知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

特許法153条2項の「当事者が申し立てない理由」

2009-08-02 09:09:28 | Weblog
事件番号 平成21(行ケ)10023
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成21年07月21日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘


3 商標法56条が準用する特許法153条2項違反の有無について
 原告は,取消事由の主張イ(エ)において,「審決においては,他の食品が『元々,「コク(酷)」と「旨み」の要素が重視される商品であるのと異なり,本来的には,「辛さ」と「旨み」が主要な要素である』との独自な見解に基づく判断をし,これを理由として結論を出している。この理由は当事者が申し立てない理由であるから,商標法56条の準用する特許法153条2項により,審判長は,当事者に相当の期間を指定して,意見を申し立てる機会を与えなければならないところであるにもかかわらず,審決は,この規定に反してなされたものである。」と主張する

 ところで,商標法56条が準用する特許法153条2項において審判長が当事者に対し意見を申し立てる機会を与えなければならない「当事者が申し立てない理由」とは,新たな無効理由の根拠法条の追加や主要事実の差し替えや追加等,不利な結論を受ける当事者にとって不意打ちとなり予め告知を受けて反論の機会を与えなければ手続上著しく不公平となるような重大な理由がある場合のことを指すのであり,当事者が本来熟知している周知技術の指摘や間接事実及び補助事実の追加等の軽微な理由はこれに含まれないと解されるところ,
 審決の上記判断は,根拠法条や主要事実の変更ではなく,それまで審判手続の中で当事者双方の争点となっていた,本件商標が「その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」(商標法3条1項3号)に当たるかどうかを判断する中において,その理由付けの一つとして判断された間接事実にすぎないから,商標法56条が準用する特許法153条2項にいう「当事者が主張していない理由」について審理判断したものということできず,同項に違反するとする原告の上記主張は採用することができない。

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