あれは,あれで良いのかなPART2

世の中の様々なニュースをばっさり斬ってみます。
ブログ界の「おか上彰」を目指し、サボりながらも頑張ります!

住民基本台帳と個人情報保護について

2005年04月02日 12時01分01秒 | 地方自治
4月1日から個人情報保護法が施行されました。
一方で,住民基本台帳の閲覧制度は継続されていますが,政府はようやく重たい腰を上げて閲覧制度の見直しに着手することになったようです。

遅い!

そもそも,住民基本台帳を公開している趣旨は,住民がその町にいることを証明するためであるといわれています。いわゆる行政情報の公開の発想に近いでしょうか。
しかし,この制度は個人情報に関する考え方の薄い時代に作られたもので,現在のように個人情報保護を強く意識する場合,無条件に公開することは,それ自体非常に問題があります。
また,住民の所在証明のためといっても,現在,これを使う場面は,訴訟や強制執行などの場合など極めて限定的な場合に限られています。しかも,それは特定個人の情報の閲覧で足りるため,少なくとも住民全員の情報を閲覧させる必要性はなおさらありません。
おそらく,住民基本台帳の閲覧を認めているのは,このような特定個人の情報が必要な場合に,紙の台帳を1枚1枚めくりながらさがす必要がある,という非電算化時代の遺物になっているのではないでしょうか。現在は,電算化されているため,特定個人の情報を検索は容易であり,少なくとも全住民の情報をさらす必要性は全くないといえます。
さらに,これを非公開にしてしまうと,学術目的や他の行政機関において使用できなくなり,公益性を害するとも主張しているが,ならば例えば原則閲覧禁止とした上で,例外規定として公共性の高い場合にのみ閲覧を許可する等とすれば済む話で,およそ主張自体失当といえます。

いずれにしても,住民基本台帳を原則公開する必要性が乏しくなった今,この制度は大至急見直すべきです。もちろん,原則非公開とし,前述のようにごく限られた条件の場合において,その必要性と相当性が認められて初めて必要な部分のみ閲覧を許可する,という制度にするべきでしょう。

と,ここまでは多くの方が主張しているのですが,問題なのはここから。
実は,住基ネットでは,他の行政機関は必要があれば(もちろん限定されていますが)住民情報を閲覧できることになっています。そして,この部分はいわば非武装地帯であるため,仮に閲覧制度を廃止したとしても,情報がここから漏れる可能性が十分考えられます。
また,住基ネット自体,基本的発想は,「役所が自由に住民情報を利用できる」という点にあります。確かに,業務の効率化,住民サービスにつながる点も否定できませんが,個人情報保護という観点との調和が取れていません。なぜならば,住基情報を扱う職員全員がすべて善人である,という発想自体に誤りがあるからです(もし,そのような発想が成り立つならば,そもそも個人情報の漏洩というのは絶対に起こらない,ということになり,トートロジーになってしまう。)。個人情報が漏れた事例のほとんどが内部犯行であることを見落としてはなりません。
公務員法に秘密保持義務がある,ということを理由に秘密が保持されている,と考えているみたいですが,こんな倫理規定(もちろん,懲戒処分になりますが)だけで情報が守れるほど世の中そんなに甘くないです。

したがって,住民基本情報閲覧制度を見直す際は,併せて住基ネットの使用に関する点(将来の拡大使用も含めて)も同時に見直す必要があると考えます。

とにかく,個人情報(住民情報)は財産的価値がない,という発想で考えられている節も多いですが,過去の裁判例では,住民情報1件辺り慰謝料1万円という事例もあります。
したがって,住民情報を扱う役所の職員は,単なる電子情報を扱っているのではなく,銀行員が窓口でお金を預かっているのと同じ発想で仕事をしてほしいと思います。

よろしければ1クリックお願いしますm(__)m人気blogランキングへ