知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

特許請求の範囲の記載全体からの判断

2008-06-08 18:52:00 | Weblog
事件番号 平成19(行ケ)10300
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年05月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

『2 取消事由1(訂正不可とした判断の誤り)について
(1) 原告の行った本件訂正の内容は上記第3,1(3)ア,イのとおりであり,訂正発明に係る訂正事項1は,ステップ(a’),(b’),(d’)にわたるものであるところ,審決はそのうち訂正発明のステップ(a’)にかかる「前記誘導電動機の磁束一定条件を満たすように」の記載を加える点のみについて判断し,これは明細書又は図面に記載された事項の範囲内でなされたものではなく,特許請求の範囲の減縮にも当たらないから,平成6年改正前特許法134条2項ただし書の規定に適合せず,訂正請求は認められないとした

・・・
 そうすると,「前記誘導電動機の磁束一定条件を満たすように」との運転条件(・・・ )の下で「前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定」し〔訂正発明のステップ(a’)〕,「無負荷状態(・・・)において,前記所定値に基づいて前記インバータから出力される交流電圧を前記誘導電動機に印加することにより,前記誘導電動機を回転させる」〔訂正発明のステップ(b’)〕ことは,いずれも明細書又は図面に記載された事項の範囲内であると認められる

・・・
 そうすると,「前記所定値に設定された電圧指令,前記所定値に設定された周波数指令,及び前記検出された電流」に基づいて制御定数を設定するとの点〔訂正発明のステップ(d’)〕についても,明細書又は図面に記載された事項の範囲内であるといえる。

・・・
(3)ア 審決は,本件明細書(甲1の1,2)の段落【0042】及び【0055】の記載は「電圧指令と周波数指令を所定値に設定するにあたって,磁束一定条件を満たすように設定することを開示するものではない。」(6頁14行~16行)とし,段落【0055】には,「上記所定値を,誘導電動機の磁束一定条件を満たすように設定するものとは記載されていない。」(6頁20行~21行)と認定した。

 しかし,訂正発明は,その特許請求の範囲の記載全体からすれば,ステップ(a’)の「前記誘導電動機の磁束一定条件を満たすように」との記載は,続くステップ(b’)の「無負荷状態において,前記所定値に基づいて前記インバータから出力される交流電圧を前記誘導電動機に印加することにより,前記誘導電動機を回転させるステップ」及びステップ(c’)の「前記回転している誘導電動機に流れる電流を検出するステップ」における運転条件を限定していることは明らかといえる。

訂正発明は,ステップ(b’)及び(c’)における誘導電動機の回転が,「前記誘導電動機の磁束一定条件を満たすように」運転され,その後のステップ(d’)の「前記所定値に設定された電圧指令,前記所定値に設定された周波数指令,及び前記検出された電流に基づいて,前記コンピュータにより,前記誘導電動機の1次インダクタンスと関係する,前記制御装置の制御定数を設定するステップ」において,所望の制御定数を得ることができるように,「前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定」する〔ステップ(a’)〕ものであると理解することができる。』

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