あれは,あれで良いのかなPART2

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市町村合併について(手続上の問題点)

2005年04月22日 01時12分04秒 | 市町村合併
前回に引き続き,今回は現行制度の問題点を住民側の立場から説明したいと思います。
その前に,まず大前提として,地方自治制度は「住民自治」と「団体自治」から成り立つと憲法では説明しています。簡単に言えば,「住民自治」とは地域のあり方の最終決定権は住民にあるということ(民主主義です),「団体自治」とは地域のことについて他から口出されず運営できるということ(独立性です)になります。
それを踏まえて,次の点を指摘します。

住民が合併に関する意見を主張する機会がないこと。

市町村合併は,自分の生活する地域が大きく代わるため「団体自治」の観点から,また地域のあり方を最終的に決める必要があるため「住民自治」の観点から,住民にはそれに対して何らかの意思表示をする機会が必要となります。ところが,現行法では,議会の議決により決定され,住民投票等の手続は法定化されていません。
もちろん,合併に際し住民投票を行っている市町村も多いですが,いずれも各自治体で住民投票条例を制定し,かつその結果には法的拘束力が認められません。そもそも,住民投票条例案自体否決されている市町村さえあります。
このように,住民には合併に関して直接意見を述べる機会が認められていません。これが最大の問題点です。
以下,この内容をさらに具体的に説明します。

1 合併に関する直接請求権がないこと。
  現在,住民の直接請求制度として,首長の解職請求,議会解散請求,条例制定請求,監査請求があります。ところが,合併に関しては,僅かに合併特例法による「法定協議会設立」について直接請求が認められているにすぎません。
  したがって,合併を希望したい人はこの制度を活用することができますが,合併に積極的に反対である,または別のエリアとの合併を考えているという場合,その住民の意思を直接請求する手段はありません。
2 住民投票制度が法定化されていないこと。
  住民投票は,住民の意思表示を投票により示す,いわば直接民主主義の典型例であり,住民自治の要請を満たすものです。
  しかし,住民投票が法定化されていないことにより,住民投票なくして合併するという事例も多く見られます。
  また,住民投票には法的拘束力がないため,その結果に反した合併が行われたとしても,首長の政治責任しか問われません。しかも,その首長が合併後の選挙で落選するか立候補しなかった場合,もはや攻める矛先を失います。
  住民自治の観点から,合併に際しては住民投票は必須といえるでしょう。
3 議会の議決に対する異議をいう手段がないこと。
  地方議会は,間接民主主義の典型例であることから,議会の議決に対して異議を述べる制度を認めることは,議会制民主主義の要請に反するばかりか,民主主義の崩壊にもつながりかねないため,原則的には否定されてしかるべきです。
  しかし,合併の場合は,上記事情から,議会が議決したものであっても,住民としては生活が大きく変わりうる事柄だけに,何らかの意思表示をする機会を設ける必要があると思われます。
  もちろん,公聴会等議会の議決前には一応の手続保障が住民に与えられていますが,議決されてしまった以上お手上げというのは合併に関してはかなり乱暴ではないかと思われます。
4 裁判所にて争う手段がないこと
  通常,行政処分に異議がある場合は,最終的には行政訴訟等により裁判所に救済を求めることができます。しかし,市町村合併に関しては行政処分とはいえないこと等から,行政訴訟を提起することができません。また,議会の議決無効確認訴訟等も,そもそも訴えの利益無しとして門前払いされる場合がほとんどです(ちゃんとした理由がありますが,割愛します。)。つまり,裁判所への救済手段も事実上閉ざされています。

これらの問題に対応するためには,それなりの法改正しかありません。しかし,これは合併を進める国側にとって極めて不利な内容です(これらを制度に取り込むと合併が推進されないため。)。
そこで,次回はこれらに対応する方策について検討したいと思います。

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1 市町村合併が本格的に始まりました
2 市町村合併について(良いこと編)
3 市町村合併について(悪いこと編)
4 市町村合併について(お金の話)
5 市町村合併について(地方交付税に気を付けろ!)
6 市町村合併について(住民からみた合併)