知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

行政不服審査法による不服申立ての対象とならないもの

2007-08-10 06:09:13 | Weblog
事件番号 平成15(行ウ)33
裁判年月日 平成15年08月28日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 三村量一

『第5 当裁判所の判断
1 「前提となる事実」欄(前記第3)に記載したとおり,本件裁決は,本件補正命令を対象とする本件審査請求を不適法として却下したものである。
2(1) 行政不服審査法は行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に対して不服申立てを認めているが(同法1条),それは,この種行為が直接国民の権利義務を形成し,又はその権利義務の範囲を確定するものであるという理由に基づくものであるから,行政庁の行為であっても,その性質上このような法的効果を有しないものは同法による不服申立ての対象とならないというべきである(最高裁昭和42年(行ツ)第47号同43年4月18日第一小法廷判決・民集22巻4号936頁,最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁,最高裁昭和28年(オ)第296号同30年2月24日第一小法廷判決・民集9巻2号217頁参照)。

(2) 原告が本件審査請求において不服申立ての対象としている本件補正命令は,特許法133条2項の規定に基づいてされたものであるところ,同項の補正命令は,審判事件に関する手続の方式に関して瑕疵があった場合,これを審判長が指摘し,審判当事者に対してその補正の機会を与え,その補正を促すにとどまるものであって,手続の補正を命ぜられた審判当事者の権利義務を直接形成し,あるいはその権利義務の範囲を確定するものではない
  したがって,本件補正命令は,行政不服審査法に基づく不服申立ての対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するものとはいえない

 手続の補正を命ぜられた審判当事者が補正命令に応じなければ,結果的に特許法133条3項により当該手続が却下されることになるが,当該手続が却下されることになるのは,あくまでも同項の規定に基づく却下決定という処分により発生する効果であり,本件補正命令そのものによる効果ではない。
 審判当事者とすれば,補正命令に不服であるとしても,これに続いてされる手続の却下決定を待って,当該却下処分の取消しを求める手続の中で補正命令の誤りを主張すれば足りるものであって,補正命令につき独立してその取消しを求める利益があるものではない

 なお,行政不服審査法2条1項は,同法にいう「処分」には公権力の行使に当たる事実上の行為で,人の収容,物の留置その他その内容が継続的性質を有するものが含まれるものと規定しているが,同項にいう事実行為とは,「公権力の行使に当たる事実上の行為」,すなわち,意思表示による行政庁の処分に類似する法的効果を招来する権力的な事実上の行為を指すものであるから(前掲昭和43年4月18日第一小法廷判決参照),本件補正命令がこれに当たらないことは上述した点に照らし,明らかである
 上記のとおり,本件補正命令は,行政不服審査法に基づく不服申立ての対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するものではないから,これと同旨の判断により本件審査請求を不適法なものとして却下した本件裁決に,原告主張のような違法はない。』

『 原告は,本件第2特許出願については,本件第1特許出願時である昭和62年当時の特許法が適用されるため,本件補正書に方式違反はないなどと主張する
 しかし,分割に係る新たな特許出願は,発明の新規性,進歩性(特許法29条),先願(同法39条)の要件については,もとの特許出願の時を基準として判断される(同法44条2項)ものではあるが,あくまでも,もとの特許出願とは別個の独立した特許出願であるから,別段の定めのない限り,その手続については分割に係る新たな特許出願がされた時点における法令の定める方式によるべきものである。したがって,平成9年にされた本件第2特許出願に関する本件補正書に特許法施行規則様式第13に違反する方式上の不備があるとした本件補正命令は,法令を正当に適用したものというべきであり,また,本件補正書に対して特許法133条2項に基づき本件補正命令を発した点も正当である。』

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