知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

国際予備審査機関の見解書、予備審査報告書に対する国家賠償請求

2011-02-12 14:38:08 | Weblog
事件番号 平成22(行ウ)304
事件名 審査結果無効確認及びその損害賠償請求事件
裁判年月日 平成23年01月28日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 岡本岳

2 争点1(国家賠償法1条1項の違法の有無)について
(1) 原告は,特許庁審査官が,本件見解書において本件国際予備審査請求の請求の範囲21及び22につき,本件報告書において本件国際予備審査請求の請求の範囲9ないし13につき,それぞれ特許性(進歩性)がない旨の審査をしたことが特許法29条に則さない論理付けであって無効であるから,これらの書面を作成・送付した行為が違法であると主張する。

 しかし,前記1(2)エ(ウ)のとおり,国際予備審査は,予備的で選択国を拘束しないものであり,いずれの国内法令からも独立し,PCT33条に規定された要件によってのみ行われるものであるから,国際予備審査報告においては,当該国際出願の請求の範囲に記載されている発明がいずれかの国内法令により特許を受けることができる発明であるかどうか又は特許を受けることができる発明であると思われるかどうかの問題についてのいかなる陳述をも記載してはならないとされている(PCT35条(2))
 したがって,本件国際予備審査請求に係る国際予備審査報告を作成する特許庁審査官に対し,本件国際予備審査請求の請求の範囲に係る発明につき,我が国の特許法29条に基づく特許性(進歩性)の有無の判断を求めることを前提とする原告の主張は,PCT35条(2)に反する行為を求めるものであって,失当である

(2) また,前記1(2)エ(ウ),(オ)のとおり,
国際予備審査機関の見解書
には,特許性を有しない旨の見解及びその根拠を十分に記載するものとされており,
国際予備審査報告
には,当該国際出願の請求の範囲に記載されている発明がPCT33条(1)ないし(4)までに規定する新規性,進歩性(自明のものではないもの)及び産業上の利用可能性の基準に適合していると認められるかどうかを各請求の範囲について記述し,その記述の結論を裏付けると認めらる文献を列記し,場合により必要な説明を付するものとされている
が,
・・・
から,本件見解書及び本件報告書の記載は,PCT35条(2),PCT規則66.2の規定に則したものである。また,本件報告書の第Ⅱ欄の3における請求の範囲5-13,15-28に係る各発明の基準日に関する記載も,PCT規則70.2(c)の規定に則したものである。
 ・・・
 以上からすると,特許庁審査官が本件見解書及び本件報告書を作成し,特許庁がこれらの書面を原告・国際事務局に送付するに当たり,特許庁審査官及び特許庁長官がその職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と行為をしたと認め得るような事情は認められないから,原告主張の行為に国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできない。

(3) 原告は,我が国では,本件国際予備審査請求の請求の範囲9ないし13,21及び22と全く同じ構成の発明につき,特許性ありとして登録査定がされていることから,本件見解書及び本件報告書における特許性(進歩性)の審査結果が無効であることは明らかであると主張するが,
 上記(1)のとおり国際予備審査は,いずれの国内法令からも独立してPCT33条に規定された要件によってのみ行われるものであるから,我が国の特許法に基づき特許査定がされたことをもって本件見解書及び本件報告書における特許性についての審査結果が無効であるということはできず,原告の主張を採用することはできない

関連事件

最新の画像もっと見る