あれは,あれで良いのかなPART2

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選挙経営学(第3章:なぜ教育改革はいつも場当たり的か)

2011年07月30日 22時47分32秒 | 裏選挙マニュアル・選挙経営学
 前回,投票率について年代別の切り口で説明しましたが,今回は,投票率というものについて,別の切り口から説明します。

 教育制度は,ここ十数年,猫の目のように変わっています。つめこみはけしからんということで「ゆとり教育」を始めましたが,学力が低下したのはゆとり教育が悪いということで,今は再び脱ゆとり教育になっています。反面,学力低下,学級崩壊,モンスターペアレンツ対策,教師のスキル問題などなど,教育問題は解決すべき問題が山のようにあります。
 教育とは人材育成であり,ここがしっかりしなければ日本の未来は真っ暗です。なので,教育をきっちりやることこそ,国家としての基本であるといえます。
 ところが,教育問題を最重要課題として掲げる候補者はあまりいません。もちろん,広く浅くの選挙公約の中に載せている候補者はたくさんいますが,「まず,教育改革だ!」という候補者はあまり見かけないのではないでしょうか。また,仮にいても,その方が当選しているということも案外少ないのではないでしょうか。
 一方で,「道路作る」「建物作る」という候補者は,比較的多く当選しています。しかし,いざ道路や建物ができると,「なんで無駄なものを作ったんだ!」などという批判が発生することが多々ありませんか?
 実は,ここにも選挙経営学が大きく働いているのです。端的にいうと,教育<土木なのです。
 前回,若年層の投票率が低いから,子供関連施策については,なかなか話が進まない旨説明しました。教育問題がなかなか解決しない背景には,実は「選挙経営学では,教育では票が取れない。」という実情があるのです。

 もう少し具体的に言いましょう。例えば,「道路を作る」という公約の場合,その道路の利用者は,沿線住民等広範囲に及び,道路は歩行者から自動車まで使えることから,利用する年代も幅広くなります。すなわち,道路を作ることで恩恵を受ける人は多いのです。恩恵が多い=選挙で票がとりやすい,っていうことになります。
 建物建設も同様です。さらに,農工商業振興策だって,産業従事者はかなり幅広い年代なので,恩恵を受ける人はかなりいます。
 つまり,これらの施策は,有権者全体の7,8割等,かなり幅広い人たちからの支援や投票が期待できるのです。
 ところが,教育問題はどうでしょうか。教育を受ける子供たちは有権者ではありませんから,選挙経営学でいうと,「子供に媚び売っても,それは票をどぶに捨てるようなもの。」という発想になります有権者ベースでみても,教育関係で恩恵を受けるのは,直接的には,子供を学校に通わせる世代,すなわち,20代後半から40代までなのです。しかも,これを公立小中学校限定とか,高校限定などとしたら,その中からさらに恩恵を受ける世代は減少します。
 さらに,教育問題とは,必ずしも親御さんにとって都合のいい話ばかりではありません。人材の育成という長期プランでみると大変有益な教育方針や施策であったとしても,場合によっては,親御さんに対する費用的精神的負担(将来的には大きな還元につながるものではあるのですが・・。)になることも多いため,その世代すら賛同を得られるとは限らないのです。
 つまり,教育問題というものは,一般に,有権者のごく一部にしか賛同してもらえない話であるばかりか,逆に多くの敵(もちろん,実際は誤解や偏見に過ぎないものなのですが)すら作りかねない内容なのです。となると,選挙経営学的には,「教育問題を一生懸命やっても,全体の有権者に対して,票を入れてくれる有権者の比率は少ない。」っていう発想になるのです。

のみならず,特にこの世代は,前回のお話のとおり,投票率が低いので,ますます票につながらいっていうことになってしまうのです。まさに,「どぶに票を捨てている」の典型的な発想ということになります。さらに,逆に有権者に敵まで作ってしまうとなれば,選挙経営学的にはそりゃあ,かえって有害っていう発想にすらなりかねません。

 選挙経営学を駆使して当選したいのであれば,公約に教育を掲げるにしても,メイン公約はもっと票をがっぽり稼げる土木建設関係や農工商業振興というテーマにしておき,かつその実績を中心にアピールするに限る,ということになります。
 むしろ,選挙経営学的には,教育問題をネガティブ戦術として活用することで,教育とは無縁の世代の票をがっぽり稼ごうという方法も十分取れますので(べたな事例は,「とにかくゆとり教育はだめだ」みたいな感じです。),ポリシーのない政争の具とされやすくなります。
 さらに,政治家が教育問題についてはしっかりしたプランをもって官僚と議論しない以上,教育問題に対するチェックも働かなくなってしまいます。
 結果,教育問題というのは,人材育成という壮大なプランは無視され,逆に場当たり的な方針になりやすいのです。

 教育をないがしろにする国は,いずれ必ず滅びます。官僚はもちろんのこと,政治家が選挙経営学によらずして,きちんと壮大なプランを有権者に示すとともに,それを受けて教育を真剣に考える世代がもっと選挙に行き,これからの教育の在り方についてもっと国民的な議論とならない限り,教育問題をメインとして当選する議員はなかなか増加しないでしょう。だとすると,教育問題は,今後もまだまだ場当たり的な状況が続かざるを得ません。そうなったら,日本の未来はwow*4(古い!)です。
 もちろん,そもそも,選挙経営学を駆使している議員や首長が撲滅されれば,こうした心配も減少するでしょうが・・。

今日のまとめ
 選挙経営学重視の政治家は,できるだけ幅広い世代からうけるような施策にしか興味関心がない。したがって,教育問題のような本来は日本の将来に直結するようなテーマであっても,直接負担を受ける世代はもちろんのこと,恩恵を受けない人たちに対してもきちんと説明して理解を求め,一票を入れてもらうという面倒な運動はしないで,がっぽり票が稼ぎやすい土木や産業支援などをメインにしてしまうため,重要問題にもかかわらず,なかなか思うような解決策が見いだせないということになってしまう。選挙経営学によらずして,たとえ手間がかかってでも,きちんとプレゼンし,国民的議論にしようと政治家等がたくさん誕生しなければ,日本の教育はますます崩壊し,いずれ日本という国自体が崩壊するだろう。これを阻止するには,まずは全世代が,これからの日本の在り方をきちんと考えるべきであり,その第一歩としては,特に教育で直接に恩恵を受ける若年世代を中心に,積極的に選挙に行くしかない。


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