The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

Sherlock : The Abominable Bride 感想と検証 : (3)

2016-01-29 | The Abominable Bride
― The Abominable Bride 『忌まわしき花嫁』 : 感想と検証 (3) ―



続きです。

再びネタバレしておりますのでお含みおき下さいませ。


衆人環視の元行われたエメリア・リコレッティの自殺事件後、リコレッティ氏が殺害され、
この犯人がエメリアであった(つまり幽霊に殺されたのだと)というあたりからホラー色が
出てきます。



そんな時、サー・ユースタス・カーマイケルの婦人 レディー・カーマイケルが夫の身を守って
くれる様依頼に訪れるのですが、そのユースタス卿は「5つのオレンジの種」が送られてきて
以来死の陰に怯えている様です。
「5つのオレンジの種」は”KKK”による復讐、暗殺予告と言う意味を持ち、正典 ”The Five
Orange Pips”
『オレンジの種5つ』で描かれていますし、S2E3の ”The Great Game” にも
引用されていました。
”KKK”(Ku Klux Klan :クー・クラックス・クラン)とは白人至上主義のアメリカの秘密結社で
特徴のあるフード付きマントを着ている様です。
このフード付きマントは後半に出て来るマントとよく似ています。(後で又触れます)


ディオゲネスクラブにいるマイクロフトが言っています。「勿論弟が依頼を受けた。君に
は監視を続けてもらいたいが、弟には気付かれたくない。分かって居るね、ワトソン?」
それに答えたのは、ジョンではなくメアリーでした。



「信用してくれて良いわ、ホームズさん」→ これって、どういう事?
やはりマイクロフトに呼び出されていたんだな・・・・メアリーはどういう立場にいるの
か又々悩まされます。 今回も正体不明のメアリー!

レディー・カーマイケルの依頼で ユースタス卿邸宅を訪れる事になった汽車の車中の
シーンは 正典パジェット版 ”The Adveenture of Silver Blaze" 『白銀号事件』のシーン
並びにグラナダ版と良く似ています。(以前も載せましたけど)。





ユースタス卿に面会し状況を確認したシャーロックの”あの”有名なセリフ、
”Come Watson, come ! The Game is afoot” (ワトソン来い、ゲームが始まった)
この正典の ”The Adventure of the Abbey Grange" 『アビー屋敷』にある良く知ら
れている語録、そして私の拘りのフレーズ(ブログタイトルにもしていますので)が
BBC版で聞かれると思っていませんでした。殆どトリハダもんでしたよ。
このセリフに関しては以前から何度も繰り返して書いていますが、”A Study in Pink"
”The game is on !" として引用されましたね。
(余談ですが、正典翻訳本では ”The game is ahoot” は「狩りが始まった」と訳さ
れていたと記憶しています)

エメリアの陰に怯えるユースタス卿邸宅で 夜中に潜入捜査で待機しながら寝室の灯りが
消えるのを待つシャーロックとジョンの状況は ”The Speckled Band” 『まだらの紐』
のシーンを思い起こさせます。

ここでの2人の会話がシャーロックの心の奥底に秘められた感情に触れるハイライト(?)ですね。



「男2人の会話だ」とシャーロックの恋愛経験、結婚感に迫るジョンと 狼狽えながら何時もの
セオリーを述べ立てるシャーロック。
レディー・カーマイケルが素晴らしい女性だと話し始めるジョンに、(彼女は見事な”甲高だ。
部屋に入って来た瞬間に分かった)と言うシャーロック。 何見てんだい!と言いたくなるのですが、
シャーロックはさり気なくアイリーンのスリーサイズも見分けていたし、見るべきものはちゃんと
見ている。 興味がある無は別にして・・・なんですねぇ。

おいおい、潜入張り込み中だろッ!と突っ込みを入れたくなりますが、ジョンの、
”Why are you so determined to be alone ? (何故1人で居たがるのか?) ”What
made you like this ?”
(何が君をこんな風にしてしまったんだ?)との問いに、
”Oh, Watson. Nothing made me. I made me” (あー、ワトソン。誰のせいでもない。
自分自身だ)
→ これが例のtrailerにあったシーンなのですが、あれを見た時点ではもっとシリアスな内容
なのかと不安になっていました。が・・・こんな流れだったんですね。まぁ、これも一貫した
シャーロックの女性観、恋愛に関する問題で 正典以来一貫して興味と論争の的であったテーマ
なので、ある意味シリアス?
で、この時ジョンに指摘された(バラされた)時計の中に入れているアイリーン・アドラーの写真。


