知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

無効審決取消を求め上告受理を申立てた後にした訂正審判

2007-08-05 12:43:38 | Weblog
裁判年月日 平成17年08月03日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 三村量一

『第5 当裁判所の判断
1 当事者間に争いのない事実によれば,原告の有する本件特許に対し特許異議の申立てがされ,特許庁はこの異議を容れて前件取消決定をしたこと,原告が東京高等裁判所に対し,前件取消決定の取消を求める訴訟を提起したが,容れられずに前件棄却判決がされたこと,原告は最高裁判所に対し,上告受理の申立てをし,さらに特許庁に対し本件特許について特許請求の範囲の記載等の訂正を内容とする訂正審判を申し立てたけれども,訂正審判の審理が進まないうちに,上告不受理決定がされて前件棄却判決が確定したことが明らかである
 これによれば,本件特許の取消決定が確定したのであるから,特許法114条3項により,本件特許権は初めから存在しなかったものとみなされることになる。そうすると,本件訂正審判の請求は,その目的を失い不適法になるものといわざるを得ない。審決が「本件訂正審判の請求の対象が存在しないので不適法な請求である」としたことは,これと同趣旨をいうものと解することができ,本件訂正審判の請求を却下した審決の判断に誤りはない。』

『2 原告の主張について
(1) 原告は,審決が特許法126条5項を適用したことが根拠のないものであると主張する。しかしながら,同項が本文において,特許権消滅後における訂正審判の請求を許しながら,ただし書において特許が取消決定により取り消され,又は無効審判によって無効とされた後はこれを許さないものとしている趣旨は,過去において有効に存在するものとされていた特許権が存続期間の満了等により消滅し,現在においては権利として存在していない状態となっていても,無効審判の請求を許すこととしているので,これに対応して,特許権者にも上記のように特許権が消滅した後においても無効審判請求への対抗手段として訂正審判請求を許し,特許権者の請求により訂正の審判を行うが,取消決定ないし無効審判により特許権の効力が遡及的に否定された後は,もはや権利者において無効審判請求への対抗手段として訂正請求を許す必要がないことから,訂正審判を行わないことを明らかにしたものである。
 上記のとおり,特許法126条5項ただし書が「ただし,特許が取消決定により取り消され,又第123条第1項の審判により無効にされた後は,この限りではない。」と規定しているのは,取消決定ないし無効審判が確定した場合は,もはや訂正審判を行う余地がないことをいう趣旨であり,取消決定や無効審決の確定時までに請求された訂正審判については審判が行われることをいう趣旨ではない(最高裁昭和59年4月24日判決・民集38巻6号653頁参照)。
 したがって,審決が126条5項を適用して,本件訂正審判請求を却下したことは,正当である。』

(参考:同趣旨を判示するもの)
訂正審判の係属中に特許権の無効が確定した場合
事件番号 平成17(行ケ)10771
裁判年月日 平成18年04月17日
裁判所名 知的財産高等裁判所
裁判長裁判官 中野哲弘


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