知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

組み合わせの動機付けを否定した事例

2009-01-03 09:00:35 | Weblog
事件番号 平成20(行ケ)10130
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年12月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

3  審決の相違点2に係る容易想到性判断の当否について
(1) ・・・

 上記のとおり,オフセンタ機能は,探知画像の描画中心位置を後方へ変化させることにより,前方の表示画面限界位置までの表示範囲を広げて,変化させる前に見えていない探知物標が見えるようにし,他方,後方の表示画面限界位置までの表示範囲を狭め,変化させる前には見えていた探知物標を見えなくする技術である

(2) そこで,引用発明において,周知技術であるオフセンタ機能を採用する解決課題ないし動機等が存在するか否かについて検討する

 前記のとおり,引用発明は,表示器DISPLAY上の全体の表示画面について,自航空機の速度等に応じて,前方の表示範囲を伸縮させるのではなく,むしろ,一定の範囲内に位置する他航空機等のすべてを表示させることを前提ないし想定した発明である。
 このように,引用発明は,全体の表示画面内に,数多く表示されることがあり得る他航空機等の中で,操縦者をして,真に衝突を警戒すべき他航空機を識別させ,そのような航空機に対する注意を喚起させるために,「警戒空域」を円で表示し,かつ,自航空機の速度に応じて,その半径の長さを伸縮させる技術に係る発明である。上記のとおり,「警戒空域」の表示画面は,全体の表示画面に既に表示されている他航空機等の中で,衝突を回避させる必要のない航空機等と,真に衝突を回避させる必要のある他航空機等を,操縦者にとって識別することを容易にするための手段として用いられている。

 上記のとおり,引用発明では,CRT上(表示器DISPLAY上)の全体の表示画面には,衝突のおそれの有無にかかわらず,他航空機が表示されていることを前提として,既に,全体の表示画面に表示されている他航空機の中で,操縦者に対して,真に衝突を警戒すべき他航空機を操縦者に識別させて,注意をしやすくする目的で,「警戒空域」を表示させるという課題解決のための技術であるから,引用発明が,課題をそのような手段によって解決する発明である以上,「警戒空域」の表示範囲のみを,効率的に表示する目的でオフセンタ機能を採用する解決課題,優位性ないし動機等は存在しないというべきであり,仮にあるとすれば,それは,引用発明が想定する課題解決とは全く別個の課題設定と解決手段というべきである

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