事件番号 平成19(行ケ)10294
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年03月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塚原朋一
『( 4) 原告は,特許庁が,平成14年5月21日付けの最後の拒絶理由通知において進歩性を否定しなかったにもかかわらず,その後発明の進歩性を否定する主張をすることを問題とするのであるが,これは,特許庁が,補正について,特許法17条の2第3項に違反すると判断した場合でも,その他に,特許法29条についての拒絶理由があると示さなければ,その後,特許法29条を理由として特許出願の拒絶をしてはならない旨の主張と解される。
これは,結局,特許庁は,補正について,特許法17条の2第3項に違反すると判断した場合でも,その判断が誤りである可能性を考慮して,補正後の発明について特許法29条の拒絶理由があると考えるなら,そのことを拒絶理由通知,拒絶査定で示すべきであり,そのような手続を経なければ,その後,特許法29条の拒絶理由に基づいて拒絶してはならないというものである。
しかし,特許法17条の2第3項に違反した補正がされれば,そのことのみによって特許出願は拒絶査定されるのであるから,特許庁は自らの判断が誤りであることを前提として予備的に特許法29条の判断をしなければならないとまではいえない。また,特許請求の範囲について. 特許法17条の2第3項に違反した補正がされた場合には,特許法29条の判断の基礎となる発明が補正前と異なることから,上記のように必ず特許法29条について予備的に判断しなければならないとすると,新たな審査を要する場合も多いのであり,このことを考慮すると,特許法17条の2第3項に違反する補正がされたと判断する場合に特許庁は自らの判断が誤りであることを前提として必ず予備的に特許法29条の判断をしなければならないとすることが合理的であるとはいえない。
確かに,本件のように,補正について判断した審決が取り消されて審理が再開されたが,再開後の審理において前回とは異なる理由により出願が拒絶されるような場合,出願人は,時間的,手間的な負担等を負うこととなるのであるが,前記のような法の構造等に照らせば,特許庁が,補正が特許法17条の2第3項に違反すると判断した場合でも,その判断が誤りである可能性を考慮して,補正後の発明について特許法29条の拒絶理由があると考えるなら,そのことを拒絶理由通知,拒絶査定で示すべきであるとは認められず,原告主張の,出願からの経過年数や手続的負担は,この判断を何ら左右するものではない。』
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年03月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塚原朋一
『( 4) 原告は,特許庁が,平成14年5月21日付けの最後の拒絶理由通知において進歩性を否定しなかったにもかかわらず,その後発明の進歩性を否定する主張をすることを問題とするのであるが,これは,特許庁が,補正について,特許法17条の2第3項に違反すると判断した場合でも,その他に,特許法29条についての拒絶理由があると示さなければ,その後,特許法29条を理由として特許出願の拒絶をしてはならない旨の主張と解される。
これは,結局,特許庁は,補正について,特許法17条の2第3項に違反すると判断した場合でも,その判断が誤りである可能性を考慮して,補正後の発明について特許法29条の拒絶理由があると考えるなら,そのことを拒絶理由通知,拒絶査定で示すべきであり,そのような手続を経なければ,その後,特許法29条の拒絶理由に基づいて拒絶してはならないというものである。
しかし,特許法17条の2第3項に違反した補正がされれば,そのことのみによって特許出願は拒絶査定されるのであるから,特許庁は自らの判断が誤りであることを前提として予備的に特許法29条の判断をしなければならないとまではいえない。また,特許請求の範囲について. 特許法17条の2第3項に違反した補正がされた場合には,特許法29条の判断の基礎となる発明が補正前と異なることから,上記のように必ず特許法29条について予備的に判断しなければならないとすると,新たな審査を要する場合も多いのであり,このことを考慮すると,特許法17条の2第3項に違反する補正がされたと判断する場合に特許庁は自らの判断が誤りであることを前提として必ず予備的に特許法29条の判断をしなければならないとすることが合理的であるとはいえない。
確かに,本件のように,補正について判断した審決が取り消されて審理が再開されたが,再開後の審理において前回とは異なる理由により出願が拒絶されるような場合,出願人は,時間的,手間的な負担等を負うこととなるのであるが,前記のような法の構造等に照らせば,特許庁が,補正が特許法17条の2第3項に違反すると判断した場合でも,その判断が誤りである可能性を考慮して,補正後の発明について特許法29条の拒絶理由があると考えるなら,そのことを拒絶理由通知,拒絶査定で示すべきであるとは認められず,原告主張の,出願からの経過年数や手続的負担は,この判断を何ら左右するものではない。』