知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

商標法64条1項の解釈

2010-02-27 10:59:51 | Weblog
事件番号 平成21(行ケ)10198
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年02月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

1 商標法64条1項について
 防護標章登録制度に係る商標法64条1項は,
「商標権者は,商品に係る登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において,その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務について他人が登録商標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるときは,そのおそれがある商品又は役務について,その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。」
旨規定する。

 同項の規定は,原登録商標が需要者の間に広く認識されるに至った場合には,第三者によって,原登録商標が,その本来の商標権の効力(商標法36条,37条)の及ばない非類似商品又は役務に使用されたときであっても,出所の混同をきたすおそれが生じ,出所識別力や信用が害されることから,そのような広義の混同を防止するために,「需要者の間に広く認識されている」商標について,その効力を非類似の商品又は役務について拡張する趣旨で設けられた規定である。
 そして,防護標章登録においては,
① 通常の商標登録とは異なり,商標法3条,4条等が拒絶理由とされていないこと,
② 不使用を理由として取り消されることがないこと,
③ その効力は,通常の商標権の効力よりも拡張されているため,第三者の商標の選択,使用を制約するおそれがあること
等の諸事情を総合考慮するならば,
商標法64条1項所定の「登録商標が・・・需要者の間に広く認識されていること」との要件は,当該登録商標が広く認識されているだけでは十分ではなく,商品や役務が類似していない場合であっても,なお商品役務の出所の混同を来す程の強い識別力を備えていること,すなわち,そのような程度に至るまでの著名性を有していることを指すもの
と解すべきである。


平成22年02月25日 平成21(行ケ)10196 飯村敏明裁判長も同趣旨を判示。

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