知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

部分意匠の予定されていると解釈し得る位置等の差異

2007-02-01 22:41:04 | Weblog
事件番号 平成18(行ケ)10318
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年01月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 篠原勝美

『イ 意匠登録を受けようとする部分の形状等と,同部分と位置等が大きく異なる部分についての形状等は,仮に,それらの形状等自体が共通又は類似し,物品を共通にしたとしても,美感上,看者に与える印象が異なる場合があるといえるから,部分意匠の類否の判断に当たっては,意匠登録を受けようとする部分とそれに相当する部分が,物品全体の形態との関係で,どこに位置し,どのような大きさを有し,全体に対しどのような割合を占める大きさであるか(「位置等」)についての,差異の有無を検討する必要がある

もっとも,部分意匠制度は,破線で示された物品全体の形態について,同一又は類似の物品の意匠と異なるところがあっても,部分意匠に係る部分の意匠と同一又は類似の場合に,登録を受けた部分意匠を保護しようとするものであることに照らせば,部分意匠の類否判断において,意匠登録に係る部分とそれに相当する部分の位置等の差異については,上記部分意匠制度の趣旨を没却することがないようにしなければならない

破線部の形状等や部分意匠の内容等に照らし,通常考え得る範囲での位置等の変更など,予定されていると解釈し得る位置等の差異は,部分意匠の類否判断に影響を及ぼすものではない

ウ 本件相当部分は,本件カタログの6頁下段最左側のプーリーの意匠の本願意匠に相当する部分であり,そのボス部の先端は,プーリーの前縁より内側の位置にするものであるから,ボス部とリム部の軸線方向の相対的な位置関係において,本願実線部分と本件相当部分が相違するともいえる。

しかし,前記イのとおり,破線部の形状等や部分意匠の内容等に照らし,予定されていると解釈し得る位置等の差異は,類否判断に影響を及ぼさないものであるところ,前記アのとおり,本願意匠において,ボス部とリム部の軸線方向の相対的な位置関係については,図面記載のものに限定されず,プーリーにおけるありふれたボス部とリム部の軸線方向の相対的な位置関係を有するものも予定されているものと認められる。そうすると,本件においては,ありふれたボス部とリム部の軸線方向の相対的な位置関係を有するといえる引用意匠に係るプーリーのボス部とリム部の軸線方向の相対的な位置関係についても,予定されていると解釈し得るのであり,本願実線部分と本件相当部分の上記位置の差異は,類否判断に影響を及ぼすものではない。』

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