未開地のわれにわが足踏み入るるときを同じくして百舌鳥の来ぬ 釈 応帰
わたしは未開。いまだ開かれていない。だから、わたしを開発すれば、わたしは開発されるだろう。わたしは未開人。わたしの世界でありながらわたしは未開人。
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わたしの才能は未開。いまだ開かれていない。だから、わたしを開発すれば、わたしの才能は開発されるであろう。わたしのパワーは未開。いまだ開かれていない。わたしを開発すれば、わたしのパワーは開発されるだろう。
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わたしのよろこび感知能力は未開。いまだ開かれていない。だから、わたしを開発すれば、わたしのよろこび感知能力は開発されるであろう。からだもこころもたましいもよろこびに目を瞑っている。
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わたしの智慧の眼はいまだ手つかずの原野。まったく開かれていない。だから、わたしを開発すれば、わたしの智慧の眼は耕されていまだ見たこともない驚きをそこに明らかに見るであろう。
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わたしはこの楽しみを持つ。開かれて行くわたしの期待を持つ。わたしは老いているがわたしの新しさは少しも変わっていない。わたしの新しさは少しも老いていない。わたしの未開がこれから開発されていく。
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わたしはこの世を知らない。この世の美しさを知らない。深めていない。わたしはこの世を生きていながらこの世を知らない。知っておかねばならないことを知らない。
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わたしはこの世の輝きのその万分の1にも出遭っていない。その出遭いがたとえば万分の2にまで広がって行ったら、わたしの魂の輝きはどんなものであろう。
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わたしはわたしを開発するエンジニア。生涯のエンジニア。わたしは新しいわたしの発見者。発見があるたびに驚きを隠し得ない者。わたしは航海者。わたしの海を航海する航海者。
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わたしはわたしに対してまったくの初心(うぶ)。わたしに何が蔵されているか計ってみたこともない。わたしから何が飛び出して来るか試してみたこともない。
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わたしを狭く狭くしているわたしは、わたしの広さを知らない。わたしがどんなに広いのかを知らない。わたしを限定しているわたしは、わたしの生命活動が無限であること、無限大であることを知らない。