↑ せっかくならヴィクトリア朝風のアイリーンの写真にして貰いたかったなぁ、と思うのですが。

このアイリーンの写真は正典 ”A Scandal of Bohemia” 『ボヘミアの醜聞』で事件解決の
報酬としてホームズが国王から拝受した物で、グラナダ版では引き出しに大事に仕舞ってありました。
そして、その前に 変装したホームズがアイリーンの急遽結婚式立会人にさせられたお礼
にもらった1ポンド銀貨を記念として時計の鎖に付けて置こうか・・という事で、今回時計
の中にと云う設定になったのではないかと思ったのですが、ワイルダー版でも時計の中
に入れてありました。


↑ 左がグラナダ版、右がワイルダー版のアイリーン写真です。
* 訂正です。 後で良く見直したらワイルダー版の写真はアイリーンではないかも知れません。
とは言え設定は同じという事でお許し下さいませ。

そんな時、物音と犬の鳴き声がすると、シャーロックは ”レッドビアード” と呟くのですが、
何故ここで ”レッドビアード”の名が出るのか・・・・
”レッドビアード”の名は 今更ですが、S3E2 ”The Sign of Three” でマイクロフトがいきなり
”Do you remember Redbeard ?”(レッドビアードを覚えているか?)
と口に出すのですが、それに対するシャーロックの答えが ”I'm not a child anymore"(僕はもう
子供じゃない)→ この時はシャーロックの子供時代の何かだな? と予想できたのですが、
S3E3 ”His Last Vow” でメアリーに撃たれたシャーロックが昏睡状態の中マインドパレスに
再び現れるレッドビアードにシャーロックは、”They are pulling me down too, now" (僕の事も
殺そうとしているんだよ…)→ つまり、可愛がっていた犬が何らかの理由で安楽死させられた
のではないかと推測され、その事がシャーロックのマインドパレスの中に何時までも傷と悲しみ
になって残っているのではないかと思われるのです。 
そんな経緯から、ここでの ”レッドビアード?” の呟きは嫌な予感がするのです。





~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


計画性が無いモノで、あと何回で終わるのか予定が未定です。
宜しければ又お付き合い頂ければ幸いです。


取りあえず、



・・・・to be continued です。



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4 コメント

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Mistyさん、有難うございます♪ (Ocicat)
2016-02-03 17:37:22
こんばんは~!
オソマツな内容なのにお読み頂き嬉しいです♪
もっと短く纏めるつもりだたのに、グダグダ、ダラダラ長引いてしまっています。

何度も繰り返しますが 今回は本当に引用部分が多くて嬉しいやら、あれ?何処か
で見た様な、聞いたような・・・・で慌てて確認に走る状況で忙しいですね。 
グラナダ版は本当に正典に忠実ですよね。 パジャエット挿絵にそっくりなシーンが
度々出てきます。 凄い凝り方だと思いますねぇ。

映画を観るまでの予習←まぁ、そんな事言って頂くと痛み入ります。 間違っている
かもしれないし、足りないかも知れませんので 前もってご注意と言い訳をしておき
ますね(冷汗)。
映画ねぇ、どうしようかしら・・・やっぱり観ないとですよね。 大きな画面で観れば感
慨がひとしおだろうし、何より字幕がどうなっているのかも見たいし。 チョット迷って
いたんですけど ワタクシも映画館に行きます!

アイリーンの写真の件、ご友人の読みは深いですねぇ。 成程なぁ、と膝を打ちまし
た(この表現は齢が出ちゃいますね)。 そう言う考え方も出来ますね、確かに。
ワタクシなんぞ ララさんの出演料だの、スケジュールだの 下世話な方に走りまし
たけど、いやオソマツでした(涙)

メアリー、どうなってるんでしょうね。
現実の方でも益々怪しいじゃないですか。 シャーロックの潜在意識の中にもあっ
た様に マイクロフトと繋がっている様な気もするし、あのまま無罪放免で平気で
いる事自体にマイクロフトの影を感じるんですけど・・・ ワタクシもこれ以上メアリー
の存在を大きくしないで欲しいと言うのが正直な気持ちですけど、モファティスは
メアリーの事好きだからねぇ・・・今後どうするつもりなんでしょう(と、何時もの繰り返しになってしまいますね)。

S4の撮影開始も ”春”となっていましたけど、”春”って何時頃? やきもき!

