構図や明るさ、彩度を少しいじるぐらいで、ほとんど編集しない主義だったですが、ちょっと遊んでみました。「人気のないバスの不気味」というようなテーマでね。編集はフォトショップエレメンツを使っていますが、お金があれば来年ぐらい本物に挑戦しようかな。
構図や明るさ、彩度を少しいじるぐらいで、ほとんど編集しない主義だったですが、ちょっと遊んでみました。「人気のないバスの不気味」というようなテーマでね。編集はフォトショップエレメンツを使っていますが、お金があれば来年ぐらい本物に挑戦しようかな。
「おれだけ村の火の玉坊や」
尾崎まこと
お侍さんが、刀をふりまわしていばっていた、大昔のお話です。
お山にはさまれた、おれだけ村という村がありました。冬には雪が積もる、寒い村でした。村のまん中には、丘の広場がありました。そこには大きなぶどうの木が一本、でんと座っていました。夏には、たくさんおいしい実がなりました。村の人たちは、
「これはおれだけのぶどうだ、誰にもあげるものか」
と口々に言いはって、うばいあいの喧嘩になります。まるで、喧嘩祭りです。ぶどうがつぶれて、みんなの顔はぶどう色に染まりました。
秋には、柿のとりあいになって、みんなの顔はかき色になりました。春には、桃のとりあいで、みんなの顔はもも色になりました。お米ができても、おいもができても、
「おれだけのものだ」
と叫ぶので、この村は「おれだけ村」と呼ばれたのです。
ある年の、ほんとに寒い寒い冬のことでした。秋の収穫が少なかったので、おれだけ村の村人は、食べ物にも、暖まるための炭にも困るようになりました。昼間でも、灰色の雲が空をおおい、夜明け前のように暗いのです。
「お日様が出るともう少し暖かくなるのになあ」
と、みんな口をあいて空を見ておりました。
すると雲に裂け目ができて、まばゆい金色のロープがするする降りてきました。きらきら輝くロープは、雪でおおわれた広場のまん中の、大きなぶどうの木まで下がってきました。
「なんだろう?」
村人は空に顔を向けたまま、広場に集まってきました。みんな、ロープのまわりに輪になって、がやがやしていました。
「わっ、お日様のしずくが降りてくる!」
そうです、火の玉坊やが、ロープをつーと降りてきたのです。坊やは頭の毛が逆立っていて、たいまつのように燃えていました。顔と体は人間の子供とおなじで、人なつっこい丸さです。トラの皮のパンツをはいていました。
「寒かろう、火の種はいらんかえー、火の種はいらんかえー」
広場に降り立った坊やは、歌うようにかわいい声で繰りかえして言いました。
誰か一人が言いました。
「雷さんの子だ!」
あっという間に、雪で滑ったりしながら、逃げていってしまいました。坊やは村じゅうの家を、駆け回り
「火の種はいらんかえー」
と声を張り上げました。注文がないので、だんだんその声は、やけくそになってきます。
「坊や、いらないよ。火事になるから早くお日様のところへ帰っておくれ」
家の戸を閉ざしたまま、こう言って追い帰してしまうのでした。ある家の二階の窓が開きました。坊やと同じような年頃の女の子の頭が出てきて、
「鬼は外!」
硬い豆が降ってきました。かわいい女の子に鬼と間違われた坊やは、がっくりしたのでしょう。頭の炎がうなだれています。
最後に、大きな庄屋さんのおうちに訪れました。門が開いて、用心棒のひげづらのお侍が出てきました。手に桶を持っていました。
「ジュー」
お侍は、坊やの頭から水をぶっかけたのです。坊やは、ワーッと叫んでしまいました。
煙を引きずりながら走って逃げました。
丘の広場に戻った坊やは、ひっくひっく泣いていました。泣くとオレンジ色の炎が、小さくなっていきました。炎が消えると、坊やは死んでしまうでしょう。
「坊や、どうして泣いてるの?」
ぶどうの木のおじさんが、しゃべったのです。
「おれだけ村をあっために来たのに、お水をかけられちゃったよ」
おじさんは、腕のような太い枝を坊やの方に傾けて優しい声で言いました。
「さんざんだったね。じゃあ、お父さんとお母さんの待っているお家にお帰りよ」
坊やは首をちょっとかしげて言いました。
「それがね、お父さんと、お母さんのお家が別なんです。…では今夜、お母さんのお家に帰るとしましょう」
おじさんは、枝をかさこそさせて坊やに頼みました。
「それまで、この裸のおじさんを 暖めてくれないか」
坊やの炎がぱっと明るくなりました。坊やは、頭をふって、おじさんのまわりを踊りながら回りました。そうです、ほんとこの子は、みんなが喜んでくれるのが一番なんです。
おじさんは、地面が揺れるぐらい、根元をゆらして笑いました。すると、見る見るうちに、葉っぱが茂り紫色の大きな実がたくさんなりました。それから雪の消えた丘には、色とりどりの花が咲き蝶も来ました。夜になっても、坊やのおかげでそこだけが明るくて、春のような丘でした。
