言いました
言われないと
食べたのです
さらに歩いていると
カエルの兄弟がやってきて
私を食べないで
と言いました
言われないと
食べたのです
それから
腹ぺこのまま
寝ころんで
夜空を見あげました
星の連中は
なにも言いませんでした
私は星の連中に言いました
私を食べないで

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コオロギ

2006年09月28日 10時24分07秒 | 短詩集

恋人のかたちを
さぐる触覚の先
震えている
コメント (1)
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さびしさ

2006年09月28日 10時08分20秒 | 短詩集
小鉢に沈む
エビの背中の
つややかな円み
あたりに

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パンを食い

2006年09月27日 22時26分59秒 | 詩の習作
駅の
パン屋のパンを食い
四十年前の
父の急死について
考える
誰が
救急車を呼んだか
思い出せない

翌る日
こんな目に会っても
パンは食えるんだ と
思った

パンを食い
糞をした
そして
寝た

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乱気流

2006年09月27日 21時57分20秒 | 詩の習作
クリスタルガラス
で隔離された
ガラスの小部屋に
秒針の起こす
乱気流を
感じる
 
腕に
規則正しい
タイフーンを
巻きながら
汚い
マンガを
読んでいる

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2006.9/23「誰が偉いか?」

2006年09月23日 22時32分52秒 | 日記
小学校二年のとき
父が与えてくれた
「世界の偉人伝」という本のために
自分はイエスよりえらいと思ったことがある
友のために死ねる人が一番えらい
と、彼が言ったと書かれてあって
僕は友どころか、犬のために死ねるのに
と思った
そのうち小さいイエスは
自分はとてつもない馬鹿者らしい気がついた
どれほど馬鹿者であるかというと
生きていけないぐらいの
たいへんな馬鹿者である

右手のことを左手は知らない
左手のことを右手は知らない
実生活では困ったが
時間つぶしに
一人でじゃんけんできたのだ
これはほとんど本当だ
で、
生きていけないほどバカだ
困った困ったと思って
汗をかきながら じゃんけんしていると
マリアのような女が
15年に一度の割合で現れた
これこそ
君は信じないだろうが
ほとんど本当だよ
ただ、真剣にじゃんけんするんだよ
後出しはいけない

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日記・2006.9/22「奥さんの目」

2006年09月22日 23時14分35秒 | 日記
今日は
出会う人々が
ことごとく
モジリアーニの首
のように
細く伸びて見えた
というか
たくさんの
長い首が
ツクシのように
プラットホームに
生えていた

生きることに
もう少し
熱心にならねば
悲しい
というか
首の長い
モジリアーニの奥さんの目は
とても蒼い
お空の二つの
穴だよ

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石の塔

2006年09月18日 22時16分59秒 | 詩の習作
時を流れる河には
賽の河原と呼ばれる
彼岸と此岸の間の
虚ろな場所があるらしい
供養のためにそこで積まれた
ささやかな石の塔を
壊す者の正体が
赤であれ青であれ
筋骨隆々の鬼だとは
どうしても思えない

 ★

グラスのなかの
氷がとけて
それぞれの位置をより平らに
変えるときの
澄んだ音がある

風鈴よりも
ささやかだけれど
二人の沈黙を
小さく驚かせるには
充分だった

 ★

人生という小径を
ある期間 何事もなく
歩いていると
心という 虚ろなグラス
の中ではあるけれど 
小銭ほどのちいさなものが
誰の供養のためにであろうか
重ねられていくものらしい

秋の深まるある夕暮れなど
不意にそいつが
平らにされる音がして
その小さな塔の存在に
初めて気がつくのだが…
トンネルを一散に逃げていくのは
幼い子供の手であった

何事もなく
とは云うけれど
自分もいつかは
鬼だった
そのために
私の平穏を望まない
その子の気持ちは
充分解るのだ

 ★

テーブルに置かれたコップ
あるいは
海岸都市にそびえる超高層ビル

目の前に不動の振りをして
立つものならば なんでも
小憎らしいことがある

できることはすることだ
例えば一杯の水を飲み干すとか
潮風にこの身を晒すとか

 ★

己もまた一つの塔であること
その塔のいつかは
平らにされるまで
コメント (1)
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詩曰く

2006年09月01日 23時55分53秒 | 詩の習作

詩は
詩のふりをするのも
疲れたそうだ

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