知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

密接に関連したひとまとまりの技術の一部を抜き出した引用発明の認定

2012-02-25 15:57:56 | 特許法29条2項
事件番号 平成23(行ケ)10134
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年02月06日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平

【請求項1】
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残部Feと不可避的不純物からなる鋼板を用い,水素量が体積分率で10%以下,かつ露点が30℃以下である雰囲気にて,Ac3~融点までに鋼板を加熱した後,フェライト,パーライト,ベイナイト,マルテンサイト変態が生じる温度より高い温度でプレス成形を開始し,成形後に金型中にて冷却して焼入れを行い高強度の部品を製造する際に,下死点から10mm以内にて剪断加工を施すことを特徴とする高強度部品の製造方法。

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第5 当裁判所の判断
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 刊行物1においては,鋼板の部位ごとに冷却速度を異ならせて冷却し,得られる焼入れ硬度を部位ごとに変化させて剛性低下部を形成し,その剛性低下部を成形型内で加工する技術が密接に関連したひとまとまりの技術として開示されているというべきであるから,そこから鋼板の部位ごとに冷却速度を異ならせて冷却し,得られる焼入れ硬度を部位ごとに変化させて剛性低下部を形成し,その剛性低下部を加工するという技術事項を切り離して,成形型内で加工を行う技術事項のみを抜き出し引用発明の技術的思想として認定することは許されない

 しかるに,審決は,引用発明として,鋼板の部位ごとに冷却速度を異ならせて冷却し,得られる焼入れ硬度を部位ごとに変化させて剛性低下部を形成し,その剛性低下部を加工するという上記の技術事項に触れることをせずに,したがってこれを結び付けることなく,単に成形型内で加工する技術のみを抜き出して認定したものであって,審決の引用発明の認定には誤りがある。これに伴い,審決には,成形型内で加工する点を一致点として認定するに当たり,これと関連する相違点として,本願発明は,「成形後に金型中にて冷却して焼入れを行い高強度の部品を製造する際に,…剪断加工を施す」のに対して,引用発明では,「成形品形状部位ごとに冷却速度を異ならせて冷却」する点,「得られる焼入れ硬度を部位ごとに変化させ,剛性低下部を形成」する点,「剛性低下部にピアス加工を施す」点を看過した誤りがある。

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