あれは,あれで良いのかなPART2

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殺人罪の時効廃止へ,されど問題もありそうだなあ

2010年04月27日 23時12分28秒 | 法律問題
殺人罪など人を死に至らしめた事件について,時効を廃止する刑事訴訟法等の改正案が国会を通過し,即日施行されました。また,これにより,今日現在時効を迎えていない事件すべてについて適用されることになり,世田谷一家殺人事件や八王子スーパー事件などの未解決事件について,時効が無くなりました。

時効廃止を即日施行=殺人など、改正法成立(時事通信) - goo ニュース

被害者保護は大切,一方で冤罪防止も重要

感情論的には,被害者の気持ちに時効などないわけですから,時効を廃止することは非常に良いことだと言えます。もちろん,大切なことは,時効の廃止ではなく,「早期解決」であることは言うまでもありません。しかし,なかなかきれい事のように捜査は進まない以上,時効を廃止することで「絶対検挙するんだ」という強い意思表明と,「世の中逃げ得は許されない」という警鐘を鳴らすことができ,極めて有益的であると言えるでしょう。

しかし,ここで少し気をつける点があります。それは,「被害者以外の視点」です。具体的には,「被告人の立場」と「捜査機関の立場」です。

まず,被告人の立場として考えなければならない点は,「冤罪防止策」です。足利事件でも強く言われたように,被告人=犯人ではありません。被告人はあくまでも「無罪推定」が働きます。したがって,時効が廃止された場合,それこそ数十年前のアリバイや,中途半端に残った証拠などで裁判が進められます。証拠の評価如何では,古い証拠で罪体立証されるため,それに対する反論がしっかりできるような手法を考えておかなければならないでしょう。
もちろん,刑事訴訟法の目的は「実体的真実発見の要請」にありますから,古い証拠=使えないということも,古い証拠=無条件に使用できるということも言えませんが,もう一つの目的である「人権保障」という観点から,古い証拠への対応は真剣に考えなければなりません。
しつこいですが,「被告人=犯人」ではありません。「これで被告人はいつでも有罪にできる」と諸手をあげて喜んだ方は,今一度足利事件を思い出してください。
被害者だって,「適当な犯人を処罰」することを望んでいるわけではありません。「真犯人の処罰」を望んでいるのです。

次に考えるべきは,「警察の視点」です。
当然の前提として,時効廃止になったことで,捜査をゆっくりやればいいなんて考えている警察官は1人もいないでしょう。「早期解決」,この理念にブレはありません。
しかし,実務的には,時効が廃止になると,それまで捜査本部を縮小し,解散するなどということで事実上人材を効率的に活用してきた訳ですが,時効廃止となると,少なくとも捜査員を確保しなければなりません。しかも,ドラマ「時効警察」のようなのほほーんとした捜査態勢にはできないでしょう。
そうすると,警察としては,「新たな人材の確保」が必要であるところ,予算が限られている現状を踏まえると,「他の捜査本部や部署の人員削減」で対応せざるを得ません。そうなると,他の事件の捜査への影響が懸念されます。
また,証拠の保存も重要となります。今の技術であれば,かなり精度の高い保存ができるでしょうが,極端50年以上証拠物を保存保管しなければなりません。そうすると,「場所の確保」と「精度が落ちないようにする保存」を考えなければなりません。ここにも多額に費用がかかるでしょう。でも,証拠物の扱いをいい加減にすると,「本当に有罪だった人を有罪にできない」ということにもなりかねません。

時効廃止も,こうした細かい問題があります。この点については,きちんと運用するなどして対処するしかありません。
しかし,時効廃止により,「真実発見」を追求しやすくなることは事実でしょう。そして,今逃げている容疑者については,もはや逃げられなくなりました。なので,真犯人である場合はもちろんのこと,事実無根で無罪であると主張する場合であっても,早期に出頭し,裁判で白黒つけるしかありません。逃げて良いことは全くなくなりました。

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8 コメント

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わたしは (ともっち)
2010-04-28 20:57:37
まさにおかにゃんさんが指摘された
「冤罪防止」の観点から今回の時効廃止法案には反対でした。

確かに、被害者の観点からは
時効の撤廃は喜ばしいことでしょう。
思考を逃げどくととらえたり
時効完成後に自首したりということは
被害者や捜査機関をなめているととらえられてもやむを得ないでしょう。
(まあ、これはこれで時効が保障する法益だったりするのでしょうが)

しかし、それが非常に強くなると松本サリン事件のような悲劇を招きかねません。
あの事件は、マスコミの報道に結果的に捜査機関も踊らされ、あのような気の毒なことになってしまいました。
今も、講演活動をされていらっしゃるだろうと
思われる河野氏はこの法案の成立をどう捉えておられるのでしょうか。

また、捜査機関は権力です。
権力の横暴を許さないためにも、接見交通権の
確保や取り調べの透明化なども同時に進めないと片手落ちにならないかという心配があります。

また、今回の即日公布というのも
憲法39条との兼ね合いで
大きく問題をはらんでいるのではないか
と思っているのですがどうでしょうか。

大事なことは真実発見と同時に
間違った犯人を捕まえないということです。
返信する
Unknown (梅。)
2010-04-28 21:26:28
すべての事件で指紋やDNAが残っているわけでもなく、数十年前の記憶というのは、融合したり夢と現実の区別がつかなくなったりで本当に当てにならない物です。しかし、証人は「40年前に見たのは間違いなくこの人です」などと証言するんでしょうね。
返信する
ともっちさま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2010-04-29 00:08:28
こんばんは。
今回の法案においては,「無罪推定」の観点は一歩後退して議論されていたと思われます。被害者保護を前面に押し出すこと自体は非常によいことなのですが,一方で刑事裁判の大原則である「無罪推定」もきちんと認識する必要があるでしょう。

また,冤罪防止と似ているのですが,立証活動において古すぎる証拠の場合,評価されず,結果被告人が無罪になるということもあり得ます。この場合,せっかく時効が廃止されても何の意味もありません。

被害者保護について否定しませんが,いろんな視点から考えてみるとよいのかな,って思います。
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梅。さま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2010-04-29 00:09:42
こんばんは。
古い証拠は本当にあてになりません。それにより,真犯人を逃す可能性すらあり得ます。このあたり,どうするかが一つキモですね。
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Unknown (九龍)
2010-04-29 02:42:11
時効警察は無いにしても
X-Fileみたいに、迷宮入り事件の再捜査専門部隊でもできるのでしょうかねやっぱり。
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九龍さま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2010-04-29 10:54:49
おはようございます。
確かに,そうした専門部隊を設置するかもしれません。ただ,そうなると,複数の迷宮入り事件を処理する部署になることから,そのチームの負担はかなり大変なものになるでしょうね。
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Unknown (Unknown)
2011-11-29 02:33:31

あなたに感謝します

ほんとにありがとう!
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unknownさま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2011-11-30 01:46:53
こんばんは。
特に私が何かやったわけではないのですが,こちらこそ,お役に立ててうれしいです。
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