無有恐怖(むうくふ)が恐怖(くふ)を荒野に遊ばせて竜胆青し芒は白し 薬王華蔵
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無有恐怖(むうくふ)とは「恐怖有ることなし」の凝縮形である。恐怖がないのだから涅槃である。涅槃の境界である。「恐怖あり」が迷界・人間界のあり方だが、しかし、それを引っくるめて裏返しすれば、無有恐怖の涅槃界、すなわち異界、菩薩界。仏界である。ここまで到達すると、これまでの世界の材質だった恐怖が一変する。自在を得る。荒野に遊ばせることが出来る。 自在に放たれた荒野に、竜胆は青く咲き、芒尾花は白い風と波を渡らせる。
恐怖は実体がない。空である。仏教はそう教えている。そこへ辿り着くと恐怖は形骸化してしまう。泡になって融けてしまう。無に帰してしまう。荒野は空の恐怖を遊ばせるところとなる。
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