事件番号 平成18(行ケ)10239
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年03月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 篠原勝美
『ウ 上記記載によると,引用発明4は,金属を浸漬して金属表面にコーティングした自動積層組成物を硬化させることを目的とし,そのために,被覆された部分への温水の噴霧,新たに被覆された部分の温水への浸漬及び新たに積層されたコーティングのスチーム雰囲気への露出により,必要な温度に迅速に到達させ,こうして,コーティング特性を向上させるものである。
一方,前記(1)アによると,引用発明2は,パイプライン又は通路の内張を行うことを目的としており,硬化性樹脂を含有する屈曲性の内張用管を,液体によって所定形状に成形し,その後,加熱水を循環して樹脂を硬化させるというものであって,加熱媒体,水の加熱に費用が掛かるという課題があり,特許請求の範囲記載のとおりの,「光」により樹脂を硬化させる技術によって解決されたものである。
そうすると,引用発明2と4とでは,目的,機能,効果のいずれにおいても異なっているため,技術課題が異なっており,技術分野に関連性がないものというべきである。
また,引用発明2においては,「これら既知の方法で満足すべき内張を実際に行うことができる。」(前記(1)ア(ウ))とあるように,内張技術自体では特に課題を抱えているわけではなく,むしろ,費用が掛かることに課題があるのであるから,引用発明4の,必要な温度に迅速に到達させることにより,コーティング特性を向上させるという効果(前記イ(エ))とは無関係である。
結局,引用発明2と4とでは,技術思想及び技術課題が著しく隔たっているから,当業者において,引用発明2に引用発明4を適用して,相違点3に係る本件発明1の構成とすることは,想到困難であるというべきである。
エ 次に,引用発明3に引用発明4を適用して,相違点3に係る本件発明1の構成とすることの容易想到性について判断する。
審決が引用発明3として認定している技術は,前記第2の3(6)のとおり,・・・
上記記載を考慮すると,引用発明3は,熱硬化性接着剤を塗付された柔軟な内張り材を加温,硬化することを目的としており,そのために,加圧水蒸気をホースの全表面に設けた漏出微細な漏出孔から均一に漏出させ,接着剤を均等に,かつ短時間で加温して硬化させるというものである。
そうすると,引用発明3と4とでは,目的,機能,効果のいずれにおいても異なっているため,技術課題が異なっており,技術分野に関連性がないものというべきであり,当業者において,引用発明3に引用発明4を適用して,相違点3に係る本件発明1の構成とすることは,想到困難であるというべきである。
オ 原告は,引用発明4に,「樹脂コーティングを温水噴霧することにより,これを硬化すること」の技術が開示されている以上,管路補修工法の分野に限らず,熱硬化性樹脂を硬化させる必要のある分野において,当該技術が調査,参考の対象になるのは当然であるから,容易想到性を否定することはできない旨主張する。
しかし,「樹脂コーティングを温水噴霧することにより,これを硬化すること」といっても,ほとんど物理現象に等しい技術事項であって,証拠(甲1ないし5)及び弁論の全趣旨によれば,「樹脂コーティングを温水噴霧することにより,これを硬化すること」又は「樹脂を温水噴霧することにより,これを硬化すること」という技術に係る技術分野があるわけではなく,この技術が各種分野に応用されているのが実情であることが認められる。そして,引用発明2のように,パイプラインまたは通路の内張を行う場合,引用発明3のように,熱硬化性接着剤を塗付された柔軟な内張り材を加温,硬化する場合,引用発明4のように,金属を浸漬して金属表面にコーティングした自動積層組成物を硬化させる場合のそれぞれにおいて,技術として要求されるところが異なり,技術分野,技術課題も異ならざるを得ず,また,相互に必ずしも近接した技術分野であるとはいえない。。』
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年03月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 篠原勝美
『ウ 上記記載によると,引用発明4は,金属を浸漬して金属表面にコーティングした自動積層組成物を硬化させることを目的とし,そのために,被覆された部分への温水の噴霧,新たに被覆された部分の温水への浸漬及び新たに積層されたコーティングのスチーム雰囲気への露出により,必要な温度に迅速に到達させ,こうして,コーティング特性を向上させるものである。
一方,前記(1)アによると,引用発明2は,パイプライン又は通路の内張を行うことを目的としており,硬化性樹脂を含有する屈曲性の内張用管を,液体によって所定形状に成形し,その後,加熱水を循環して樹脂を硬化させるというものであって,加熱媒体,水の加熱に費用が掛かるという課題があり,特許請求の範囲記載のとおりの,「光」により樹脂を硬化させる技術によって解決されたものである。
そうすると,引用発明2と4とでは,目的,機能,効果のいずれにおいても異なっているため,技術課題が異なっており,技術分野に関連性がないものというべきである。
また,引用発明2においては,「これら既知の方法で満足すべき内張を実際に行うことができる。」(前記(1)ア(ウ))とあるように,内張技術自体では特に課題を抱えているわけではなく,むしろ,費用が掛かることに課題があるのであるから,引用発明4の,必要な温度に迅速に到達させることにより,コーティング特性を向上させるという効果(前記イ(エ))とは無関係である。
結局,引用発明2と4とでは,技術思想及び技術課題が著しく隔たっているから,当業者において,引用発明2に引用発明4を適用して,相違点3に係る本件発明1の構成とすることは,想到困難であるというべきである。
エ 次に,引用発明3に引用発明4を適用して,相違点3に係る本件発明1の構成とすることの容易想到性について判断する。
審決が引用発明3として認定している技術は,前記第2の3(6)のとおり,・・・
上記記載を考慮すると,引用発明3は,熱硬化性接着剤を塗付された柔軟な内張り材を加温,硬化することを目的としており,そのために,加圧水蒸気をホースの全表面に設けた漏出微細な漏出孔から均一に漏出させ,接着剤を均等に,かつ短時間で加温して硬化させるというものである。
そうすると,引用発明3と4とでは,目的,機能,効果のいずれにおいても異なっているため,技術課題が異なっており,技術分野に関連性がないものというべきであり,当業者において,引用発明3に引用発明4を適用して,相違点3に係る本件発明1の構成とすることは,想到困難であるというべきである。
オ 原告は,引用発明4に,「樹脂コーティングを温水噴霧することにより,これを硬化すること」の技術が開示されている以上,管路補修工法の分野に限らず,熱硬化性樹脂を硬化させる必要のある分野において,当該技術が調査,参考の対象になるのは当然であるから,容易想到性を否定することはできない旨主張する。
しかし,「樹脂コーティングを温水噴霧することにより,これを硬化すること」といっても,ほとんど物理現象に等しい技術事項であって,証拠(甲1ないし5)及び弁論の全趣旨によれば,「樹脂コーティングを温水噴霧することにより,これを硬化すること」又は「樹脂を温水噴霧することにより,これを硬化すること」という技術に係る技術分野があるわけではなく,この技術が各種分野に応用されているのが実情であることが認められる。そして,引用発明2のように,パイプラインまたは通路の内張を行う場合,引用発明3のように,熱硬化性接着剤を塗付された柔軟な内張り材を加温,硬化する場合,引用発明4のように,金属を浸漬して金属表面にコーティングした自動積層組成物を硬化させる場合のそれぞれにおいて,技術として要求されるところが異なり,技術分野,技術課題も異ならざるを得ず,また,相互に必ずしも近接した技術分野であるとはいえない。。』