あれは,あれで良いのかなPART2

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よく分かる(?)シリーズ 刑事裁判の仕組み(その3)

2007年02月03日 01時22分28秒 | よく分かる(?)シリーズ
さあ,いよいよ裁判の始まりです。
ここでは,ノーマルケースについて説明します。実際は,いろんな枝葉がありますが,それを言い出すと本になっちゃうので,そこは省略します。

第3 裁判の流れ
 1 人定質問

   裁判官が被告人の本籍,住所,氏名,年齢,職業を聞きます。
 2 起訴状朗読
   検察官が起訴状を読み上げます。
   起訴状は多くがA4用紙1枚程度のシンプルなものです。記載内容も単純です。これは,前述のとおり「予断を与えないため」に,最低限しか記載されていません。
   例えば,殺人事件の場合はこんな感じです。
   「被告人は,平成19年1月1日午前2時50分頃,東京都千代田区丸の内1丁目2番3号の路上で,江頭太郎(当50年)に対し,刃渡り15センチの文化包丁を用いて,殺意を持って同人の左胸に刺し,同日午前3時42分に同人を死亡させたものである。
 3 黙秘権告知
   裁判官が,被告人に対し,黙秘権を告知します。これは,憲法上の要請なので,告知がない裁判は,違法とされます。
 4 罪状認否
   裁判官が,被告人に対し,起訴状事実の有無について尋ねます。
   新聞でよくでる「最初の被告人の発言」は,この罪状認否の部分です。
   多くの場合,「そのとおり」と児玉清さんのように答える被告人がほとんどですが,否認事件,すなわち争う事件の場合は,ここで様々な主張をします。
   いわば,最初のドラマがここにあります。
   また,被告人が認否した後に,弁護人がさらに意見を補足します。
 5 冒頭陳述
   検察官が,証拠によって立証する事実を述べます。ここでは,起訴状の事実をかなり詳細に説明します。場合によっては,冒頭陳述だけで数時間かかるなんていう超大作の場合すらあります。
   ここが,新聞やテレビでよく紹介される部分です。おそらく,一般の人が裁判を傍聴していると,この冒頭陳述を聞いて初めて「事件の全体像」が見えてくることになります。いうなれば,「週刊誌に書かれた情報」がここに初めて現れてくるのです。
 6 証拠の認否
   検察官が証拠を提示し,それに対し,弁護人が同意するか否か返答します。
   ここでいう証拠の多くは,警察や検察庁が作った「調書」です。
   細かい理論は省略しますが,日本の裁判では,本来は「調書」に証拠能力を認めていません。つまり,調書に出てきた人は,必ず証人尋問をしなければならないのです。ところが,それでは裁判がなかなか進まなくなるため,特に争いのない事案については,すべての証拠に同意して,調書を証拠として扱います。そして,一気に裁判は終局に向かいます。
   一方,否認事件では,ここで多くの証拠を不同意として,原則どおり「証人尋問」が始まります。
 7 証拠調べ
   検察官が証拠の内容について説明します。
   証拠には甲号証と乙号証の2種類があります。甲号証が客観的な証拠類(被害届や目撃者の証言,実況見分調書など),乙号証が被告人自身に関する証拠(被告人供述調書,前科リストなど)になります。
   そして,取調べ順序は,必ず甲号証から始めます。
   なぜでしょうか?これも地味ながら憲法上の要請があるからです。
   憲法では,自白のみでは有罪にできないという規定があるため,まず被告人の自白の前に客観的な証拠で固めなければならないということになるのです。
   すなわち,客観的な証拠で周りを固めた上で,さらに「ほーら,客観的な証拠に即した自白を被告人もしているでしょう」という形で立証することで,初めて有罪認定ができるのです。
   逆に言うと,ここで被告人が否認していたとしても,客観的な証拠があれば当然有罪にできますし,被告人が自白していたとしても,客観的な証拠が全くない場合は,被告人は無罪となります。
   「死体なき殺人」が,立証が難しいというのは,こういう点にもあるのです。
   もちろん,弁護人側も証拠を提出することができますが,弁護人側の証拠には甲乙は付きません。
 8 証人尋問
   争いのない事件の場合は,弁護人が情状証人として,被告人の両親や家族などを呼ぶことがあります。そこで,「しっかり監督します。もう二度と馬鹿なまねはさせません」などと証言し,できるだけ涙を誘おうと頑張ります。
   一方,争いのある事件の場合は,検察官が立証証人を呼び,弁護人が反対尋問を行うという,まさしく「法廷ドラマ」になります。もちろん,逆に弁護人がアリバイ証人を呼び,検察官が反対尋問で崩していく,という場合も多くあります。
   裁判の山場ですし,検察官と弁護人の腕の見せ所になります。
   おそらく,裁判員制度でも,これが有罪無罪を判断する要になると思われます。
   ちなみに,証人は,証言に際して宣誓を行うため,嘘を付いたら偽証罪に問われる場合があります。
 9 被告人質問
   証拠調べが終わった段階で,被告人に対し質問を行います。
   被告人質問では,証人のような宣誓は行いません。なぜなら,黙秘権があること,また被告人はとかく嘘を付くということを踏まえてのことです。
10 論告求刑
   検察官が,最後の締めを行います。
   ここで,いわゆる「被告人を懲役*年に処するのを相当と思慮します。」などという求刑を行います。
   ちなみに,ここで誤解する方が多いのですが,求刑はあくまでも検察官が一方的に言っているものに過ぎないため,裁判所は求刑には全く拘束されません。したがって,求刑が懲役3年であっても,裁判所の判決は,法令の範囲内の刑であれば,1年でも10年でも,極端死刑でも構わないのです。
   従って,求刑とは「単なる目安」に過ぎません。
11 最終弁論
   弁護人と被告人が,最後に言いたいことをまとめて主張します。
   多くの事件では,「ごめんなさい。反省してます。もうしません。」程度のことを言い,弁護人も「今回だけは執行猶予で許してちょんまげ」ぐらいのことを言うにとどまります。
   ただ,否認事件の場合は,ここで最後のプレゼンを行います。検察官の立証がずさんであること,被告人のアリバイは完璧であること,証人の証言は矛盾が多いなど,自分が無罪であることについて主張していくのです。
   これで裁判は終了します。
12 判決
   被告人に対し,口頭で判決を告知します。
   ただし,大きな事件の場合は,事前に判決書を作成し,朗読する場合がありますが,通常の事件では,判決書は後で作成する場合が多いです。
   そして,14日以内に控訴しなければ裁判は確定する,っていうことになります。

ちょっと長くなりましたが,これが裁判の流れです。実際は,ここにいろんな手続が関与してきます。
とりあえず,今回はこの程度で。

よく分かる(?)シリーズ 刑事裁判の仕組み(その1)
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よく分かる(?)シリーズ 刑事裁判の仕組み(その4)

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2009-08-27 19:11:25
良かったよ!!
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unknownさま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2009-08-30 11:06:03
おはようございます。
ご覧頂きありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
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