尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

冬のお母さん

2010年01月30日 22時40分15秒 | 少年詩集
雪化粧の
あの山越えて
お母さんの住むという
家の方へ

息白くして
駆けだすと
ほほにふたつ
感じた
ながーい ながーい
風の乳房



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2009年01月11日 17時16分20秒 | 少年詩集
光をあびて
花が開いたね
冬の間の夢が
いま開いたのだよ

地中のしめった夢だった
冷たい夢だった
誰からも見えない夢だった

花には
目がないけれど
見えるんだよ
開いた花びらが
自分で
いま見えているんだよ

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2008年05月08日 23時49分28秒 | 少年詩集
「手」


とじれば
かたいつぼみ
ひらけば
あかるいはなだね
むねのまえで
あわせると
おいしいかじつ
ねがいの
かじつだね

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早春の花火

2008年02月11日 12時15分10秒 | 少年詩集
北風が
雪の荷物を背負って
帰っていきました
朝の早くから
ぽぽんぽ ぽんぽん

空をさえぎる
煙はないけれど
音だけが
澄んだお空を
まっ青な楽譜にして
ぽぽんぽ ぽんぽん
音符のように
揚がっております

人には見えない
聞こえないけど
花火大会
虫さんたちは
大喜び
ぽぽん ぽんぽん
花のつぼみが
開いております

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さえずり

2007年11月01日 00時52分30秒 | 少年詩集
小鳥のさえずりが
はじめて
人間の言葉に翻訳できた日
その日はお天気で
ひとびとは
頬をふくらまし
みなさえずっていた

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ムカシ・トンボ

2007年02月20日 22時48分10秒 | 少年詩集
ムカシ・トンボが
生まれた
花のつぼみの
はじける音が
するたび
ぽん、ぽん!
ぽ、ぽん、ぽん!
虹色の複眼を
不思議そうに傾げた
それでも
花の友達は
いつも蝶々だった


ムカシ・トンボが
死んだ
宝石のような複眼は
蟻が運んでいった
花のつぼみは
なおはじけた
ぽん、ぽん!
蝶々がとまった
友達が
すべてでないとわかって
淋しかった

お祭りの
花火のように
咲きつづけた
ぽ、ぽん、ぽん!
それが
彼への答えだった

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はさむもの

2007年01月02日 12時46分25秒 | 少年詩集
ゆっくり
やさしく閉じるとき
上目蓋と下目蓋の
はさむもの
ゆっくり
やさしく閉じるとき
上唇と下唇の
はさむもの
それは
とても小さなわたし

目蓋と唇を
ぱっと開くとき
シャボン玉のように
破裂するもの
とても小さなわたし
コメント (2)
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冬の星

2006年11月11日 22時12分27秒 | 少年詩集

たくさんの星だ
その輝きと
静けさに
星の数とおなじだけ
君と暮らした日々があった
と 
信じる
こうして
小さな息を
地表に流しながら

明日になれば
もう一つ増えるだろう
それは
名前のいらない星だ
消えない星だ


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月の舟

2006年06月05日 01時09分25秒 | 少年詩集

 「月の舟」

月の夜には
暗い森の泉にも
宇宙の信号灯のように
月が揺れていましたから
深い天空に迷った
一人のお星様が
流れ星になって降りてきました

月の舟に
銀の星が乗ると
月はうれしくって
笑って
自分を揺りました
お星様も
はじめは一緒に笑っていたのですが
ちょっと怖くなって
言いました

 ふざけないで、
 沈んじゃうよ

月は優しく答えました

 僕たちは
 絶対沈まないんだ

水面の月は
天を指さしました
月は黙って
星を抱いていました

コメント (2)
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じゃんけん

2006年05月21日 01時18分50秒 | 少年詩集
両手の指の間は
いくら数えても
八本だ
しかし
その八本を埋めるには
十本ちょうどいる
そんなことさえ
不思議と思わないで
じゃんけんしながら
君はここまで
やってきた


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パンセ

2006年04月29日 00時16分09秒 | 少年詩集
パンセと名付けられた子犬が
駈けてきて一生懸命
しっぽを振っている

かわいいでしょ
だから僕を食べないで
何かちょうだい

ほんとうに君はおいしそうだ
でも、思い出したよ
むかし、むかし
同じようなこと言いながら
そんなふうに笑って
人を見あげていたことがあったよ

しっぽは振れなかったけどね
かわいいパンセ




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夜の犬

2006年03月28日 20時57分22秒 | 少年詩集
流れ星が来ると
しっぽをふる

夜は
なんと胴の長い
犬だこと

人が眠ると
かわりに
まぶたをあけて
番をする
瞳の深さは
宇宙の
星で満たされている

人の幸せな夢に
天の川の
しっぽをふる

コメント (2)
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たんぽぽ

2006年02月13日 20時24分18秒 | 少年詩集
「たんぽぽ」


花のあとにも
綿帽子が咲きます
そよ風がトランプを飛ばすように
丸いドームを
崩してゆきました

綿毛はときに国境を越え
木枯らしのやまない
こんな夜にも
白い夢のように
広がっていきます

春になれば
一もとの可憐な草花が
大きな花火であったと
私たちの目に
知らされるのです
コメント (4)
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星は花は

2006年02月11日 13時53分15秒 | 少年詩集
星はまばたきながら知っている
花は咲きながら知っている
木は立って立って知っている
象は糞をしながら知っている
蛇はのたうちまわって知っている
貝は海の底で知っている
踏まれる石も砂も知っている
うつろう雲さえ知っている
人だけが知らない

嘘をつくから
誰もおしえない

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パンジイ

2006年02月11日 13時35分47秒 | 少年詩集
「パンジイ」

風がそよぐとね
子犬が笑うような花です
一匹じゃないんだよ


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