知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

未完成発明と29条1項柱書

2008-03-02 12:05:03 | 最高裁判決
事件番号 昭和49(行ツ)107
事件名 審決取消
裁判年月日 昭和52年10月13日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
裁判種別 判決
結果 破棄差戻し
判例集巻・号・頁 第31巻6号805頁
裁判長裁判官 団藤重光
裁判官 岸上康夫、藤崎萬里、本山亭

『特許法(以下「法」という。)二条一項は、「この法律で『発明』とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定め、 「発明」は技術的思想、すなわち技術に関する思想でなければならないとしているが、特許制度の趣旨に照らして考えれば、その技術内容は、当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていなければならないものと解するのが相当であり、技術内容が右の程度にまで構成されていないものは、発明として未完成のものであつて、法二条一項にいう「発明」とはいえないものといわなければならない(当裁判所昭和三九年(行ツ)第九二号同四四年一月二八日第三小法廷判決・民集二三巻一号五四頁参照)。

 ところで、法四九条一号は、特許出願にかかる発明(以下「出願の発明」という。)が法二九条の規定により特許をすることができないものであることを特許出願の拒絶理由とし、法二九条は、その一項柱書において、出願の発明が「産業上利用することができる発明」であることを特許要件の一つとしているが、そこにいう「発明」は法二条一項にいう「発明」の意義に理解すべきものであるから、出願の発明が発明として未完成のものである場合、法二九条一項柱書にいう「発明」にあたらないことを理由として特許出願について拒絶をすることは、もとより、法の当然に予定し、また、要請するところというべきである。原判決が、発明の未完成を理由として特許出願について拒絶をすることは許されないとして、本件審決を取り消したのは、前記各法条の解釈適用を誤つたものであるといわなければならない。』

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