雪の山から、きつねのお母さんが、白い息をぽっぽさせておりてきました。背中に、お母さんとそっくりな顔をした、子供が乗っていました。お母さんは、祈るような目をして言いました。
「お乳が出ません、ブドウをわけてくださいな」
ブドウのおじさんは、
「だいじなものはみんなのものだ」
と、体をゆすって、実を落としてあげました。お母さんは、ブドウをかんでブドウのお乳を作りました。飲んだ子供は元気になりました。
「コン、コーン、ココーン」
もう、ブドウの木の周りを歌って跳ねてます。坊やの火の玉は、うれしくて、大きくなりました。
こんな風景を見ていたたぬきの親子三匹が、山から下りてきました。三匹の親子はみぞれで濡れていました。たぬきの家族は、坊やの明かりで美しくチラチラ照らされていました。お父さんがいいました。
「夜になっても、この子が寝ないのです。
お月様が見たいようって、ね」
お父さんに抱っこされている、たぬきの子供は口をとんがらせています。火の玉坊やは言いました。
「大事なものは、きっと、みんなのものなんですね。お月様もね」
そして、雲の空に向かって大声を出しました。
「ぼくのおかあさーん」
雲に穴が開いて、まんまるお月様があらわれました。 たぬきの親子は喜んで
「ポン、ポン、ポンポコリン」
おなかの太鼓をたたいて、狐さん達と一緒に踊りだしました。それを見ていた、山の動物達がたくさんやってきました。リス、うさぎ、熊さん一家までやってきました。
鼻の頭をすりむいた、熊の子が言いました。
「おいら、お砂糖のお菓子が食べたいよ」
火の玉坊やは、空の星におねがいしました。
きらきらお砂糖のお菓子が、流れ星のように降りました。リスには栗のお菓子が降りました。こうして動物達は、お星様からいろんなお菓子をもらって、嬉しくて、歌って踊りました。
お祭りの最中に、お月様から銀色のロープが降りてきました。坊やが
「おかあさん、今晩はみんなとここで過ごします」
と言うと、ロープは消えました。ブドウのおじさんは、ロープを消した、お母さんの気持ちを思いました。
「この子は、今夜のような賑やかなことが好きなんだなあ。だから、お母さんは、夜のお祭りを許したんだなあ」
丘の動物達のふしぎなお祭りを、窓や戸の隙間からみていた村人達も、がまんできずにやってきました。
「坊や、昼間は悪かったね。火の種くれませんか」
坊やは、頭の火の種をブドウの葉っぱで包んで、ひとりひとりにあげました。火の種を胸にしまうと、もらった人は心まで暖かな気持ちがしました。おまけにぶどうを食べると、酔っぱらってしまいました。動物達と一緒になって、輪になって踊り歌いました。いつもは、畑を荒らすとかで仲が悪いのにねえ。
坊やの頭の火は、種をあげるたびに、小さくなっていきました。坊やは、最後の力をふりしぼって、頭から派手な花火を打ち上げました。
『ドカーン、バリバリ、ドカーン』
空いっぱいにヒマワリが咲きました。みんな手をたたいて大歓声をあげました。
ところが、夜明け前でした。強欲な庄屋が、火の玉坊やのまねをして、空に向かって叫びました。「大事なものはみんなのもの。小判よ降って来い!」
すると、風が吹いて、小判のかわりに霰が降ってきました。
動物達は山の巣へ、村人はそれぞれの屋根のあるお家へと、てんでばらばらに帰っていきました。楽しいお祭りは、こうしてあっけなく終わったのです。
夜が明けました。丘の広場には雪が降っています。静かです。火の玉坊やと、ブドウのおじさんだけが残っています。おじさんは、言いました。
「坊やの頭、ロウソクの炎みたいに、小さくなったね」
坊やは、にっこりしました。
「おじさんだって、丸裸じゃないか」
「そのうち春が来たら葉をつけ、夏が来たら房をつけるさ」
寒くて身震いしているおじさんを、あっためる力は坊やに残っていませんでした。坊やも、震えていました。トラの皮のパンツ一枚なんですから。
おじさんは坊やを、根っこの穴に入れて抱いてあげました。疲れた坊やはすぐにいびきをかいて、眠ってしまいました。雪で体が白くなってきたおじさんは、独り言を言いました。 「この子は、いつになったらお父さんとお母さんと三人して暮せるだろうか」
おじさんの言葉はたちまち、木枯らしの風が巻き取っていきました。お昼を過ぎて、ブドウのおじさんは寝ている坊やを起こしました。
「さあ、坊やのお家に帰る時が来たよ」
お父さんのお日様は、厚い雲で見えませんが、雪の渦巻くなかに金色のロープが真っ直ぐに降りています。おじさんは、坊やの腰にロープを結んであげました。
