知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

均等論の「本質的部分」の認定事例

2007-10-07 10:09:57 | Weblog
事件番号 平成18(ワ)15809
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成19年09月28日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 阿部正幸


『2 争点2(被告方法は本件発明と均等か)について
(1) 原告らは,仮に,被告方法が構成要件Aの「研磨面に対して,円盤状半導体ウェーハの外周の面取部をほぼ全周において押し当てた状態」との要件を充足しないとしても,被告方法は,本件発明の構成と均等である旨主張する

(2) しかし,本件発明と被告方法との相違する部分である「研磨面に対して,円盤状半導体ウェーハの外周の面取部をほぼ全周において押し当てた状態」との方法を含む構成要件Aは,次のとおり本件発明の本質的部分であることは明らかであるから,これを充足しない被告方法が本件発明の構成と均等であると言うことはできない。

ア 特許発明の本質的部分とは,明細書の特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうち,当該発明特有の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分を意味するものと解される
本件明細書(甲2)には,次のとおりの記載がある。
・・・
 上記の記載によれば,本件発明は,従来技術には,研磨面に対して円盤状半導体ウェーハの面取部の一部を押し当てた状態でミラー面取加工が行われるため加工時間が長くなるので,加工時間を短縮しようとして,押し付け力を強くすると,今度は,硬脆材であるウェーハの端部に欠損が生じ,結局ミラー面取加工速度を高めることには限界があるとの<ins>課題があるとの認識のもと</ins>,
 <ins>同課題を解決するための手段として</ins>,研磨面に円盤状半導体ウェーハを押し当てようとする力を円盤状半導体ウェーハの外周部に位置する<ins>面取部のほぼ全域を使用して支えるようにしたものであり</ins>,
 このことにより,ミラー面取加工の速度に最も必要な押し付け力を高めても,円盤状半導体ウェーハに局部的な荷重が加わらず,加工時の局部欠損を防止することができ,かつ,円盤状半導体ウェーハの面取部のミラー面取加工速度を飛躍的に高めるという<ins>作用効果を奏し,従来技術における上記課題を解決するに至ったものであるから</ins>,
 「研磨面に対して,円盤状半導体ウェーハの外周の面取部をほぼ全周において押し当てた状態」との方法は,まさに本件発明に特有の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分に当たるというべきである

イ 原告らは,本件発明において本質的な部分は構成要件BないしDである旨主張する。

しかしながら,構成要件BないしDのみでは,研磨面の形状,円盤状半導体ウェーハの回転軸と研磨面との関係,研磨面の回転軸と円盤状半導体ウェーハの回転軸との関係をいうのみで,研磨面と円盤状半導体ウェーハの位置関係(当接関係)を何ら特定していない(構成要件Bは,単に「ほぼ全周において押し当て可能」としているにすぎない。)ことになるから,構成要件BないしDだけを充足する方法の中には,円盤状半導体ウェーハの外周面取部のごく一部しか研磨面に当接しない場合まで含まれてしまい,このような方法が,本件発明の上記作用効果を得られるとは限らないことになる。 すなわち,構成要件Aを欠く場合には,上記作用効果を奏するとは限らないのであるから,構成要件Aは本件発明の中核をなす本質的部分であることが明らかである

ウ また,原告らは,構成要件Aの末尾の体裁が,「・・・であって,」となっていることをもって,構成要件Aが本件発明の本質的部分ではないことの証左である旨主張するしかしながら,記載の体裁のみで当該発明の本質的部分が決まるものではない。構成要件Aが上記体裁をとっていたとしても,前記アの判断を左右するものではないことは既に説示したところから明らかである。』

最新の画像もっと見る