知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

構成部分の一部だけによって簡略に称呼,観念される事例

2008-06-01 11:22:03 | Weblog
事件番号 平成19(行ケ)10411
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年05月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

『2 取消事由1(本件商標と引用商標1及び2の類似性に関する判断の誤り)について
(1) 商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
 そして,商標は,その構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから,みだりに,商標構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定することは許されないが,他方,簡易,迅速をたっとぶ取引の実際においては,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は,常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼,観念されず,その一部だけによって簡略に称呼,観念され,1個の商標から2個以上の称呼,観念が生ずることがあるのは,経験則の教えるところである。
 そしてこの場合,一つの称呼,観念が他人の商標の称呼,観念と同一又は類似であるとはいえないとしても,他の称呼,観念が他人のそれと類似するときは,両商標はなお類似するものと解するのが相当である(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁参照)。また,外観についてもその一部が他人のそれと類似することによって,両商標が類似すると解することができる場合がある。』


『(2) 本件商標の内容
ア本件商標は,前記のとおり,上段に,「トリートメントチャージ」と間隔を空けずに同一書体かつ同一の大きさで表記し,下段に,「TREATMENT CHARGE」と間隔を空けて同一書体かつ同一の大きさで表記したものである。
・・・
d 以上によると,「チャージ」は,日本語としても広く用いられている言葉で,本件商標の指定商品である「化粧品,せっけん類」に関しては,「補給する」,「蓄える」などといった意味の言葉として用いられることがあるものと認められる。
「チャージ」は,「CHARGE」に由来する外来語であるから,「CHARGE」の語義も,上記「チャージ」と同様のものであると認められる。
 そうすると,「チャージ」及び「CHARGE」は,本件商標の指定商品である「化粧品,せっけん類」に使用された場合には,特に識別力が高い言葉であるとまでいうことはできないものの,上記(ア)で述べた「トリートメント」及び「TREATMENT」よりは識別力が高いことは明らかである
・・・

ウ次に,本件商標が,「トリートメント」と「チャージ」,「TREATMENT」と「CHARGE」に分離して印象されるかどうかについて検討する。
・・・

(ウ) したがって,本件商標は,「トリートメント」と「チャージ」,「TREATMENT」と「CHARGE」に分離して印象されるものであって,全体を一連,一体の商標として把握することができるというものではない。』


『(4) 本件商標と引用商標1及び2の類否
ア 以上の(2)及び(3)で述べたところに照らして,本件商標と引用商標1及び2とを対比すると,本件商標と引用商標1及び2とは,外観において「チャージ」及び「CHARGE」又は「Charge」の文字を含む点が共通しており,称呼においても「チャージ」の称呼を生ずる点が共通している。また観念においても前記(2)イ(イ)認定の観念が生ずる点が共通しているということができる。
 このように,本件商標は,外観,呼称及び観念において引用商標1及び2と共通しているのであるから,本件商標は引用商標1及び2と類似するものと認められる。』

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