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トドの小部屋

写真付き日記帳です。旅行記、本や美術展の紹介、俳句など好きなことをつれづれに。お気軽にどうぞ。

バイバイ、ブラックバード

2017-12-12 15:31:18 | 
伊坂幸太郎さんの「バイバイ、ブラックバード」を読み終わりました。バイバイの感想は「う~ん」という感じ。ちょっと訳が分からないストーリーです。主人公の星野一彦は女性5人と付き合っている。つまり二股どころか、五股という状況。星野はある組織から多額の借金を背負い、返金のめどがたたないことから、その組織から派遣されたバスに乗せられ、怖~いところに連れて行かれる運命で、そうなる前に交際中の5人の女性と別れるため、一人ずつと再会して、「この女と結婚するから別れてくれ」と頼むというお別れ行脚の話です。星野は惹かれた女性とすぐに交際してしまうため、5人と同時進行になったというダメ男なんです。繭美は組織から見張り役としてつかわされた並外れた長身で200キロの巨体のすごい腕力を持つ異形の女で、毎回、別れの場面に星野について現れる。すごく凶暴で情け容赦ない性格に思えるけど、気まぐれ的に優しい行為をする一面もある。最後の女性と無事に分かれた星野は、本当に緑のバスに乗ってどこか怖いところに連れ去られるのだが、そのとき繭美は・・・。この小説はWOWOWで連続ドラマ化され、2018年2月から放送されるそうです。主演の星野を高良健吾さん、繭美を城田優さんが演じます。城田さんの女装が見ものですね。

死神の精度

2017-11-22 23:15:02 | 
伊坂幸太郎さんの本を2冊続けて読みました。「アヒルと鴨のコインロッカー」と「死神の精度」。アヒルの方は長編、死神は短編集です。どちらも面白く一気読みできますが、個人的好みから言うと「死神の精度」の方が好きでした。後者は死神である私がこの人間は死なせてもいいかを一週間かけて調査し、報告する仕事をする間の人間との関わりを描いた物語なんですが、死んでも良い、即ち「可」という判断を下すと、その対象者は8日目に死ぬのです。死神の様子と彼と関わる人間たちの様子がちょっとコミカルでありながら、いい味を出してると思いました。人間ってこんな感じよねとか、死ぬ人ってこんな風に選別されてるのかしらとか、もちろんフィクションですし、荒唐無稽といえばそうなんですけど、おもしろかったです。先日、「重力ピエロ」を読んだので、伊坂幸太郎さんの本はこれで4冊読みましたが、どれも外れはありませんでしたが、短編集「死神の精度」はかなり好きな部類です。6つの短編には繋がりがあるのですが、それは読んでのお楽しみ。第57回日本推理作家協会協会賞短編部門受賞作です。

蜜蜂と遠雷

2017-10-17 09:54:03 | 
恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を読みました。芳ヶ江国際ピアノコンクールに出場した数多くの若きコンテスタント達の人間模様が描かれる。なかでも、かつて天才少女として名高くCDデビューもしていた永伝亜夜は、13歳のとき、彼女を音楽に導いた母親が亡くなり、その直後のコンサートを突然キャンセルした過去があり、表舞台から消えていた。20歳の現在、音大の学長であり、恩師でもある浜崎教授とその娘、奏の後押しにより、久しぶりにこの国際コンク-ルに出場することになっていた。音楽で生きて行けるのか自身に問いかけても答えがでないまま、コンサートに臨んだ亜夜は、子供の頃に出会ったマサルとコンサートで再会し、また名高い音楽家、ホフマンが送り込んできた16歳の天才ピアニスト、風間塵という少年のピアノに触発され、刺激を受け、徐々に自分の音楽に再び目覚める過程が丁寧に描かれている。亡き恩師、ホフマンとの約束、「音楽を外に連れ出す」ということを、風間塵は、亜夜となら実現できると思うのだった。クラシック音楽の本質、音楽とはどういうものかについても語られている珍しい作品だと思いました。1次、2次、3次の予選を勝ち残り、本戦に出場できたのは、はたして誰か。読んでのお楽しみです。本作は2017年1月の第156回直木賞受賞作です。2日で読み切りました。予約者が多い本ですので、今日、図書館に返します。