坊やはいつまでも手を振って、おじさんにバイバイしてました。ずんずん高くなって、雪でとうとう見えなくなってしまいました。
おれだけ村には、もう二度と火の玉坊やは現れませんでした。今でも坊やは、金のロープと、銀のロープを、元気よく、降りたり昇ったりしています。あなたのこころの丘にもね。
昨日という日は
昨日一日
きのうを思い出すためにきて
今日という日は
今日一日
きょうを思い出すためにきて
明日という日は
明日一日
あしたを思い出すためにきて
君は君と私を思い出し
私は私と君を思い出し
ただそれだけのために
思い出しては忘れ
忘れては思い出す
ただそれだけのために
昨日は
きのうをまた忘れ
今日は
きょうをまた忘れ
明日は
あしたをまた忘れ
君は君と私をまた忘れ
私は私と君をまた忘れ
昼休み、昼食の後大阪天満宮に寄りました。
都心のど真ん中にありながら、人も風景ものんびりほんわか、懐かしい昭和の時代がここには生きています。
ちょっぴり傾きながら寄り添っている酒樽達を見ているだけで、彼等のひそひそ話が聞こえてくるようです。
思わず頬がゆるみました。
脊柱に右目と鼻と睾丸を縫う
頭蓋骨に左手と心臓と右足を縫う
散髪屋
針と糸を持つ透明な手つきの
奇妙な運動が
俺を縫い合わすのである
その舞踏を言葉とは言うな
それを容易く詩とは呼ぶな
どうか脚を止め
一瞬手を合わせてくれ
永遠どもっててくれ
どもったら去ってくれ
蛇ではない
傷ではない
おれはのたうつ縄である
父が死んでから
45年経った
100回は父の夢を見た
100回とも
父が死んでいるとは気がつかなかった
ついに父の年を15年越えた
15才年下の父に会っても
彼が死んでいるとは気がつかない
15才年上の息子を見つけても
父は自分が死んでいるとは気がつかないで
蛇腹のカメラの使い方など教えてくれる
母の夢を見たことは一度もない
見ることが出来ないのである
ただ若い頃
夢を見た記憶がないのに
目覚めると泣いていることがあった
正体の分からない
こわい夢もたくさん見た
夢は優しい
こわい夢の正体も
僕に会いたくて来ているような気がする
夢は
夜の腕である
45年経った
100回は父の夢を見た
100回とも
父が死んでいるとは気がつかなかった
ついに父の年を15年越えた
15才年下の父に会っても
彼が死んでいるとは気がつかない
15才年上の息子を見つけても
父は自分が死んでいるとは気がつかないで
蛇腹のカメラの使い方など教えてくれる
母の夢を見たことは一度もない
見ることが出来ないのである
ただ若い頃
夢を見た記憶がないのに
目覚めると泣いていることがあった
正体の分からない
こわい夢もたくさん見た
夢は優しい
こわい夢の正体も
僕に会いたくて来ているような気がする
夢は
夜の腕である
まさか自分だけは
死なないだろうと
今日の今日まで
思って生きてきた
死ぬと思っておれば
もっと良いこともしただろうし
もっと悪いこともしだだろうし
ね
死ぬって
良いことも悪いことも
もうしなくていいんだよね
死なないだろうと
今日の今日まで
思って生きてきた
死ぬと思っておれば
もっと良いこともしただろうし
もっと悪いこともしだだろうし
ね
死ぬって
良いことも悪いことも
もうしなくていいんだよね
この年になるまで
生きて来れたんだからね
いまさら死にたがっている訳ではないよ
泣きたいだけだよ
おぼえてないけど
生まれた日
のように
生きて来れたんだからね
いまさら死にたがっている訳ではないよ
泣きたいだけだよ
おぼえてないけど
生まれた日
のように
僕がいつも
首を回しているわけを話そう
持病の頭痛から解放されていくとき
この風景と
この風景にずっぽり取り込まれている
この自分というものが
誰かの回想のなかにいると
はっきり感じることがある
その場合
彼は夢を見ている とはいわないだろう
いわゆる 現実というものを
彼は見ているわけだ
そしてその回想の中で
僕は君と出会ったわけだ
ほら
君だって回しているじゃないか
首を回しているわけを話そう
持病の頭痛から解放されていくとき
この風景と
この風景にずっぽり取り込まれている
この自分というものが
誰かの回想のなかにいると
はっきり感じることがある
その場合
彼は夢を見ている とはいわないだろう
いわゆる 現実というものを
彼は見ているわけだ
そしてその回想の中で
僕は君と出会ったわけだ
ほら
君だって回しているじゃないか
圧倒されてしまうのは
彼の記憶力である
つまり彼は
記憶力のある岩石である
というよりも
岩石とは
そこにあり続ける
自分自身としての
記憶ではないか
彼の記憶力である
つまり彼は
記憶力のある岩石である
というよりも
岩石とは
そこにあり続ける
自分自身としての
記憶ではないか