知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

均等の第5要件の判断事例-外形的除外を認定した事例

2011-09-19 22:05:44 | Weblog
事件番号 平成21(ワ)35411
事件名 特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成23年08月30日
裁判所名 東京地方裁判所
裁判長裁判官 阿部正幸

[被告の主張]
 ・・・被告サービスでは,上記「使用中」とされた局番のうち,一部の電話通信事業者に割り当てられた局番については,ユーザーからの調査ニーズが想定されないことを理由に,調査対象としていない。
・・・


第3 当裁判所の判断
・・・
2 争点2(被告サービスは,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等であるか)について
 被告サービスが本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等であるか否かについて検討するに,平成10年最判は,特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分がある場合に,なお均等なものとして特許発明の技術的範囲に属すると認められるための要件の一つとして,「対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない」こと(第5要件)を掲げており,この要件が必要な理由として,「特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど,特許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか,又は外形的にそのように解される行動をとったものについて,特許権者が後にこれと反する主張をすることは,禁反言の法理に照らし許されないからである」と判示する。
 そうすると,第三者から見て,外形的に特許請求の範囲から除外したと解されるような行動を特許権者がとった場合には,上記特段の事情があるものと解するのが相当である。

(3) これを本件についてみると,・・・,いかなる電話番号を調査対象とするのかについて特段制限は付されていなかったものを,本件訂正により,「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」電話番号を調査対象とするものに限定することを明記し,これにより,乙5資料等に記載された先行技術と本件発明との相違を明らかにして,乙5資料等を先行技術とする無効事由を回避しようとしたものであることが認められる。

 そうすると,原告は,本件特許発明について,本件訂正に係る訂正審判の手続において,・・・,調査対象電話番号が「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」ものでない方法が,その技術的範囲に含まれないことを明らかにしたものと認めるのが相当である。

 原告は,原告が本件訂正において除外したのは,電話帳データや特定の顧客リストなど,限られた電話番号群を調査対象として調査結果を記録する方法に限られるものであり,すべての電話番号という母数から出発してニーズのない局番を除外するという被告サービスのような技術まで意識的に除外したものではないと主張する。

 しかしながら,仮に,原告が,主観的には本件訂正により被告サービスの技術を除外する意図を有していなかったとしても,本件訂正は,少なくとも,第三者からみて,外形的には,・・・,一部の局番の電話番号を調査対象から除外しているものについては,本件特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したものと解されるべきものであるというべきである。

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