ゴールデンスランバー

2017-09-29 12:57:51 | 
伊坂幸太郎さんの「ゴールデンスランバー」を読みました。元宅配便ドライバーの青柳雅春という男性が金田貞義首相暗殺の容疑者に仕立て上げられ、執拗な警察の追跡の手から逃げ続ける話です。その2年前に宅配先で、アイドルの少女を救った青柳雅春は、一時、多くの取材を受け、テレビでも報道されて時の人になったことがあった。その後、電車内で痴漢の濡れ衣を着せられ、会社を辞めざるを得なくなった青柳は、失業保険で食いつないでいた。そんなときに、今度は当選パレード中の金田首相をラジコンヘリによる爆弾で殺害するというショッキングな犯罪の容疑者として、警察に追われる身になったのだった。学生時代の仲間だった森田に誘われて車の中にいた青柳は、彼から痴漢の件も今回の首相暗殺の容疑も、故意に青柳を陥れる罠だと知らされた。森田から逃げるように言われて、青柳は車から飛び出した。車はその直後、仕掛けられていた時限爆弾により爆破され、森田は死亡。それから、青柳の逃亡が始まった。青柳を逃がそうと協力した学生時代の友人、元彼女、元同僚、何の繋がりもなかったけれど、国家権力や警察に反感を抱いていた裏稼業や、チンピラ風の男たちなど、いろいろな人が青柳の逃亡劇にからみ、スリリングな展開が繰り広げられる。彼を陥れようとしていたのは、大きな組織。その黒幕は誰か。事件から20年たっても真相は闇の中だが、もはや青柳雅春が真犯人だったと信じている人はいないようだ。容疑者として捕まってしまうと、無実を証明することの難しさは、恐らく大変なもので、ましてや青柳のように故意に容疑者にされた場合は絶望的。作品中にケネディ大統領暗殺の容疑者として捕まり、殺されたオズワルドについて触れたくだりがありますが、あの事件も未だ真犯人は特定できていないことを思うと、こういった冤罪も起こりえるかもしれないと思いました。本作は2008年の本屋大賞、第21回山本周五郎賞を受賞。非常に面白く、一気読みしました。お薦めです。

天地明察

2017-09-08 16:02:55 | 
冲方丁さんの「天地明察」を読みました。主人公は江戸時代前期の天文暦学者、囲碁棋士、神道家という渋川春海(安井算哲)という実在の人物です。彼は碁をもって徳川家に仕える”四家”の一員、お城の碁打ち衆であった。例年11月、本因坊、林、井上、安井の名を持つ者たちのみに許された御城碁を、彼らは将軍様の前で打つ。それは各家に伝わる棋譜の上覧の場であった。彼は12歳で将軍家綱の御前で碁を打つ公務を務めた。13歳で父が亡くなると父の名、安井算哲をついだが、彼が生まれる前に養子として迎えられていた安井算知が義兄として存在していた。算知の働きは申し分なく、会津藩主、保科正之の碁の相手として会津藩に召し抱えられていた。そのため、春海(算哲)が江戸滞在中は、会津藩邸に滞在するのだった。そういった事情から春海は、わざと一字を変えた保井にしたり、公務でないときは、渋川春海を名乗ったりしていた。実のところ、春海は碁以外にもっと熱意を持っていたものがあり、それは、算術と天文であった。春海が22歳の頃、宮益坂の金王八幡神社に奉納された多くの算術絵馬に、たちどころに解答した男がいた。彼の名は関。磯村道場にもときおり関は現れ、壁に貼られた難問に次々に解答を書き入れ、それがすべて明察(正解)であるという。男の名は関孝和。春海は関に非常に興味をいだき、また対抗心から関に自ら出題したのであるが、関からの答えはなかった。ただ、無術(解答不能)と書こうをして、やめた跡のみが見られた。春海の遺題が病題だったのだ。その直後、春海は幕命により、日本各地の緯度を北極星を使って計測するよう(北極出地)命ぜられ、伊藤、建部らとチームを組んでの長旅に出た。或る晩、4分半の月蝕が観測された。伊藤、建部の両名は、日本各地で買い求めた暦に照らすが、どれも月蝕をただしく予測できていないことを春海に教え、基になる宣明暦に狂いが生じているというのだった。改暦の必要があることを春海はそこで知るのだったが、それが生涯をかけて改暦をめざす春海の闘いの幕開けになった。後年、同時代を生きた和算の天才、関孝和から改暦にあたり、学術面の協力が得られたのが史実ならば素晴らしいことだと思いました。また、囲碁界の天才、本因坊道策も同時代の人物で、春海に勝負碁を真剣に挑んでいた様子も面白く、多士済々の江戸時代だったのだと思いました。エキサイティングな話でした。お薦めです。