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グラナダ版って、すごいですね~ (Misty)
2016-02-02 23:59:22
こんばんは。
正典をはじめ、グラナダ版やビリー・ワイルダー版などなど、本当にいろんな出典情報をありがとうございます!私、やっぱり正典かなり忘れていますよ。映画を見る前にYamYamさんの記事で予習(復習?)すれば、より楽しめそうです。

それにしても、「白銀号事件」の列車のシーンは、BBC版もさることながら、グラナダ版が本当に挿絵そっくりで、今更ながら驚きました。グラナダ版のスタッフもかなりマニアックですね~

ところで、アイリーンの写真のことですが、私は言われるまで現代版の写真だということさえスルーしてしまっていた目が節穴な人間ですが、友人が面白いことを言っていて。アイリーンはシャーロック(ホームズ)を打ち負かした唯一の女性だから、(多分女性が抑圧されている)ビクトリア時代の彼女は存在しないんじゃないかというようなことで、なかなか説得力あるなぁと思ったので、そのうち記事に書こうかと思っていたんです。もちろん、ララさんのご都合により…な可能性だって十分ありますけど。

メアリーは、謎ですね~シャーロックのマインドパレス内でマイクロフトとつながってると言うことは、現実でもつながっているということなんでしょうか…私としてはできればやめてほしいですけど。

それから、次の記事ですが、あのジョンがいなくなった椅子、「空家の冒険」に関連ある文章があったんですね!やっぱり忘れてます…ここは本当に切ないです。正典の「空家の冒険」では、二人がまた221Bに戻って幸せだからいいですけど、「シャーロック」では反対に距離ができたことを象徴しているんですもの。さて、S4はどうなるのか…
返信する
dicoさん、ようこそ~♪ (Ocicat)
2016-01-30 20:12:46
超大作本当にお疲れ様でした。
本当に大変な作業だった事だろうと想像しておりますよ。
先程チラっと感想も読ませて頂いて、あら、今私が書いている事が被っていた・・・
って思ったのですが、大目に見てお許し下さいね。
後でもう一度ゆっくり読ませて頂きます。

あ、そうですかぁ、「獲物が現れた」になってるんですね?
私もあの当時の雰囲気からすると「狩りが始まった」の方が好きです。

アイリーンの写真ね~。そうですよねぇ。ララさんの出演料? セコい想像ですけどあれ程ヴィクト
リア朝に拘るならならね~。って私達がうるさ過ぎ?

ホントにマーティンの表情って素晴らしいですよね。
今迄も感じていたんですけど、今回全体にダークな雰囲気の中で特に印象深く、可愛くて嬉し
かったですね。 なんかホッとしましたよ。

あ、特典ですね。
いいえ、実は私も未だ見ていないんです。 手がまわらないんデス(汗)
本編も繰り返して観直さないと未だ把握できていない部分のあるんですもの。 今回は今までに
より更に解釈が難しいですものねぇ。 
ワタクシも書いていながら もしかして間違った解釈をしているかもしれませんので、何かあったら
ご指摘下さいね。

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こんばんは (dico)
2016-01-30 19:02:56
Yam Yamさんの考察は正典や他のホームズものを絡めてくれるのでとても参考になります。
サー・イアンでも香水ネタが出てくるんですか。さすがですねー。
そういえば、先日映画館で予告編をみましたがThe game is ahootは「獲物があらわれた」になっていましたよ。
この訳は難しいですね。
今回はシェイクスピアからの引用ですし由緒正しい訳なんだと思いますが、
本や映画によっていろいろ違うようですし。
私は「狩りが始まった。」の方が好きなんですけど。

アイリーンは私も思いましたよー。なんで使いまわし?
これだけのために撮影とかは厳しかったんでしょうかね・・・

Don’t forget me の元歌があったとは!びっくりです。ホントよく見つけますね。
ディオゲネスクラブはワイルダー監督へのオマージュだったんですね。
さすが御大ズ、ファンボーイズの名に恥じません。
このシーンは本当にかわいくて私も大好きです。
マーティンのいぶし銀のような演技もひかります。
本当にこの方はこういうコメディタッチがうまいなーと。

今回はパジェットの挿絵をかなり意識したようですね。
ホームズファンにとってはかなり楽しめたように思います。
でもきっと御大たちが一番楽しんだように思いますけど。
そういえばまだ特典を観ていないのですが、もうご覧になりました?

また続きを楽しみにしていますね。
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