知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

職権審理と再審事由

2009-01-02 20:49:41 | Weblog
事件番号 平成20(行ケ)10280
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年12月24日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 田中信義


1  本件で原告が審決取消事由として,すなわち本件確定審決の再審事由として主張するところは,要旨,以下のとおりである。

①  審判においては職権主義が採用されているから,審判官は積極的に職権審理を行わなければならない。
②  本件取消審判において,被告が本件取消審判請求の登録日前3年以内の期間(以下「本件所定期間」という。)に本件商標を使用した事実を証明するために提出した本件証拠には疑わしい点があった。
③  本件取消審判と同時期に裁判所に係属していたフィッツ訴訟では,被告は本件所定期間内に本件商標を使用していなかったことを自認していたから,商標法56条の準用する特許法168条の運用により,審判合議体がフィッツ訴訟の訴訟資料についての職権証拠調べを行っていれば,本件証拠が被告の本件商標の使用の事実を認定するのに不適切な証拠であることが容易に判明した。
④  しかるに,本件取消審判の審判合議体は,フィッツ訴訟の訴訟資料について職権証拠調べを行わなかったため,本件証拠のみに基づいて被告の本件所定期間中の本件商標の使用の事実を認定し,本件確定審決がされた
⑤  以上のとおり,本件確定審決は不十分な審理に基づいてされたものであるから,民事訴訟法338条1項9号の再審事由がある

2  しかしながら,原告の上記主張を採用することはできない。その理由は以下のとおりである。
 商標法57条2項が準用する民事訴訟法338条1項9号の「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと」(本件では,準用の結果,「確定審決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと」と読み替えることになる。)とは,職権調査事項であると否とを問わず,その判断の如何により判決の結果に影響を及ぼすべき重要な事項であって,当事者が口頭弁論において主張し又は裁判所の職権調査を促してその判断を求めたにもかかわらず,その判断を脱漏した場合をいうものと解される(大審院昭和7年5月20日判決民集11巻10号1005頁参照)。そして,同条項が商標法の確定審決に準用された場合にも同様に解するのが相当であるから,前審に当たる審判において当事者が主張していなかった事項について確定審決が判断をしていないとしても,再審事由たる判断の遺脱とはならないというべきである。

以下も同趣旨を判示
事件番号 平成20(行ケ)10281, 平成20(行ケ)10282, 平成20(行ケ)10283, 平成20(行ケ)10284
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年12月24日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟


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