伊坂幸太郎さんの「ゴールデンスランバー」を読みました。元宅配便ドライバーの青柳雅春という男性が金田貞義首相暗殺の容疑者に仕立て上げられ、執拗な警察の追跡の手から逃げ続ける話です。その2年前に宅配先で、アイドルの少女を救った青柳雅春は、一時、多くの取材を受け、テレビでも報道されて時の人になったことがあった。その後、電車内で痴漢の濡れ衣を着せられ、会社を辞めざるを得なくなった青柳は、失業保険で食いつないでいた。そんなときに、今度は当選パレード中の金田首相をラジコンヘリによる爆弾で殺害するというショッキングな犯罪の容疑者として、警察に追われる身になったのだった。学生時代の仲間だった森田に誘われて車の中にいた青柳は、彼から痴漢の件も今回の首相暗殺の容疑も、故意に青柳を陥れる罠だと知らされた。森田から逃げるように言われて、青柳は車から飛び出した。車はその直後、仕掛けられていた時限爆弾により爆破され、森田は死亡。それから、青柳の逃亡が始まった。青柳を逃がそうと協力した学生時代の友人、元彼女、元同僚、何の繋がりもなかったけれど、国家権力や警察に反感を抱いていた裏稼業や、チンピラ風の男たちなど、いろいろな人が青柳の逃亡劇にからみ、スリリングな展開が繰り広げられる。彼を陥れようとしていたのは、大きな組織。その黒幕は誰か。事件から20年たっても真相は闇の中だが、もはや青柳雅春が真犯人だったと信じている人はいないようだ。容疑者として捕まってしまうと、無実を証明することの難しさは、恐らく大変なもので、ましてや青柳のように故意に容疑者にされた場合は絶望的。作品中にケネディ大統領暗殺の容疑者として捕まり、殺されたオズワルドについて触れたくだりがありますが、あの事件も未だ真犯人は特定できていないことを思うと、こういった冤罪も起こりえるかもしれないと思いました。本作は2008年の本屋大賞、第21回山本周五郎賞を受賞。非常に面白く、一気読みしました。お薦めです。
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