The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

『ガイコツと探偵する方法』レイ・ペリー著

2017-12-20 | ブックレヴュー&情報

『ガイコツと探偵する方法』
レイ・ペリー(著)、木下順子(翻訳)
創元推理文庫 2017年9月21日
1,080円
”A Skeleon in the Family”(A Family Skeleton Mystery) : Leigh Perry 2013 年初刊

内容(「BOOK」データベースより)
大学講師の職を得て、高校生の娘を連れ故郷へ戻ってきたジョージアは、親友のシド(世にも不思
議な、歩いて喋る骸骨だ!)と再会した。人間だったときの記憶のない彼が、見覚えのある人物と
遭遇したのをきっかけに、二人はシドの“前世”を調べはじめる。だが、その過程でできたての死
体を発見、殺人事件も背負いこむことに。たっぷり笑えてちょっぴり泣ける、ミステリ新シリーズ。


何気なく手に取った作品です。
タイトルだけ見ると 何やらオドロオドロしい怖ろしい物語りを想像していまう所ですが、ホラーミス
テリーではありません。この作品に登場するガイコツはユニークで愛すべきキャラ。

英語のフレーズに ”Skeleton in the closet” 『タンスの中のガイコツ』という言い方があり、これは
「外聞をはばかる家庭内の秘密とか内輪の恥』と言った意味で使われますが、これをもじったのだと思わ
れる ”A Skeleton in the Family” が原題になっています。
日本語タイトルは『ガイコツと探偵する方法』ですが、犯人捜しというより むしろシドの生前を調査
するというのがテーマになっていると思われます。

ガイコツのシドはしゃべることも、歩くことも出来るし、普通の人間の様に本を読んだりPC迄扱うとい
う不思議なガイコツ。 PCを使いこなせるという点が生前のシドを辿る一つのヒントにもなって来る。
シドという名前は子供の頃ジョージアが付けた名前で、シド自身は自分の本当の名前はおろか、生前の
記憶は全く無い。

この物語の主人公であるジョージア・サッカリーは36歳のシングルマザー。 
故郷であるニュー・イングランド州のペニークロスにあるマクウェイト大学の非常勤講師の職を得、娘の
マディソンと共に長期休暇で海外旅行中の両親の家に戻る事となった。
そこで30年振りにシドと再会を果たす。
シドの存在は両親、ジョージアの姉を含む4人だけの秘密で、彼は(?)30年以上両親の家の屋根裏で
生活している。 娘のマディソンにはその存在を明かしていない為、シドをマディソンの目に触れない
ようにするジョージアの苦労もコミカルに描かれている。
生前の記憶を全く持たないシド、そして何故この様なガイコツになったのかも不明。
そんな時、シドのたっての希望でハロウィーンのコスプレを着せて外出させたジョージアだったが、
その場でシドの記憶を刺激する人物と出会う。
 
それをきっかけに、シドの生前の状況、本名、何故ガイコツになったのか・・・をジョージアと共に
調べ始める。
だが、その過程で殺人事件に遭遇し、テンヤワンヤの騒動に巻き込まれていく。

ジョージアが非常勤講師で大学内での地位や待遇に悩んだり、シングルマザーとしての困難さも併せて
描かれていて、又娘のマディソンが日本のアニメオタクであったり今の社会現象等も織り込まれていて
惹きつける要素にも満ちている。

シドは自分の意志でバラバラの骨になってしまったり、又元のガイコツに戻れたリ特殊技能(?)も
持ちあわせている。
捜査に出掛ける際は、シドがバラバラになりジョージアのスーツケースに入り運ばれ、現場につくと
又ガイコツに戻る。 なにしろそのままでは人前には出られない訳で・・・・・。

会話がユーモラスで思わずニヤリとさせられるのだけど、その中でシドが悪態をついたり、ビックリ
したりする時に 発する いわゆる間投詞が ”ビテイコツ!” これには思わず笑わされる。
意味不明(笑)だけど、この点がチョット気になって原作をチラ見してみたら ”Coccyx!” となって
いるので、まさしく ”尾骶骨”、これを翻訳でカタカナの ”ビテイコツ!” としたのは上手いなあと
思わせられる。

それぞれの思いやり、心遣い、優しさに溢れた会話に癒され、時に胸が一杯になるストーリーです。

最後にシドの前世と生前の名前も判明し、最後にはチョッピリ泣けて心温まる気持ちにさせてくれます。
シドの謎は今作で解明されましたが、この後シリーズ化されている様です。


こちらが原作の表紙ですが、翻訳本とは大分趣が違います。 雰囲気があって原作本の方が良い様な
気がするんですけど・・・・
それと、表紙全てに犬が登場している様ですが、これは1作目で ある理由で登場するワンコだと思わ
れますが、これがシドの天敵です。 何せ犬に骨ですから・・・・
この2人(?)がどう折り合いを付けていくのか興味がありますね。

”The Skeleton Takes a Bow” (2014年)
“The Skeleton Haunts a House”(2015年)

魅力的なキャラクター達、この後シドとマディソンの絡み等が楽しみななりそうなので続編の翻訳本
を期待します。

たまには頭にも心にも優しい、余り考え込まないこの様なミステリーも楽しくて 気分転換には最適
だと思わされる作品でした。